點心

香港、中国、英国の駐在を含め40年間、メーカー・商社で海外事業の経営管理に携わりました…

點心

香港、中国、英国の駐在を含め40年間、メーカー・商社で海外事業の経営管理に携わりました。 出張で訪れた国はアジア、アメリカ大陸、欧州、ロシア等30か国以上。様々な人との出会いがありました。 現在は経営コンサルタントをしています。

最近の記事

ロシア人との付き合い方

ロシア人はどんな人ですかと聞かれたら、皆さんはどのように答えるでしょうか。 1980年代初頭に語学留学生としてレニングラード(サンクトペテルブルグ)に滞在し、その後1980年代後半から1990年代初頭まで総合商社のモスクワ駐在員として活躍した日本人の「自分史」が出版されました(小村治朗著「赤い誠」文芸社)。 この本に描かれているのはビジネスを通じて見た30年前のロシアとロシア人ですが、ロシア人の考え方や行動原理などロシア人と付き合う上で非常に参考になる情報を得ることができ

    • 新自由主義

      あるTV番組で、司会者が出演者の竹中平蔵氏に対して「あなたは新自由主義者と呼ばれていますが」と言ったところ、竹中氏はそれを躍起になって否定していました。 そこで、「新自由主義」について、調べてみようと思いました。 新自由主義はネオリベラリズムといわれ、その主義を主張する人たちの例として、経済学者のミルトン・フリードマンやフリードリヒ・ハイエク、政治面では米国大統領ロナルド・レーガンが行ったレーガノミクスや英国首相のマーガレット・サッチャーのサッチャリズムを挙げています。 私

      • 中国共産党はいかにして国を統治しているか

        中国共産党の党員数は9千万人(家族を含めると2億7千万人)で、人口の7%を占めます。 この7%の人が国を動かしていると言っても良いでしょう。全国人民代表大会(国会)の議席の約7割が共産党員と言われています。また、党員の予備軍として中国共産主義青年団(共青団)があり、団員数は9千万人です。共青団に入ることは、将来党員となり幹部になるための重要なルートの一つと考えられています。彼らは共青団で培われた人的ネットワークを持っており、党員になってからもそのネットワークを活用します。

        • 人民元は基軸通貨になるか

          最近、新聞や雑誌に中国がデジタル人民元の導入により国際取引のシェアを増やそうとしているという記事を見たことがあるでしょう。 今回は、国際取引で人民元の取引シェアがどうなるかについてUS$との比較で検討してみます。 現在の通貨別の取引状況は以下の通りです。 通貨ペア別の取引高1日平均 単位:10億米ドル US$のシェアが圧倒的に大きいことがわかります。 では、なぜそうなのか? 一般に、ある国の通貨が国際取引で多く使用されるためには、 ① 十分な通貨量が市場で流通しており、

        ロシア人との付き合い方

          香港はどうなるか

          2020年6月末に香港国家安全維持法が施行され、日本では香港の将来に懸念を示すメディアの論調が多いですね。香港と中国に駐在した私から見ると、外国人にとって現在の香港と中国本土のビジネス環境は差がありません。 中国は多民族国家で、55の少数民族がいます。少数民族は全人口の約1割しか占めていませんが、その中でウイグル族とチベット族は、今でも独立運動が盛んです。従って、中国政府は国家の統一を乱す動きには非常に敏感で、例えば香港独立を叫ぶ人たちを絶対に許容しません。このような政府の

          香港はどうなるか

          あとがき(3完)

          今まで、実務的な知識について色々な例を挙げて説明しましたが、マクロ的な視点も重要ですので、事業戦略を作る際に役に立つと思われる今後の社会のトレンドに関する参考情報を紹介しておきます。 第1に田坂広志氏の著書3冊 1. まず、戦略思考を変えよ (ダイヤモンド社) 2. これから何が起こるのか (PHP研究所) 3. 目に見えない資本主義 (東洋経済新報社) 注意してほしいのは、今後の方向が実現する時期について言及されていないことです。流れがいつ変わるのか、どの程度変わりつつ

          あとがき(3完)

          あとがき(2)

          今まで述べてきたことは、海外事業の経営に関する実務論即ち戦術論と言っても良いでしょう。私はマーケティングの専門家と組んで仕事をしていますが、このパートナーも戦略とともに戦術が重要であるとの基本的な考え方のもと、Hands On(実務重視)のコンサルティングを行っています。皆さんは日々の海外事業運営の中で常に「何をどうする」という実務上の課題に直面されていると思います。それらの仕事は決してレベルが低いものではなく、戦略実現のために欠くべからざる仕事であるという認識をもって頂きた

          あとがき(2)

          あとがき(1)

          海外事業は、カネがかかります。例えばFSをする際に気をつけたほうが良いのは、旅費交通費や通信費の見積もりを多めにすることです。現地法人の社長や合弁相手先との打ち合わせ、クレームが発生した場合や原料・製品の輸送中の事故の対応のための出張旅費など、本当に多くのケースがあります。第1部の危機管理の項目で述べたコンサル会社等との契約費用も見積もっておきましょう。 海外に進出する場合、又は既に進出しているが現状を見直したいという場合には、独立行政法人中小企業基盤整備機構(略称:中小機

          あとがき(1)

