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高岡紀美子エッセイ集♪

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ピアノ講師・高岡紀美子先生のエッセイをまとめました。クラシック音楽にまつわるエピソードが盛りだくさんです🎶
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#歴史

まっかなお・は・な・の〜♪

まっかなお・は・な・の〜♪

1939年、シカゴのデパート宣伝のために作られた“お話”。



昔々、ルドルフという名のトナカイがいた。お鼻が赤く光っていたため、彼はいつも仲間はずれ。「やーいお鼻ピッカピカ」と、お友達にからかわれ、泣いてばかりいた。クリスマスの前夜、村にサンタさんがやってきて、ソリを引くためのトナカイを選んだ。「ダッシャー、ダンサー、

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『天翔(あまかけ)る白鳥』ピアノ講師・高岡紀美子エッセイ作品

『天翔(あまかけ)る白鳥』ピアノ講師・高岡紀美子エッセイ作品

「倭(やまと)は/国のまほろば/たたなづく/青垣/山ごもれる/倭しうるわし」と、故郷に想いを馳せながら、息絶える勇者ヤマトタケル。古事記に登場するヤマトタケルは、父・景行天皇に見捨てられた悲運の皇子として描かれている。父の命令によって東征の旅に出た彼は、帰路、伊吹山の神と対決し、敗北する。故郷を目前に、力尽きる肉体。「…無念」。やがて、彼の魂は白鳥となって、天高く舞い上がり、遠い異次元の空間へ吸い

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音楽エッセイ『また、引っ越し?』ピアノ講師・高岡紀美子作品

音楽エッセイ『また、引っ越し?』ピアノ講師・高岡紀美子作品

「居所不定」。天保7年(1836)に刊行された『諸家人名録』に、浮世絵師・葛飾北斎の住所だけが、こう記されている。住所不定である。北斎については数々の奇行が伝えられているが、一ヶ所にとどまることを嫌う“転居癖”も、その1つであった。 「幕府の表坊主・寺町百庵と言う人が、引っ越し100回を目ざしているらしい」。

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音楽エッセイ『やきもちは、いかが?』ピアノ講師・高岡紀美子作品

音楽エッセイ『やきもちは、いかが?』ピアノ講師・高岡紀美子作品

35年の短い生涯のなかで、600を超える名曲を残したヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。この200年間、多くの人々から愛され、賛美されてきた彼の作品は、同時代の音楽家の心にも強烈な印象を焼きつけたようである。 18世紀後半、それまで名声を欲しいままにしてきたウィーン宮廷音楽家・サリエリは、この若き天才の出現に、激しい嫉妬の炎を燃やした。モーツァルトの才能をいち早く見抜き、

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音楽エッセイ 『月光』                 ピアノ講師・高岡紀美子作品

音楽エッセイ 『月光』 ピアノ講師・高岡紀美子作品

ある満月の夜。男が散歩していると、一軒の家からピアノの音が聞こえてきた。「おや?」。そっと、窓から覗き込んでみる。薄明かりの中で、盲目の少女が鍵盤をさぐるように演奏していた。男は家に入ると、少女に優しく声をかけ、やがて、静かにピアノを奏で始めた。叙情的な調べ、荘重な和音。柔らかな音色が少女の心を包み込んでいく。…と、天空から一条の月光が…。白い光は輪を広げながら、男の姿をくっきりと照らし出してい

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