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「Live at the Ritz」 ロニー・ウッド & ボ・ディドリー
ローリング・ストーンズにおけるロニー・ウッドのギターは非常に雑だ。ソロを取れば断片的なフレーズを脈絡もなく繰り返し、伴奏においても弾いたり弾かなかったりまるで気まぐれだ。リズムは大きく前後にずれ、音量もろくに聞こえなかったと思うと急に爆音になったり不安定極まりない。
無邪気な笑顔でステージ上を練り歩きながら、バンドサウンド全体を崩壊させんばかりに乱雑にギターをかき鳴らす姿には狂気すら感じられる。ミ
「Four & More」 マイルス・デイビス
土砂降りのように降り注ぐシンバル、ブンブンと唸るベース、天翔るホーンと深く響くピアノ、それが多くの人が思い描くジャズというものだろう。1966年にリリースされたマイルス・デイビスの「Four & More」はまさにそんなジャズの魅力が詰まったライブ・アルバムだ。
このアルバムは1964年2月にニューヨークのフィルハーモニック・ホールで行われたコンサートを収録している。公式サイトによると、これはア
「At Fillmore East」 オールマン・ブラザーズ・バンド
サザン・ロックとは非常に多様な音楽であり、ひとつのジャンルとして括るのはやや無理がある。だが、いずれのバンドや作品も、泥臭い・男臭い・酒臭いという共通点があり、そのアルコール度数の高さゆえ、未成年には販売できない音楽なのだ。
アメリカ南部州でドサ回りをしていたローカル・バンドが全国区に成長し、このシーンを築いたのだが、母集団がそれなりに大きくなると突然変異的に突出した能力を持つ者が現れる。それがデ
「Beggars Banquet」 ローリング・ストーンズ
1968年にリリースされたこの「Beggars Banquet」を究極の名作だと賞賛して止まないファンがいる。言うまでもないことだが私もその一人だ。まさにこのアルバムをもってローリング・ストーンズの全盛期が幕をあけ、1970年代前半まで、"傑作の森"と言えるような名作を次々に作り上げてゆく。この「Beggars Banquet」の素晴らしさを語り継ぐことは人類の義務と言っても過言ではないだろう。
「Primitive Cool」 ミック・ジャガー
1987年にリリースされたミック・ジャガーのソロ2作目である。ローリング・ストーンズ内の対立が激しくなる中リリースされたこともあり、この作品に良い印象を持っている人は少ない。私自身ミック・ジャガーのソロの最高傑作は次作の「Wandering Spirit」だと思っている。しかし、本作とこの前作の「She's The Boss」には、莫大な金を垂れ流しながら、不安定な環境の中で不確かな未来を掴み取ろ
もっとみる「Live European Tour 1973」 ビリー・プレストン
ローリング・ストーンズの1973年ヨーロッパ・ツアーは、彼らの歴史において傑出したパフォーマンスだった。なぜこのツアーだけがこれほどハイ・クオリティでハイ・テンションだったのか長年の謎だった。ミック・テイラーを擁するフォーメーションはこのときまでに4年に及ぶライブやレコーディングを立て続けに行っており、バンドとしての習熟度が高かったのは間違いない。しかし、直前のオーストラリア・ツアーではここまで神
もっとみる「Brussels Affair」 ローリング・ストーンズ
ライブバンドとしてのローリング・ストーンズの黄金期がいつかという議論には事実上結論が出ていると言って良いだろう。もちろん好みの違いはあれど、ある程度彼らのライブ作品を聴き込んだファンであれば、結局のところ1973年のヨーロッパツアーがその頂点であるという見解に落ち着く。そしてこの絶頂期のライブ・パフォーマンスを捉えたものが「Brussels Affair」だ。
なお、ここで紹介したいのは2010
「Bridges to Babylon」 ローリング・ストーンズ
「Bridges to Babylon」は1997年にリリースされた、ローリング・ストーンズとしては20世紀最後のオリジナル・アルバムである。1989年に「Steel Wheels」で復活したローリング・ストーンズは、その後も「Voodoo Lounge」をリリースし、ワールド・ツアーを敢行してきた。この「Bridges to Babylon」は彼らのキャリアの中で比較的安定した時期にリリースされ
