第2部 6.利益管理/原価管理(1)

海外現地法人の利益管理や原価管理の方法は会社の状況よって様々ですが、一般的な考え方を述べておきましょう。

利益管理についての留意点は、以下の通りです。現地法人は日本の本社に比べ規模が小さいので、景気変動や事故の影響を受けやすい傾向にあります。しっかりした財務体質を維持しましょう。現地法人の社長は営業や生産出身の人が多いと思いますので、管理部門の責任者は社長の十分な理解を得られるように説明することが重要です。
① 固定費を極力抑える
固定費は売上に関係なく発生する費用ですので、業績が好調な時には目立ちませんが、景気変動等で売上高が減少した場合には途端に利益の圧迫要因になります。

具体例を挙げましょう。会計パッケージソフトのカスタマイズ(仕様の変更)は可能な限り避けましょう。カスタマイズすると、パッケージソフト開発会社がversion upをする際に自動的にはできず、個別に作業を依頼することになり、追加的な費用が掛かります。

最近の会計パッケージソフトは利益管理についても様々な分析ができるように設計されています。しかし、一般に海外現地法人の事業規模は本社よりも小さく、生産(取り扱い品種)も少ないものです。ですから、海外現地法人で本社と同じような利益管理をしようとすると、当然分析のためのパラメーター(入力項目)の数を増やす必要があるので手間がかかり、労務費が増加します。そして多くの報告書が毎月出てくることになりますが、ほとんどが見られることなくファイルされ、保管スペースも増え、事務所の家賃も増えます。そんな経験がありませんか?

原価管理も同様で、分析項目の増やしすぎは原価計算システムの複雑化を招き、開発費が増加し、現地法人の固定費比率を上げるだけの結果になりがちです。原価計算は発生した原価を品種別に振り分けるものですから、まず大元である原価要素(原料費、用役費、労務費、減価償却費等)別、原価部門(工程)別の発生費用を把握し、金額の大きいものから減らすことを考えましょう(これをパレート分析といいます)。
原価計算のエキスパートと言われる人の中には、往々にして極めて精緻なシステムを作ることに大きなエネルギーを使うケースがありますが、これは費用対効果が極めて低く、担当者の自己満足に終わるのでやめるべきでしょう。
通常、原価計算は等価係数を使用して品種ごとの製造原価を計算しますが、等価係数は一旦設定されてしまうと長年見直されないケースが多いものです。等価係数を見直すほうが適切な原価管理ができる可能性が高いと思います。

利益管理も原価管理も月次業績の分析項目を重要なものに限り、更に詳しく知りたいことが出てきた場合には、その項目についてだけ個別に調査・分析するという方法がお勧めです。

設備投資も減価償却費を抑えるために極力金額を絞りましょう。生産サイドは、故障や増産の場合を考慮して設備能力に余裕を持たせたがる傾向があり、設備費が増加しがちです。事業計画に使用する設備の生産能力は、定期修理による設備稼働停止期間を勘案して決められていますので、通常は生産能力に余裕があります。また、一般に生産設備は技術進歩により後になるほど良いものが出来てきますので、本当に設備投資が必要になった場合に増設するというのが正しい方向です。
もし、増設が完了するまでに売る製品が必要な場合は、定期修理の日程をずらしたり、一時的に短縮したりすれば良いし、ある程度まとまった数量が必要な場合にはOEMでしのぎましょう。

固定費抑制を別の言葉で表すと、損益分岐点売上高を低くして、不況抵抗力を強化するということです。損益分岐点売上高は、固定費/( 1 – 変動費比率)で表されるのはご存知でしょうから、一度シミュレーションしてみてください。

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