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Random Walk

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2023年7月の記事一覧

【ショートショート】半笑いのポッキーゲーム

【ショートショート】半笑いのポッキーゲーム

 今にも触れそうな距離で見つめ合う彼と彼女。その表情はとても親密そうだ。
「ん……ふふっ」
「ふっ……くすっ」
 どちらからともなく小さく声が唇から漏れる。それでも二人は見つめ合うことをやめない。瞳には強気な光が灯っており、お互いに意地を張り合っているようでもあった。どれほどそうしていただろうか。特に合図もないまま、二人は同時に吹き出した。
「ぶ……ははっ」
「んっ……はっ」
ツボに入ってしまった

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【ショートショート】金持ち教習所

【ショートショート】金持ち教習所

 適当に買った宝くじがまさかの高額当選とは。銀行に着くと恭しく奥の部屋へと通された。行員から「誠におめでとうございます」と告げられた後、受領手続と共に高額当選者の心構えを説明される。浮かれて身を持ち崩す者が多いらしい。行員が告げる。
「実は当行は高額当選者の方向けの特別教習があります。『金持ち教習所』などと言われているようなのですが、受講頂ければ絶対に身を持ち崩すことはありません。いかがですか」

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【ショートショート】思い出の味

【ショートショート】思い出の味

 「スイカが食べたいんだ」と彼は言った。聞きなれない言葉に私は首をかしげる。
「スイカ?」
「そう、スイカ。ウリ科の植物で果実の外観は緑色で深緑色の縦縞が入ってるんだけど……。知らないよね」
 彼は寂しそうな表情で言う。私は少しムキになって告げる。
「そりゃそうよ。だってそれ、地球の食べ物でしょ」
 突然変異的に発生した疫病にさらされた地球人類の中で、外星系からやってきた私が救えたのは彼一人だった

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あやかし旅館の若女将 ~清水優菜の妖な日常~第四話 「長逗留は大歓迎です!」前編

あやかし旅館の若女将 ~清水優菜の妖な日常~第四話 「長逗留は大歓迎です!」前編

第四話 「長逗留は大歓迎です!」
 そのお客様が竜泉閣を訪れたのは、夏も盛りの八月のことだった。

 山の中の温泉宿にとって、夏場のシーズンは客足が鈍くなるなかなか鬼門の季節である。やっぱり夏のレジャーといえばなんといっても海。海辺の旅館やホテルに旅行客は向かう傾向にある。特に竜泉閣は海なし県にあるので県内のお客さんはこぞって憧れの海に出かけるのである(ぶっちゃけ私も海へ遊びに行きたい……)。

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あやかし旅館の若女将 ~清水優菜の妖な日常~第四話 「長逗留は大歓迎です!」後編

あやかし旅館の若女将 ~清水優菜の妖な日常~第四話 「長逗留は大歓迎です!」後編

 竜泉閣の夜はけっこう早い。その日宿泊されているお客様に若い方が多いとそうでもないけれど、うちみたいな比較的年配のお客様が多い宿だと、日付が変わる前には宿の中の雰囲気はずいぶんと静かなものになる。ロビーにあるお土産ショップで商品の補充と整理をしていてすっかり遅くなった私は、継春と住んでいる宿の奥にある自室へと向かっていた。
 通り道になっているのもあって、それとなく客室の様子についても見て回ること

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あやかし旅館の若女将 ~清水優菜の妖な日常~第五話 「流行りものには乗っかります!」

あやかし旅館の若女将 ~清水優菜の妖な日常~第五話 「流行りものには乗っかります!」

第五話 「流行りものには乗っかります!」 
 ハロウィンが日本でも盛り上がるようになったのはいったいいつからなのだろう。少なくとも私がまだ幼い頃は今ほどにはイベントとして注目されてはいなかったようにも思う。最近ではハロウィンといえばお化け、とりわけ西洋の吸血鬼や魔女やゾンビ(ゾンビが西洋なのかはちょっと疑問だけど)などの仮装をして夜の街へと繰り出すのが定番となっている。

 そんな世の中の風潮にこ

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あやかし旅館の若女将 ~清水優菜の妖な日常~第六話 「テレビ取材で大騒ぎ!」前編

あやかし旅館の若女将 ~清水優菜の妖な日常~第六話 「テレビ取材で大騒ぎ!」前編

第六話 「テレビ取材で大騒ぎ!」
 ぴゅう、と吹き抜けた風の冷たさに、私は思わず身を縮こまらせる。ぱらぱらとせっかく集めた落ち葉が無情にも風で再びまき散らされてしまった。風に乗って赤や黄色の色とりどりの葉が舞う様は、いかにも日本の秋らしくてとても風情があると思う。

 ただし、それは庭の掃き掃除担当でさえなければ、の話だ。

 はあ、と大きくため息をついて、手に持っていた竹ぼうきを握り直す。あちこ

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あやかし旅館の若女将 ~清水優菜の妖な日常~第六話 「テレビ取材で大騒ぎ!」後編

