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『カゴメ—トマトの力で食文化を変えたパイオニア』前編調査ノート飲食業界編⑤全6話

「野菜不足が叫ばれる現代、私たちの健康を支えているのは“トマトのチカラ”かもしれない。創業100年以上の歴史を持つカゴメは、単なる食品メーカーではなく、“健康を届ける企業”へと進化していた!」

●飲食業界編

『食の未来を創る—飲食業界の全体像と代表企業』
『ケンタッキー・フライド・チキン—11種類のスパイスが生んだ伝説』
『タリーズコーヒー—シアトル発、日本流のコーヒーカルチャー』
『サイゼリヤ—低価格×高品質を実現したイタリアンの魔法』
『カゴメ—トマトの力で食文化を変えたパイオニア』
『出前館—日本のフードデリバリー革命』
全6話でお届けします!

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日本にトマトを根付かせたのはカゴメなのですね


「カゴメといえばトマトジュース。でも、その歴史はトマトジュースだけじゃない! 日本の食卓に深く根ざすカゴメの挑戦と成功の物語を紐解きます。」

――そんな書き出しに惹かれたあなたなら、きっと「カゴメ」という企業が単なる“トマトジュースメーカー”にとどまらず、日本の食文化や野菜文化に大きなインパクトを与えてきたことをご存じかもしれません。今回の飲食業界編・第5話(前編)では、1899年に創業し、いまや日本の“トマトといえばカゴメ”というほど広く認知されているこの企業の歴史、理念、そして数々の挑戦を取り上げます。

私(ユキ)は今回も、闇の組織によってウサギの姿に変えられてしまった元大学教授“うさぎ先生”と夜ふかし中です。「ハイブランド特集」や「ファストフード編」「カフェ編」「ファミレス編」などを経て、今度は“食品メーカー”の視点から飲食業界を眺めてみようというわけですね。先生はソファにのんびり腰を下ろし、ふわふわの耳をパタパタさせながらにこやかに語ります。「ユキくん、カゴメといえばトマトジュース、ケチャップ、野菜ジュース…という印象だろうけど、実はその裏に120年以上にわたる歴史と多彩な挑戦があるんだ。『自然を、おいしく、楽しく』という企業理念が、どう製品やマーケティングに反映されているのかを見ていこうか。」


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カゴメの歴史はトマトの歴史とも言えるかもしれません

1. 日本の食卓にトマトを広めたパイオニア

1.1 1899年の創業から現在に至るまでの歴史

カゴメの歴史は1899年(明治32年)にさかのぼります。創業者・蟹江一太郎が愛知県名古屋市でトマトの栽培に取り組んだのが始まりです。当時、日本ではトマトは「観賞用」として扱われることが多く、食用としてはあまり一般的ではありませんでした。うさぎ先生はソファの上で耳をピョンピョン動かしながら言います。「当時、西洋野菜はまだ珍しく、トマトの酸味や赤い色を敬遠する人も多かったんだ。でも蟹江さんは‘この野菜には大きな可能性がある’と直感したようで、栽培から加工まで一貫して手がける形で普及を目指したんだよ。」

  • 大正時代:トマトの栽培技術や品種改良を進めながら、缶詰やソースなど、加熱して食べるレシピを提案。

  • 昭和初期:第一次世界大戦後の欧米文化流入に乗って、トマトケチャップなど洋食文化の普及が後押しされる。

  • 戦後:日本の食糧事情が厳しくなる中、トマトジュースやケチャップが手軽な洋食の材料として注目を集める。学校給食などでも利用が広がる。

  • 高度経済成長期:テレビCMやキャンペーンで「カゴメ=トマトジュース」のイメージが定着。健康ブームの高まりと相まって需要が拡大。

このように、カゴメは“トマトを食文化に根づかせる”ために120年以上も努力を続けてきたのです。私(ユキ)が「昔の日本だと、トマトを生で食べる習慣すら定着してなかったとか聞きますし、相当な啓蒙活動が必要だったでしょうね」と驚くと、先生は「そうさ。そこでカゴメはレシピ開発や宣伝、学校給食へのアプローチなどを駆使し、‘トマトってこんなに美味しいんだよ’ と訴え続けた。それが今の ‘トマトといえばカゴメ’ というブランドにつながったんだね」と語ります。


1.2 トマトの栽培から加工・販売への挑戦

カゴメの強みは“トマトを種から育て、加工して販売する”という一貫した体制にあります。創業当初こそ手探り状態でしたが、やがて契約農家との連携を拡大し、自社農場や研究所で品種改良を行い、安定的に美味しいトマトを大量生産できる仕組みを作り上げていきました。うさぎ先生は「この一連の流れが、カゴメが他社に負けない品質とコスト管理を実現する要因なんだ。単なる加工メーカーではないからね。農業との結びつきが強い」と解説します。

私が「確かに ‘自社農園を持つ’ とか ‘契約農家を支援する’ とか聞くと、けっこう海外の食品大手みたいなイメージですね。日本では珍しいかも」と驚くと、先生は「うん。日本でここまで大規模にトマト生産を行う企業はそう多くないし、海外からも‘品質が安定している’と評価される。実際、カゴメは生産管理や農業技術にも力を入れていて、サステナブルな農業をめざす例としても注目されているんだよ」と言います。

カゴメの研究所では品種改良を進め、味・色・形・病害耐性などの面で優れたトマトを開発。そうした新品種を契約農家に導入し、栽培指導や収穫時期の調整などを行っているからこそ、トマトジュースやケチャップに使う原料が常に確保されるのだとか。


1.3 トマトジュースが日本の食生活に定着するまでの道のり

カゴメといえばやはり“トマトジュース”今でこそスーパーやコンビニで当たり前に売られ、「野菜不足の時はこれを飲もう」と言われるほど一般的ですが、普及当初は“酸っぱくて飲みにくい”“青臭い”などのネガティブなイメージがありました。先生は「それを乗り越えるため、カゴメは学校給食や企業向けの販促に力を入れ、トマトジュースが ‘健康的で、料理にも使える汎用ドリンク’ と理解されるように宣伝したんだ。結果的に『トマトジュース=体にいい』というイメージが定着したわけだね」と解説します。

さらに昭和40年代〜50年代にかけては“ケチャップ”や“トマトソース”を使った洋食が家庭に浸透し、オムライスやナポリタンが大人気に。カゴメの製品がこうした“洋食ブーム”を後押ししたと言っても過言ではありません。私が「ナポリタンやオムライスって、今では日本独自の洋食ですけど、そこにカゴメのケチャップがなかったら普及してなかったのかも…」としみじみ言うと、先生は「まさにそうさ。日本独自のアレンジ洋食文化を支えたのがカゴメであり、その結果 ‘トマト=カゴメ’ のブランドイメージが強固になったんだ」と語ります。


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新鮮なトマトって美味しいですよね!

2. 「自然を、おいしく、楽しく」という理念の実現

2.1 製品開発・マーケティングへの理念の反映

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