第2部 5.地域統括会社

シンガポールや香港などに地域統括会社を設立している会社がありますが、その多くが運営に悩みを抱えているようです。その悩みは何か? 私の経験を基にお話ししましょう。

統括会社の目的が曖昧なまま設立し、統括会社に日本の本社の役員が社長として派遣され、その社長を補佐するスタッフが派遣される。このような場合には統括会社はうまく運営されない傾向があります。
というのは、組織ができると、それ自体が「充実・拡大」を志向します。その組織の構成員の意識とは無関係にそのような傾向がでます。そうなると、地域統括会社の傘下にある会社は、日本の本社と地域統括会社による「二重統治」に悩むことになります。
統括会社の役員は、「実務」をしていないので、当事者意識が希薄になります。また、傘下のグループ会社は月次業績報告も2つ作らなければならず、しかも報告内容は大部分が重複しがちです。
傘下の会社の負担は増え、現実に即したタイムリーな経営判断がされなくなり、不満が増幅する結果になります。

地域統括会社のメリットは、その地域に密着した情報を基に、グループ会社の社長に与えられた権限よりも大きい権限を持って機動的な経営判断を行えることですから、運営もその方向に沿ったものにする必要があります。
まず立地ですが、経営管理を目的とする地域統括会社を設立する場合にはグループ会社のうち、一番事業規模の大きい会社の所在国に設立します。
次に役員構成ですが、地域統括会社の社長はその地域のグループ会社の社長から選ぶ。また、取締役はその地域のグループ会社の社長が兼務する。管理担当役員も、グループ会社の管理担当役員が兼務する。
月次業績の報告や予算は、グループ会社各社が作成した報告書を取りまとめるだけにする。
このようにすると、統括会社の本来の目的であるその地域の機動的な事業運営が実現し、役員が地域全体の事業運営という観点から自分が社長をしている会社を見ることができるようになり、グループ会社間の情報共有も進みます。また、運営費用も節約できます。

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