タローさん、絵を見に行く

美術のこと、作家のこと、業界の小ネタなどを徒然なるままに

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最近の記事

ゴッホが自分の耳をぶった切って人に届けようとしたのは闘牛が原因?

ゴッホ。 この画家の名前を美術館に一度も行ったことがない方でもどこかで聞いたことがあるかと思います。 「なんかスゴイ不遇で死んでからメッチャ売れた人でしょ?」 という認識が根強いゴッホ。 (実際は称賛され出した頃に亡くなったため、生きてたら普通に評価されてますが) そんな印象的な人生が、ある意味作品以上に面白がられるのは確かで エピソードや謎に事欠かない生涯を題材にした小説や映画などの多い事多い事。 そんな数ある逸話の中でも、自ら自身の片耳を切り落として人にあげるという

    • 写楽…… アンタ結局誰なの?

      活動時期10カ月程度、制作数140点 そんな僅かな画業に関わらず現代においても世界的な知名度を誇る浮世絵師 東洲斎写楽。 そんな人物が如何にして後世に残る人物になったのか、については別記事で書いておりますが ここでは、作品がどうのこうのより写楽を有名にしている要素 ”写楽ってつまり誰なん??” という点について紹介していきます。 【名前の意味と描いたモノ】 当然ながら東洲斎写楽、というのは雅号(ペンネーム的なもの)です。 一説に「東洲斎」、とは江戸の「東側の洲

      • 写楽…… アンタ結局なにがスゴイの?

        東洲斎写楽 日本の美術史上、いや世界の美術史上においてもこれほど謎めいた人物が他にいるでしょうか。 控えめなダチョウ倶楽部のようなポーズでお馴染みの↓この浮世絵が異様なほど世界中に浸透し 活動期間実質10カ月にも関わらず現代へ伝わる名作を残した東洲斎写楽は、その知名度に反して人物像が謎に包まれた存在です。 つまり誰なんだ?という写楽の正体については別記事に書きますが ここでは、なぜそんな人物の作品が現代に伝わるのか? 要は「写楽ってつまり何がスゴイんだ?」という点について

        • 浮世絵 ~かつてゴミだった美術品~

          日本人が江戸の文化を急速に脱ぎ去ろうとしていた明治初期。 商店を営む吉田金兵衛は、もはや時代遅れとなった大量の浮世絵を前に軽いため息をついていた。 骨董とも芸術とも呼べないこれら浮世絵は全く売れず、売れたところで蕎麦一杯よりも安い。 「今日売れなければ捨てるか」と吉田はぼんやり考えていた。 そんな矢先、店にふらりと外国人が訪れる。 開国から時が経った今もって見慣れない異国の客人は、ひとしきり店内の浮世絵を見渡した後、理解できない外国語でしきりに何かを吉田に訴えかける。

        ゴッホが自分の耳をぶった切って人に届けようとしたのは闘牛が原因?

          ダリとガラ -変人の嫁は”超変人”?-

          「ぐりとぐら」を彷彿とさせる響きのスペインの奇才、サルバドール・ダリとその妻ガラ。 歴史に名を刻んだ天才画家とその画業を支えた良妻、などという生易しい関係では全く セックス依存症 VS セックス恐怖症 という水と油より混ざらなそうな関係から始まるこの2人。 変人の嫁はまた変人か。はたまたそれ以上か。 もはや普通な要素を探す方が難しい、とんでも夫婦の姿がそこにはありました。 ダリは画家としての名声を得ながらも、その範疇に括られることを嫌い「サルバドール・ダリ」という存在の

          ダリとガラ -変人の嫁は”超変人”?-

          #2美術品の高価買取・安心査定!……ホンマか?

          前記事にて、買取業社が美術品を買い取る際にどのように金額を付けているのかをお伝えしております。 ざっくり言えば、多くの買取業社は美術品買取価格を決める際「分かんないので他の人に聞いて」ます。 ここでは、もう少しだけ深掘りして、彼ら(の業態)がどのような人に聞いているのか? どうやって利益を出しているのか? みたいな部分をご紹介できたらと思います。 (前回同様、あくまで業界よもやま話程度に……) 【その儲け方/販売先……】 さて、「分かんないので聞いた」人たちから来た査

          #2美術品の高価買取・安心査定!……ホンマか?

          #1美術品の高価買取・安心査定!……ホンマか?

          少しご想像ください。 ある時、あなたは「なんでも鑑定してくれる」某番組(あれ実際、査定ですけど)やニュースでとんでもない高額で美術品に金額がついているのを目にします。 「家にあるあの絵画、もしかしたら……?」と思い立つあなた。 しかし、その絵の金銭価値など全く分からない…… そこで、近所の「美術品高価買取・専門のスタッフによる安心査定!」と看板を掲げていた買取店を思い出し、せっせと持ち込んでみることにします。 「これは……! 査定しますので少々お待ちください」 恭しく

          #1美術品の高価買取・安心査定!……ホンマか?

