ロシア人との付き合い方

ロシア人はどんな人ですかと聞かれたら、皆さんはどのように答えるでしょうか。

1980年代初頭に語学留学生としてレニングラード(サンクトペテルブルグ)に滞在し、その後1980年代後半から1990年代初頭まで総合商社のモスクワ駐在員として活躍した日本人の「自分史」が出版されました(小村治朗著「赤い誠」文芸社)。

この本に描かれているのはビジネスを通じて見た30年前のロシアとロシア人ですが、ロシア人の考え方や行動原理などロシア人と付き合う上で非常に参考になる情報を得ることができます。著者の旺盛な知的好奇心はビジネスにとどまらず文化、社会、政治、経済、市民生活まで広範囲にわたり、日本では考えられないような困難に遭遇しながら、それでも著者のロシア人に対する視線は優しい。

私は駐在や出張で約30か国の人々と付き合いましたが、国民・民族の思想や行動原理は、地理的条件(大陸、半島、島国)や気候、宗教、周辺国・地域との関係性などで決定付けられる部分が多いと考えています。国際政治で地政学が研究されているのも、その国・民族の地理的な環境が重要であることを物語っています。ロシアも中国も大陸国家であり、外海に面する部分が少ないという共通点がありますが、ロシア人の思想や行動原理は中国人と同じなのか異なるのか。ビジネスを行う上で、その国の政治・経済体制等の表面的な部分を理解するだけでなく、人々の言動の根底にあり長い間変わることの無いものを知っておくことは極めて大切です。国の名前が変わっても、その地に暮らす人々の考え方や行動様式は簡単に変わるものではありません。その意味で、この本を読んでロシア人の本質の一端を理解することは価値があると思います。困難に瀕した時にこのような本質的な理解が問題解決に役にたつのは、ロシアに限らず海外で事業行う人たちにとって共通のことです。

この本に書かれたロシア人に関する様々な知見は、往々にして企業の内部にとどめ置かれ、外部には出にくいものですが、フィクションという形式をとることによって時代を経ても変わることのないロシア人の本質をより鮮明に描き出しています。是非読んでみて下さい。

 

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