          第2部 7. 本社組織をどうするか

          本社の海外事業担当組織をどうするかという問題も、会社の置かれた状況により異なるので、一概には言えません。 海外事業は一つの事業組織ですので、本社で起こる事業経営上の問題は海外事業でも発生します。その場合、問題の分野ごとに専門部署(人事部、法務部等)が直接担当し問題解決を図る方法と、海外事業で発生する問題について一旦一つの組織(例えば海外事業部)が受けてある程度の問題は海外事業部が現地法人と一緒になって解決し、更に専門部署の協力が必要な場合には社内外の専門家と一緒に問題解決を

          第2部 7. 本社組織をどうするか

          第2部 6.利益管理/原価管理(4)

          ④業界の中で自分の会社が置かれている位置を調べるのも良い方法です。業界の中で優良な企業の経営指標と自分の会社の経営指標を比較する方法です。これはご存知と思いますがベンチマーキングですね。 ベンチマーキングをする際には、ROA等の経営指標だけでなく、比較対象の会社の事業内容を良く研究しましょう。有価証券報告書(上場企業の場合)、会社のHPを見ると必ずその会社の「沿革」が掲載されています。沿革をよく勉強すると、その会社がどのような事業を行い現在の姿になったのか、つまり経営方針の歴

          第2部 6.利益管理/原価管理(4)

          第2部 6.利益管理・原価管理(3)

          ③ フォローすべき経営情報 私は、部長時代には20社、部門長時代には50社の海外関係会社の経営を見ていましたが、関係会社の経営を分析する場合に貸借対照表と損益計算書をセットで見ていました。貸借対照表は、会社設立から現在までの経営の全ての結果を金額で集約して表したものです。貸借対照表の貸方(右側)の勘定科目は、会社がどのような手段で事業活動のための資金を調達したかを表し、借方(左側)の勘定科目は調達した資金をどのように使ったかを表しますので、これで会社の事業活動の大枠をつかむこ

          第2部 6.利益管理・原価管理(3)

          第2部 6. 利益管理・原価管理(2)

          ② 在庫は悪である 過剰な製品在庫や仕掛品は最悪、過剰な原材料在庫は悪です。 まず製品在庫ですが、一旦作ったものは元の原材料に戻すことができません。長期在庫になれば品質は劣化し、在庫管理の手間が増え、倉庫の保管料はかさみ、会社の資金繰りを圧迫し、たたき売りすれば利益が減少します。期末には評価下げのリスクもあるし、盗難リスクもあります。損害保険料も増加します。一つも良いことがありません。工程中の仕掛品を過剰に持つことも過剰製品在庫同様のデメリットがあります。更に工程中に仕掛品が

          第2部 6. 利益管理・原価管理(2)

          第2部 6.利益管理/原価管理(1)

          海外現地法人の利益管理や原価管理の方法は会社の状況よって様々ですが、一般的な考え方を述べておきましょう。 利益管理についての留意点は、以下の通りです。現地法人は日本の本社に比べ規模が小さいので、景気変動や事故の影響を受けやすい傾向にあります。しっかりした財務体質を維持しましょう。現地法人の社長は営業や生産出身の人が多いと思いますので、管理部門の責任者は社長の十分な理解を得られるように説明することが重要です。 ① 固定費を極力抑える 固定費は売上に関係なく発生する費用ですので

          第2部 6.利益管理/原価管理(1)

          第2部 5.地域統括会社

          シンガポールや香港などに地域統括会社を設立している会社がありますが、その多くが運営に悩みを抱えているようです。その悩みは何か? 私の経験を基にお話ししましょう。 統括会社の目的が曖昧なまま設立し、統括会社に日本の本社の役員が社長として派遣され、その社長を補佐するスタッフが派遣される。このような場合には統括会社はうまく運営されない傾向があります。 というのは、組織ができると、それ自体が「充実・拡大」を志向します。その組織の構成員の意識とは無関係にそのような傾向がでます。そうな

          第2部 5.地域統括会社

          第2部 4.各国の法律を効率的に理解するには

          海外事業を展開する国の法律の大枠を理解しておくことは、現地の駐在員だけでなく日本の関係部署にいるスタッフにとっても重要なことです。事業を展開する国の数が多くなると、それぞれの国の法律を理解するのは大変です。 私が現地の法律を理解するのに一番効率的だと思うのは、日本の法律をしっかり勉強することです。世界的に見ると、会社法や労働関係法、環境保護関連法等の事業活動に関係する法律は同じ方向に向かっています。そこで、日本の法律との違いに注目して現地の法律を勉強すると、効率的に理解が進

          第2部 4.各国の法律を効率的に理解するには

          第2部 3.合弁パートナーの付き合い方

          世界中どこでもそうですが、ビジネスを成功させるには合弁パートナーとの信頼関係が大切です。中でも華僑との付き合いには注意しておくべき点があります。 第1部の1.と3.でお話した通り、中国人は対人関係を重要視し、コア・グループを大切にします。従い、契約書の重要性は2次的になりがちです。 それではどうするか? できるだけ彼らのコア・グループの近くにいることです。日常の付き合いは合弁会社の社長(日本側がマイナーシェアの場合には日本側から派遣されている一番上位者)が食事などで信頼関係

          第2部 3.合弁パートナーの付き合い方