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#1美術品の高価買取・安心査定!……ホンマか?

少しご想像ください。

ある時、あなたは「なんでも鑑定してくれる」某番組(あれ実際、査定ですけど)やニュースでとんでもない高額で美術品に金額がついているのを目にします。

「家にあるあの絵画、もしかしたら……?」と思い立つあなた。

しかし、その絵の金銭価値など全く分からない……
そこで、近所の「美術品高価買取・専門のスタッフによる安心査定!」と看板を掲げていた買取店を思い出し、せっせと持ち込んでみることにします。

「これは……! 査定しますので少々お待ちください」
恭しくそう言い残して店内の奥の暖簾の向こうへ消えた買取店の店主。

…………さて、この暖簾の奥で何が起こっているか、ご存じでしょうか?


コロナ禍のダブついた資金が流れ込んだり、「株より金よりアートは儲かる!」とどこぞのコンサルが調子のいいことを抜かしたこともあり
史上稀に見る高騰を見せている美術品。

高い、それは知ってる。だけど何でそんな高額になるんだ?
どうやって値段を付けているんだ?

という疑問を持つ方も多いのでないでしょうか?

アート作品は流通の段階で様々に金額が付与されていきますが
ここでは、美術品に馴染みない人でも割と身近にある、所謂「美術品買取業者」がどのように金額を付けているか

業界人に張り倒されない範囲でそれをご紹介します。
なお、本文は特定の企業・店舗を対象にしたものでも糾弾を目的にしたものでもありません(あくまで「業界よもやま話」みたいなものですから訂正とかあればコメントいただけると誤解を防げるの助かります)。


【美術品買取業社とは……】

ここで紹介する美術品の買取業社とは、簡単に言えば持ち込まれた作品をその場で買い取り、現金化してくれる方々です。
所謂「質屋」さんが近い業態でしょうか。

こうしたリユース業界は昨今のSDGsやフリマアプリなどの普及もあり
市場規模というのは常に伸び続けています。
2022年時点で国内規模2.9兆円という、美術市場が世界規模でも10兆円に満たないことを考えるとかなりの規模に及びます。

実際は上記の国内市場の中で「美術品」という明確な区分(項目)はないのですが
家財、宝飾ブランド品など様々なものの処分買取をしていく中で美術品も相当数あるため取り扱いをする所がほとんど。

そのため店舗出店は増え続けており、中でも美術品は「当たれば一発がデカい」ジャンルでもあるため
それに特化したような専門的な店舗を設ける企業も多いです。

美術品の売却方法については、他にオークションや画廊などへの持ち込みなどいろいろありますが
オークションは現金化まで2~3カ月はかかり、画廊などは買い取りをしてくれないところがほとんど(買い取ってくれる場合、逆にアレだったり……)。

アプリで自分で、というのも割と面倒事が多いし即金が嬉しいから近所の買い取り屋さんへ持ち込み!
という感じで、割と手間なく早く現金化できるのが大きなメリットです。


【査定の仕方とは……】

さて、その査定の仕方とは如何なものか…… 冒頭の暖簾の奥では何が行われているのか……

答えは、「分からないので他の人に聞いてる」です。

( ゚Д゚)…???????? 

と思う方もいるかもしれませんが大抵の買取店舗にお持ち込みいただいても
ほとんどの店員さんは美術品を見てその場で値段を出す、ということができません。

真贋の判断など、その道の専門家でも独断できない要素もありますが
目の前の美術品が果たしていくらになるのか即判断できる、なんてのは至難の業。

そのため、品物を恭しく受け取った店員さんは暖簾の奥で写真を撮ったり電話やメールで
外部(同業他社、画廊、オークション会社など)に連絡を取り査定依頼します(返答が来る前にネットで調べたりもする)。

返答から任意の査定を選び、暖簾の先で待つ顧客にその値段を査定金額として伝えるというのが主な査定の仕方です。
(勿論、独自の査定基準を持ってる所もあります)

査定方法について顧客にぶっちゃけてる所もありますが、割と印象と信用に関わるので基本ぶっちゃけないのが普通です。

また、値段以外のことは査定の時に聞かないことが多いので
「この作家はどんな人なんですか?」とか「この作品は美術的にどんな意味があるんですか?」とか聞かれると買取業者は冷汗が噴き出ますんで止めましょう。

そこからお伝えした査定金額に顧客が納得してくれたら買取へ…… というのがザックリとした査定と買取の方法です。


【ちょっとした注意点……】

彼らがそこからどのように利益を得ていくのか? というところは(文章が長くなったので)別に書こうかと思いますが
美術品に限らず、買取をしてもらう際の注意事項をついでながらざっくり知っていただければと思います。

  • ”訪問査定”の際、丸投げは注意

先程書いたように品物が多かったり持ち運びが困難な時は、買取店のスタッフが直接訪問・査定してくれることがあります。
この際、「何を・いくつ」査定してもらっているかは把握しておいてください。

ひと昔(といっても2010年代とか)にもあったようですが、訪問査定で訪れた業者がその場の金品を盗む…… という事も割とあったとか。
特にモノが大量にあったり、訪問宅内を動き回る必要がある際には注意してください。

目を光らせろ! というより可能な限り業者さんが作業する際は補助や同伴をしていただくと双方にとって安心です。
また、訪問自体がシビアな時代でもあるので顧客の身分証の住所にしか訪問せず、記載がない住所以外(遠方の倉庫とか)に置いてあるものは買い取らない、という所も増えている様です(マジでいろんなクレームがあり、逆に買取業社側が無実の損害を被るケースもあるため……)。

  • 査定金額は即決しなくてOK

たま~にオークションに出せば300,000円はするであろう美術品でも1,000円という査定をされることがあるようです……(先述の通り”当たれば一発がデカい”)

中には全力で足元見てふっかけに来てる、という買取屋さんもいるのかもですが
「掛け軸は〇〇円。版画は△△円」など決め打ちしているところもあるようです(それもどうなんだという感じですが)。

なので、もし金額に不安がありましたら即決はせず、他を調べてみるというのも全然OKです(美術業界は狭すぎるので聞きすぎも注意)。

「この絵は今売らないと来週にはもっと価値が落ちますよ」とか「どこでも絶対同じ値段ですよ」など極端な意見は、余程売り急ぐ必要がなければ気にしなくていいとは思います。

先述の通り、買取業社さん側も全ての方が完璧に美術品に精通しているわけではないですから……


こんな感じで、独立独歩というより以外と連携して査定金額を算出することの多い買取業社界隈。

彼らがどのように利益を出しているのか? という点を見ていくと美術品の中古買取の金額について、もう少しクリアになるかと思いますので、その点は別記に譲りたいと思います(いつか書きます)。


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