第2部 4.各国の法律を効率的に理解するには

海外事業を展開する国の法律の大枠を理解しておくことは、現地の駐在員だけでなく日本の関係部署にいるスタッフにとっても重要なことです。事業を展開する国の数が多くなると、それぞれの国の法律を理解するのは大変です。

私が現地の法律を理解するのに一番効率的だと思うのは、日本の法律をしっかり勉強することです。世界的に見ると、会社法や労働関係法、環境保護関連法等の事業活動に関係する法律は同じ方向に向かっています。そこで、日本の法律との違いに注目して現地の法律を勉強すると、効率的に理解が進みます。

なお、中国は2001年のWTO加盟に向けて法律の「国際標準」化を進め、現在もその方向で様々な改定を進めているということも覚えておくと良いでしょう。但し、大きい国だけに地方により事情が異なるケースが多く、法律は他の国に比べて簡単になる傾向があります。これを補うのが中央官庁の行政指導です。この行政指導の内容は、公表されていないものもあります。
また、中国の特殊事情として裁判所が共産党の指導の下にありますので、法律と裁判所の判決に不整合が生じる可能性があることも覚えておきましょう。このあたりの事情は、小口彦太「中国法『依法治国の公法と私法』」(集英社新書)を読むと理解できます。判例についての考え方も日本と中国では異なりますので、国立研究開発法人科学技術振興機構が運営するScience Portal Chinaのトップ>コラム&リポート>中国の法律事情>「21-002中国法との向き合い方を考える」を参照してください。

日本の会社法については、宍戸善一「ベーシック会社法入門」(日本経済新聞出版)が要点を理解しやすくまとめてあり、民法については早稲田リーガルコモンズ法律事務所「改正民法要点のすべて」(日本実業出版)が参考になります。労働法は関係する法律も多いので勉強しだしたらきりがないですが、実務上も役立つという面を考慮すると、厚生労働省が公表している「モデル就業規則」をじっくり読み込み、必要に応じて関係する法律を参照するという方法が良いでしょう。

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