あやかし旅館の若女将 ~清水優菜の妖な日常~第六話 「テレビ取材で大騒ぎ!」後編

不安定な気持ちを抱えたまま翌朝を迎える。

 毎朝の朝礼場所に大女将の姿は見えず、スマホの通知に目をやると、今日はまだ一日様子を見るとの連絡が入っていた。集まった仲居さんたちに大女将の状況を伝えるのと同時に、今日のテレビ取材の件も伝達する。大女将の突然の負傷に加えて初めてのテレビ取材、皆の間にざわめきが起こる。明らかに浮き足立っているのが分かった。

「テレビ取材は私が対応しますので、皆さんはいつ

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あやかし旅館の若女将 ~清水優菜の妖な日常~第七話 「大女将、危機一髪!」

あやかし旅館の若女将 ~清水優菜の妖な日常~第七話 「大女将、危機一髪!」

第七話 「大女将、危機一髪!」
 テレビ取材に大女将の腰痛と、予想もしていなかったトラブルはあったものの、かき入れ時である紅葉シーズンの客足は期待通りの推移を見せて、連日の忙しさに私を含む竜泉閣の従業員一同はてんてこ舞いだった。

 腰の状態もまだ万全ではないのだから無理はしないで欲しいとお願いしたものの、動けるようになった大女将も到着したお客様の対応や配膳作業にと八面六臂の活躍をしてくれていた。

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あやかし旅館の若女将 ~清水優菜の妖な日常~第八話 「年末年始もお待ちしてます!」

あやかし旅館の若女将 ~清水優菜の妖な日常~第八話 「年末年始もお待ちしてます!」

第八話 「年末年始もお待ちしてます!」
 少なくとも大女将の入院は年末から年明けまでは続きそうだった。

 大女将本人は頑なに口にしなかったのだけど、どうも以前から時々腰が痛むのを無理して堪えていたらしい。主治医の先生も一緒に相談した結果として、これを機会にしっかり治療とリハビリをして腰を治しましょう、という方針になった。

 大女将のしばらくの不在については宿のホームページにのせることなどはしな

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あやかし旅館の若女将 ~清水優菜の妖な日常~第九話 「あーっ!お客様、困ります!」

あやかし旅館の若女将 ~清水優菜の妖な日常~第九話 「あーっ!お客様、困ります!」

第九話 「あーっ!お客様、困ります!」
 年が明けてからも当初の予定通りではあるけれど大女将の不在は続き、ようやくその状態にもどうにか慣れてきたかと思えてきた頃、ある一人のお客様が竜泉閣を訪れた。

 竜泉閣の敷地がある臥竜山をはじめ、露天風呂から見渡せる周囲の山々もすっかり雪化粧を纏うシーズンオフの時期に、しかも男性のおひとりさまだったこともあって、チェックインの時点からその人は奇妙に印象に残る

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あやかし旅館の若女将 ~清水優菜の妖な日常~第十話 「登場、狸親父!」

あやかし旅館の若女将 ~清水優菜の妖な日常~第十話 「登場、狸親父!」

第十話 「登場、狸親父!」
 根津氏が去ってから数日後、継春と私は麓の町にある地元銀行の会議室にいた。いかにも会議室、といった部屋で打ち合わせをする経験はこれまであまりしてこなかったので、なんだか妙に緊張してしまう。
 私も継春も今日はスーツ姿でここを訪れている。スーツに袖を通したのなんて随分と久しぶりだ。竜泉閣で若女将を始めてからは、ずっと着物姿で通してきた。最初は慣れない着物だったけど、今では

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あやかし旅館の若女将 ~清水優菜の妖な日常~第十一話 「竜泉閣、源泉秘話!」

あやかし旅館の若女将 ~清水優菜の妖な日常~第十一話 「竜泉閣、源泉秘話!」

第十一話 「竜泉閣、源泉秘話!」 
 田沼氏の言葉の意味するところはその後すぐに判明した。銀行での面談のすぐ翌日から竜泉閣の周囲のあちこちで、いきなり大がかりな工事が始まったのだ。

 その工事はもちろんあの田沼氏の指示で始まったものだ。あの狸親父は昨日の交渉の時にはまったくそのことを明かしていなかったけれど、やらその下準備を進めていたらしい。竜泉閣の周囲の土地を何カ所かこっそりと購入していたのだ

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あやかし旅館の若女将 ~清水優菜の妖な日常~第十二話 「狸親父の挑戦状!」

あやかし旅館の若女将 ~清水優菜の妖な日常~第十二話 「狸親父の挑戦状!」

第十二話 「狸親父の挑戦状!」 

宿の宿泊予約表にタヌキチ、いや田沼吉蔵氏の名前を見つけたのはそれから数日後のことだった。見つけた瞬間に「ふぁっう!?」と喉から変な声が出た。

 タヌキチの仕掛けてきたボーリング作戦は想像以上にいやらしい手だった。

 こちらとしてもせっかく竜泉閣を訪れてくれたお客様に不快な思いをさせるわけにはいかない。そう考えて、やむなく竜泉閣のホームページの一番目立つと

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