アートオークションの事情
アートは高い。”よく分からんが”スゴイ高い。
ピカソが100億円を超えた、ダ・ヴィンチが500億円以上で落札されたなど
どっかで聞いたことがある作家がたまげる値段で売れる度にその印象は増すばかり(実際高すぎ)。
世間一般がアートのそうした美術業界の”値段”に触れる機会はなかなかありません。
大抵の人がそれを知るのは、たまに入ってくるオークション(主に海外)のニュースなどでしょう。
そんな高額品から雑多なものまで飛び交うアートオークションは実際どのように売買・運営がされているのでしょうか?業界の人間から胸倉掴まれない程度にアートオークションの売買システムの裏側を少しご紹介します(あくまで噂です……)。
オークション会社の主な収入
オークションのシステム(売り方・買い方)みたいなのは各オークション会社を参照いただくとして
ここでは、オークション会社がどんなことで収入を得ているか(何がしたいのか)に着目したいと思います。
オークション会社の収入の大半(ほぼ全部)は手数料収入です。オークションでは売買価格の「売」にも「買」にも手数料を課せられます。
日本だと15%前後が一般的ですが、海外大手だと25%前後の手数料が発生します(+消費税など)。
※直近で手数料の大幅な変更施策もあったようですが……(下記リンク参照)
なのでザックリ15%だとすれば1,000,000円で落札された場合、買い手には1,150,000円の請求、売り手には850,000円の支払いが行われ
それぞれ双方からオークション会社は手数料(300,000円)をもらいます。
「いや、ボロ儲けるやんけ」
と思う方が大半だと思いますが、いざ行うとなるとかなり経費と時間のかかる事業のためこれが適切……というのはオークション側の建前で
実際これはそれなりの落札率、金額、点数を確保できていればまぁ儲かります(破綻するモノが多いのも実態ですが)。
但し、それはオークション会社が顧客に譲歩するための余力のために必要なこととも言えるわけです。
「売り手数料は0でもいい 買い手数料は国王でも割り引くな」
オークションというのは無形商材。さらに顧客の資産を手放させることで始まる妙な業態です。
よって、「出品してもらうこと」に何より重点を置くオークション会社は多く
そのために売り手に対する手数料の割引というのは実際かなりあります。
分かりやすい所で、ある程度の高額品を出品する場合、手数料を減額させることが可能です。
基本的には数百万円、と査定されるものであれば全然割引される可能性があります。
但し、オークション会社も手数料が欲しいので「査定額ではなく落札実績で」と言ってくる場合があるので注意。
複数点持っている場合であれば安価な方で実績を作って割引を確定させておいて高額を後で出すというのもアリです。
ただぶっちゃけ高額品をチラつかせてれば、ある程度早々に割引の話が発生することが多いです。
オークション会社的には、相見積もりや他社に持ってかれることが一番キツイ。
と言ってもこのご時世と狭い業界で相見積もりが無いわけがないので
大体が相見積もりに出すと手数料の割引合戦が各社行われます。
上手いことやれば、出品手数料0%というのも無い話ではないので市場と相手のオークション会社と自身の交渉術をよく考えましょう。
逆に、買う時の手数料は国内外問わず減額されることはほぼありません。
昔には「国王が買っても割り引かない」と言ってたこともあるぐらい買い手数料は厳格です。
※
高額品を買うことでオークション会社にとって上客になることはありますが
その場合、落札品の輸送費やそれを出品した場合の手数料減額などの待遇が多くマジでほぼ買い手数料は引かれない……
※
こんな感じで「まず出品してもらう」ことが至上命題なオークションですが、当然それが売れなければ金にならない。
そのため、今度は「落札されるために」あらゆる手を尽くします。
本当にちゃんと競り売りした……??
オークション会社が「出品物がない」の次に恐れるのが「不落札」。つまり売れ残りです。
出品された作品はある意味でそのオークション会社の宣材になるので、高額になって話題になることが最高なのですが、売れなかった場合に逆効果になります。
例えば1,000,000円~と出品された作品が不落札になれば
あの作家・作品は1,000,000円以下でしか売れない、あのオークションでは買い手がいない、等々不安要素が大量に出てきます。
(この”レッテル”を業界的に「目垢がつく」という)
普通に競り売りをしていたら売れ残ってしまう可能性が高い、リスクを恐れてオークションに出してもらえない……そんな懸念を解消するためにオークション会社も妙な工作を仕掛けることがあります。
・完全落札保証!
あまり一般的な手法ではありませんが、かなりの高額品が出品された場合にオークション会社が行う手法です。
つまり、「出されたら絶対不落札にしない」というです。
例を出した方が分かりやすいですが
例えば1億円の作品を出品してもらったが落札されるか微妙…… しかし、出品は是が非でもしてほしいし不落札は今後にも響く…… みないケースがあったとします。
この際、オークション会社としては「9,000万での買取・支払いを保証する」提案が稀に稀に稀にあります。
これであれば、出してとしては収入が確定し、オークションとしても落札が確定し、まかりか違ってもっと高額になればラッキー……という感じ。
但し、オークション側が高額支出と在庫リスクを抱えるのでこの手法は殆どありません。
気軽に「やってね♪」とか言うと張り倒される可能性がありますのでご注意ください。
・買い手側が「公式に」値段を吊り上げる……?
これはオークション会社が、というより買い手にあたる顧客がオークション会社(というか出品者側)に提案する手法で
不落札を回避することに合わせて、より高額で落札を目指す方法です。
基本的にオークションでは吊り上げはご法度です。
しかしながら、値段が上がれば出品者、オークション会社は嬉しい。例え高額でも、買い手も欲しいものが買えたら満足……という現象を顧客側が起こすやり方です。
例えば1億円から出品されている作品があれば、買い手希望のAさんが「この作品を4億で買いたい人を知ってるので、競りを4億まで吊り上げてほしい」とオークション会社へ連絡します。
Aさん的には4億で買った金額に%で仲介料を貰うのでなるべく4億で買いたい……そしてさらに「4億を超えて誰か他の人が落札することがあれば、私にも謝礼金を払ってほしい」と提案します。
出品者としてもオークションとしても間違いなく高額になる……Aさん的にも仲介料か謝礼金のどちらかが入ってくる……
と、そんな思惑で競り売りとは一風変わった方法も存在します。
しかしケースバイケースですが、これをやってしまうとかなりオークション環境が乱れる可能性が高いため、オークション側もこの提案を飲むことはあまりありません。
が、突発的に作家の相場を外れて異常な高額落札があった際、裏側でこんな事例があった……なんてこともあるようです。
オークションといっても単純な競り売りではなく、いろんな手法があったりしますので
美術品をオークションで売ったり買ったりすることがありましたら、業界の詳しい方にご意見を聞いても良いかもしれません。
(そもそもオークションの社員が丁寧に対応してくれる……はず)
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