          来ましたか…カラヴァッジオの新作が…

          あまりにも完成されたルネサンス芸術に反発した輩たちが生まれたバロックと言う時代。 並みいる変人画家たちの中でも最高の狂人、ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオの最新の発見とされる作品が、4月18日~7月21日のロンドン・ナショナルギャラリー「The Last Caravaggio」展でお披露目されます。 ↓引用元 カラヴァッジオと言えば、シャレにならない画力を兼ね備えた、銃刀法違反で住所不定な少年趣味で厨二病の殺人犯、という属性オンパレードな美術界にその名を轟かすイ

          来ましたか…カラヴァッジオの新作が…

          カラヴァッジオ ~絵以外がヤバイ人~

          多芸より一芸に秀でよ。 そんな感じで、集団的な価値観よりも個性を重視しようとする傾向に相変わらず邁進する昨今の社会。 尚且つ、二兎や三兎も追わず一兎を追う方が、このコンテンツとメディアが溢れる中で生き残ろうするならば、何かと結果が伴うとはよく言われることです。 まさに「芸は身を助ける」。 それは、およそ500年前の西洋美術においても言えること。 人間性と言動が犯罪級に終わってても絵が上手過ぎて生き延びた、そんなヤバイ輩がかつて存在していました。 その名も、ミケランジェ

          カラヴァッジオ ~絵以外がヤバイ人~

          アートオークションの事情

          アートは高い。”よく分からんが”スゴイ高い。 ピカソが100億円を超えた、ダ・ヴィンチが500億円以上で落札されたなど どっかで聞いたことがある作家がたまげる値段で売れる度にその印象は増すばかり(実際高すぎ)。 世間一般がアートのそうした美術業界の”値段”に触れる機会はなかなかありません。 大抵の人がそれを知るのは、たまに入ってくるオークション(主に海外)のニュースなどでしょう。 そんな高額品から雑多なものまで飛び交うアートオークションは実際どのように売買・運営がされて

          アートオークションの事情

          モネが人を描かなくなった理由

          夫は夢中で妻の最後の姿を絵に残す。 愛しい妻。 妻であった人。 青ざめる人体。 変化し続ける物体。 筆を動かしたのは慈愛よりも好奇心だった。 印象派の祖、抽象絵画の父、美術史の様々なムーヴメントに存在を知らしめる画家、クロード・モネ。 何が描きたかった人なのか、どんな人だったのか、ということは過去記事をご参照いただければと思いますが モネは生涯で光(それ自体や反射、変化)を如何に静止画である絵画に表現するかに生涯を捧げます。 モネと言えば、その「変化を捉える」という

          モネが人を描かなくなった理由

          ダリはなぜ”狂った”のか?

          溶けた時計 蟻が噴き出した卵 脚の異様に長い象のような生物 「いったい何なんだこの絵は?」 と思わせることにおいて、画家サルバドール・ダリの右に出る者はない。 Wi-Fiでも受信しそうなヒゲ セックス恐怖症且つオナニー依存症 性欲とドラッグに塗れた宴の主催者 「いったい何なんだコイツは?」 と思わせることにおいて、変人サルバドール・ダリの右に出る者はない。 ダリほど、セルフプロデュースに長け、そこに心血を注いだ芸術家はいないでしょう。 「サルバドール・ダリ」という存在

          ダリはなぜ”狂った”のか?

          喜多川歌麿〜幕府にケンカを売った浮世絵師〜

          あだち充も「同じ顔やないかい!」とツッコミを入れたくなるこの絵の作者は 喜多川歌麿 という1753~1806年を生きた江戸(時々栃木)の浮世絵師です。 当時、社会現象にもなるほどシャレにならない人気絵師であった歌麿。 しかし、この活躍が気に食わない組織に目の敵にされます。 その組織の名は日本最高統治機関、江戸幕府。 歌麿の画業は、”政府”の弾圧に”一人の絵師”が己の「表現」のために立ち向かった闘争の歴史と言えます。 (雑に言えば「ああ言えばこう言う合戦」) パネルの

          喜多川歌麿〜幕府にケンカを売った浮世絵師〜

          どうやって美術品を"ホンモノ"にするのか

          =========== 男は笑いを堪えるのに必死だった。 巨匠の絵をマネただけの男の絵に対して鑑定人は言った。 「私がそう思うのだから間違いない」 男が唾を飲み込むより早く、鑑定人はこれを巨匠の"ホンモノ"であると断定した。 男はこれを売って大金をせしめた。 今度はかつてこの巨匠から直接譲り受けた作品を鑑定人に持ち込んだ。 すると鑑定人はこの作品を一瞥するや"ニセモノ"と吐き捨てた。 そんなハズはないと激昂する男に鑑定人は言った。 「私がそう思うのだから間違いない

          どうやって美術品を"ホンモノ"にするのか

          クロード・モネ〜金も知名度も無いのに雰囲気だけで乗り切った画家〜

          =========== その時、駅員は思った。 「画家とか言ってるけど誰か知らんしめっちゃ偉そうだし無駄に風格あるしコイツ実はすげぇ画家なんじゃね?」 駅員は駅の奥へ(面白半分に)男を招き入れた。 =========== 「"風格"ってなぁに?」と子供が聞いてきたら 「ご覧。これが"風格"だよ」と言って見せたくなるこの男性は クロード・モネ という、1840〜1926年にフランスで活動し、印象派とうい美術史における一大ムーヴメントの中心人物であり 後に抽象画の父とも

          クロード・モネ〜金も知名度も無いのに雰囲気だけで乗り切った画家〜

          北斎の奇行 〜リアル"売名"行為編〜

          この確変が止まらなくなったかのような弾ける笑顔のご老人は 葛飾北斎 という世界に轟く我が国を代表する浮世絵師です。 ー 江戸時代に勃興して爆発的に発展、普及し、時に社会現象にもなった浮世絵という視覚メディアを 世界に影響を与える"芸術"まで昇華させ、その領域を牽引した北斎。 人物、風景、花鳥、果ては妖怪画においても現代に通じ得る作品を世に残し 描けないものがないのかと思わせる画才は、有力武家の墓から作品が出土するなど地位を問わず多くの人に愛されました。 画力もさり

          北斎の奇行 〜リアル"売名"行為編〜