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ノイマンとシンギュラリティ

今までノイマンの代表的な業績について触れてきました。

53年という短い生涯で150もの論文を書き、得意の数学だけでなく、物理学・計算機科学・経済学など学際的な分野で功績を遂げました。
しかも、全盛期はマンハッタン計画に従事しながらです。

今でも、例えばノイマン型(プログラム内蔵方式)コンピュータ以外の設計など、彼の名前が付いた話題は事欠きません。1つだけ最近の記事を。

実は、ChatGPTで改めて注目されている用語「シンギュラリティ(技術的特異点)」も、歴史をたどるとノイマンにたどり着きます。

以前に、その伝道師として名高いレイ・カーツワイルによるシンギュラリティの経緯を簡単に話しました。

この意味を持つ用語(元々は数学・物理で使われた)として初めて使われたのは、数学者でSF作家でもあるヴァーナー・ヴィンジの作品の中です。

ただ、この用語の持つ意味合いに公で初めて触れたのは、ノイマンでした。

「たえず加速度的な進歩をとげているテクノロジーは……人類の歴史において、ある非常に重大な特異点に到達しつつあるように思われる。この点を超えると、今日ある人間の営為は存続することがでできなくなるだろう。」

出所「シンギュラリティは近い」

これは、マンハッタン計画で助手として働いていたスタニスワフ・ウラムの証言によるものです。

この言葉だけでなく、ノイマンはオートマトン(自己複製)研究の先に分子生物学(DNA発見前!)や脳科学(最後の未完タイトルは「計算機と脳」)への関心をもっていたことから、まさに同じ構想をもっていたといえます。

ここからは空想ですが、もしノイマンが現代で研究を再開していたとしたら、やはり「複雑系」の科学に足を踏み入れると思います。関連記事を引用。

中世の数学者ラプラスが作った言葉に「ラプラスの悪魔」と呼ばれるものがあります。

ようは、因果律をすべて予測できる能力を持った存在で、これがあれば未来の出来事が全てわかるわけです。

おそらく当初ノイマンはそれをコンピュータ(計算機)で具現化させたかったのだと思いますが、気象学や人工生命の研究を進めるうちにその難しさを知り、今でいう複雑系理論の必要性を感じたのだと想像します。

最後に、ウラムと共に水爆を推進したことでも知られる、エドワード・テラーのコメントで締めたいと思います。

「頭脳の点で超人的な人種が生まれることがあるとすれば、そのメンバーたちはジョニー・フォン・ノイマンに似ていることでしょう。」

出所:チューリングの大聖堂

確かに、伝記を読めば読むほど、彼自身がシンギュラリティを迎えた「ポストヒューマン」ではないかと思うほど、頭の回転が速すぎます。

半世紀を超えて、ノイマンがまいた種の土壌が整っていき、やっと芽が吹き出そうとしているかのようです。

<参考リソース>

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