人民元は基軸通貨になるか

人民元は基軸通貨になるか

最近、新聞や雑誌に中国がデジタル人民元の導入により国際取引のシェアを増やそうとしているという記事を見たことがあるでしょう。
今回は、国際取引で人民元の取引シェアがどうなるかについてUS$との比較で検討してみます。

現在の通貨別の取引状況は以下の通りです。

通貨ペア別の取引高1日平均 単位:10億米ドル

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US$のシェアが圧倒的に大きいことがわかります。
では、なぜそうなのか?
一般に、ある国の通貨が国際取引で多く使用されるためには、
① 十分な通貨量が市場で流通しており、
② その国の経済規模が大きく、世界経済の中で一定のプレゼンスを持っていること、
③ その国の軍事力が大きいこと、
④ その国の金融経済に関する情報に対するアクセスが十分に確保されていること

人民元についてこの条件を当てはめてみると、②と③は当てはまりますが、①と④は当てはまりません。①の市場での流通量については、今後ある程度の増加が予想されますが、④については現時点では全く期待できません。

ある国の通貨が国際取引で使用されるためには、市場での売買が大量にかつ即時にできることつまり流動性が高いことが非常に重要です。現在この条件を最もよく満たしているのはUS$以外にありません。US$が基軸通貨と言われる所以です。

また、その通貨を発行している国の金融経済に関する詳しい情報へのアクセスが容易であることも、その通貨の信頼性を担保するためには極めて重要です。国際取引を行う金融のプロたちは、常にその国の金融経済情報を入手/分析し、取引を行う際に使用しても良い通貨であるどうかを検証していますが、そのためには信頼性の高い情報を容易に入手できることが必須です。現在、米国の金融経済については、米国にとって有利な情報も不利な情報も容易に入手することができ、それがUS$への信頼性をもたらす重要なファクターになっています。

上記の二つの条件を人民元に当てはめてみると、どうでしょうか?
市場での流動性の確保は今後ある程度進むとしても相当長期間を要するでしょう。
信頼性の高い金融経済情報を容易に入手できるかどうかについては、中国政府の姿勢から判断するに、極めて期待薄です。
従って、人民元が国際取引市場である程度のプレゼンスは確保するでしょうが、US$やユーロにとってかわる時代は、そう簡単には訪れないと言えるでしょう。





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香港、中国、英国の駐在を含め40年間、メーカー・商社で海外事業の経営管理に携わりました。 出張で訪れた国はアジア、アメリカ大陸、欧州、ロシア等30か国以上。様々な人との出会いがありました。 現在は経営コンサルタントをしています。