第2部 3.合弁パートナーの付き合い方

世界中どこでもそうですが、ビジネスを成功させるには合弁パートナーとの信頼関係が大切です。中でも華僑との付き合いには注意しておくべき点があります。
第1部の1.と3.でお話した通り、中国人は対人関係を重要視し、コア・グループを大切にします。従い、契約書の重要性は2次的になりがちです。

それではどうするか? できるだけ彼らのコア・グループの近くにいることです。日常の付き合いは合弁会社の社長(日本側がマイナーシェアの場合には日本側から派遣されている一番上位者)が食事などで信頼関係を維持するとともに、日本から社長や役員が出張してくるときには、必ず面談/食事で本社の社長や担当役員の事業観やパーソナリティーを良く理解してもらいましょう。面談の内容は儀礼的なものは避けるほうが良く、世界や日本の経済動向や今後事業機会があるものについての話題など、パートナーの事業に役立つ内容がお勧めです。

私が商社に勤務していたときに副社長とともに、取引先の台湾の南亜(台塑集団の企業)の経営戦略担当副社長を表敬訪問したことがあります。その際話題になったのは米国のシェールガスの生産量が将来大きく増加する可能性があると思うが、我々はどう考えるかということでした。このように、海外企業の幹部はどのような機会にも事業戦略について情報を求めていることを念頭におき、しっかりと準備しておつき合いする必要があります。


華僑は常に「人」を観察しています。また、彼らは30~40年は経営に携わり、数年で変わる日本の会社の役員の考え方をじっと見て付き合い方を考えていることを忘れないようにしましょう。

合弁のパートナーと仕事上の打ち合わせをした時には、その内容の要点をメモの形で作り(日時、場所、出席者名を含む)、パートナーにも送付しておきましょう。人間の記憶は案外あてにならないものです。後で言った言わないというトラブルを避けるためにも役にたちます。

最後に、合弁パートナーとの付き合いに関して私が経験したり会社の先輩に聞いたことを紹介しておきます。
欧米の場合、ビジネス一辺倒の人は本当に優秀な経営者とは見てもらえません。文学、芸術(絵画、音楽等)、ワイン等についての知識を持っている人が認められます。
英国では、サッカーやダーツは庶民の趣味とみられます。競馬(出張でイギリスへ行く機会があれば、アスコット競馬場へ行ってみることをお勧めします)、ラグビー、ポロがエリートの趣味とみられます。

中国では、三国志など国民誰もが知っている歴史ものや、史記、論語、十八史略等についての知識をちょっと会話に挟むと認められる傾向があります。中華思想の国だけに、自分の国の歴史を勉強している人には親近感を持つのでしょう。

韓国では囲碁ができると一目置かれます。私は韓国のビジネスマンとのお付き合いは余り長くありませんが、韓国の人達のメンタリティーを理解するのに役立つと思う本を紹介します。この本は過去50年にわたる韓国の政治・経済・社会の歴史の一側面をジャーナリストが追ったものです。第Ⅲ部から読むと良いでしょう。
前川惠司著「実物大の朝鮮報道50年」公益財団法人新聞通信調査会

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?