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【ショートショート】半笑いのポッキーゲーム

 今にも触れそうな距離で見つめ合う彼と彼女。その表情はとても親密そうだ。
「ん……ふふっ」
「ふっ……くすっ」
 どちらからともなく小さく声が唇から漏れる。それでも二人は見つめ合うことをやめない。瞳には強気な光が灯っており、お互いに意地を張り合っているようでもあった。どれほどそうしていただろうか。特に合図もないまま、二人は同時に吹き出した。
「ぶ……ははっ」
「んっ……はっ」
ツボに入ってしまったのか堰を切ったようにひとしきり笑い転げたあと、彼は腹を押さえてつぶやいた。
「はぁ……はぁ……誰だよポッキーゲームとにらめっこを足そうって言い出したの」
「なにとぼけてるの、君でしょ」
「しかしだめだなこれ。顔が近すぎると変顔してもよく見えないし、笑っちゃうとポッキーゲームにならないし」
「普通は試す前に気がつくんだけどね」
 それでもこれはチャンスと思って言い出せなかったのは内緒にしとこうと、彼女は心の中でこっそりと舌を出したのだった。



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