もっとみる「地獄の猟犬が追ってくる」 ロバート・ジョンソン
リーマンショックの直後ぐらいに、私は仕事で200人ほどが参画するプロジェクトに携わっていたことがある。そこには多くの下請けが入っており、私は中堅業者の管理者として10人ほどのチームを率いて参画していた。毎日の勤務時間は朝9:00から夜0:00までであり、休日は年に3日ほどだった。
日中の業務内容は、延々と続く会議で顧客や元請企業への進捗報告であり、実際に作業をして進捗させる時間はない。翌朝、再び遅
「Brown Sugar」 ローリング・ストーンズ
1971年の「スティッキー・フィンガーズ」のオープニングを飾るこの曲は、ローリング・ストーンズの代表曲の一つだ。軽快なノリと終盤のコール&レスポンスは長らくライブにおけるハイライトであった。しかし2019年を最後にこの曲はコンサートで演奏されなくなっている。
本作はキース・リチャーズのギター・リフを中心に構成されているが、アコースティック・ギターやマラカスも鳴り響き、全体としてあまりエレキ色は強
「The Star-Spangled Banner」 ホイットニー・ヒューストン
アメリカのフットボール決勝戦はスーパーボウルという大規模なスポーツイベントとして開催される。そしてその開会式では、その年に活躍したトップアーティストによって国歌斉唱が行われるが、これまでビリー・ジョエルやマライア・キャリーなどの有名アーティストがその舞台に立っている。しかし、歴代のアーティストの中でも最高の名演と言われているのが、1991年のホイットニー・ヒューストンによるパフォーマンスだ。という
もっとみる「Paint It, Black」ローリング・ストーンズ
"赤いドアを見ると、黒くぬりたくなる"
ミック・ジャガーはこの曲の冒頭、陰鬱に語りはじめる。それは歌というよりは独白だ。しかし、数秒後には一転して錯乱したように怒りを爆発させる。
"夏服を着た女たち! 俺は顔を上げることもできない!"
その爆発力は凄まじく、まるで彼が敬愛するジェームズ・ブラウンのようだ。1966年にリリースされた名曲「Paint It, Black」は、3分ほどの間にこの沈
「Blow By Blow」 ジェフ・ベック
ジェフ・ベックの突然の死から早くも1年が過ぎた。記録よりも記憶に残る男と言われていたが、その記憶からも彼の存在が日々薄らいで行くのを実感している。
だが私は今でも定期的に彼の作品、特にこの「Blow By Blow」を聴かなければ精神の均衡を保つことはできないのだ。音楽配信サービスを選ぶときもこのアルバムが最も美しく聴こえるプラットフォームを選んでいる。
ジェフ・ベックの代表作と言われる「Blo
「Strong Love Affair」 レイ・チャールズ
レイ・チャールズとは何者なのかを説明するのは難しい。かいつまんで言うと、彼は主に50・60年代に活躍したシンガー/ピアニストであり、ゴスペルとブルースを融合した彼の音楽は後にソウルと呼ばれるようになる。その後も彼は活動を続け、2004年に73歳で没している。詳しくはWikipediaや「Ray」という彼の自伝をもとにした映画を参照してほしい。
フェアに言うならば、ゴスペルを世俗化するというアイデ
「Shine A Light」 ローリング・ストーンズ
Shine A Lightは2008年に公開されたマーティン・スコセッシ監督によるローリング・ストーンズのコンサート映画である。2006年10月ビル・クリントン主催のチャリティーコンサートのドキュメントであり、ニューヨークのビーコンシアターという小規模会場での白熱したライブがマーティン・スコセッシによる臨場感あふれるカメラワークで捉えられている。荘厳なステージセットと客席最前列に配されたモデル風の
もっとみる「Still Life American Concert 1981」 ローリング・ストーンズ
60年におよぶローリング・ストーンズの歴史の中で、このアルバムを彼らの代表作と考える人はあまりいないだろう。しかしこれ以降、彼らはほぼ活動停止状態となってしまうため、Still Lifeは長らくストーンズの最新のライブを体感できる数少ないコンテンツのひとつとして愛されてきた。特に80年代からのファンにはストーンズのライブといえばこのアルバム、という人も少なくない。そしてこの時点における彼らの集大成
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