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JW560 抜き取って稲穂

【伊勢遷宮編】エピソード19 抜き取って稲穂


第十一代天皇、垂仁天皇すいにんてんのう御世みよ

紀元前4年、皇紀こうき657年(垂仁天皇26)。

天照大神あまてらすおおみかみ(以下、アマ)の鎮座地ちんざちを求め、倭姫やまとひめ(以下、ワッコ)一行は、旅を続けていた。

登場人物一覧表(倭姫の一行)
登場人物一覧表(三人の大夫)

そして・・・。 

ワッコ「して、私たちは何処いずこに来ておるのじゃ?」 

乙若おとわか「二千年後の三重県みえけん伊勢市いせし楠部町くすべちょうにござりまする。」 

地図(三重県伊勢市楠部町)

するとそこに「アマ」様が現れた。 

アマ「わらわは、気に入ったぞ。この地にしずまろうと思う。その名も、矢田宮やだのみやじゃ。」 

おしん「なんだぁ・・・(´Д`)ハァ…。伊勢いせ神宮じんぐうじゃねぇのか・・・。」 

アマ「わるかったのう!」 

ワッコ「して、矢田宮やだのみやは、二千年後の候補地では、何処いずこになるのじゃ?」 

ねな「田圃たんぼよ。」 

ワッコ「えっ?」 

ねな「何度言わせるつもりなの? 『田んぼ』よ。」 

カーケ「やしろではないのかね?」 

市主いちぬし左様さようにござりまする。此度こたびは、何故なにゆえか『田んぼ』にござりまする。」 

オーカ「そ・・・そのようなことがこりるのであらしゃいますか?」 

くにお「起こってしもうたのじゃ。いたかたあるまい。」 

インカ「されど、御案ごあんされまするな。ただの『田んぼ』ではありませぬ。」 

カット「左様さよう神宮神田じんぐうかんだとなっておりまする。」 

ワッコ「神宮じんぐう神田かんだ? すなわち『アマ』様にささげるいねそだてておるということか?」 

カット「左様さようにござりまする。」 

地図(矢田宮→神宮神田)
神宮神田(近景)
神宮神田の田植え

するとそのとき、二人の男が現れた。

先に言っておこう。

大夫たいふ物部十千根もののべ・の・とおちね(以下、ちね)と大伴武日おおとも・の・たけひである。 

系図(物部氏:ちね)
系図(大伴氏:武日)

ちね「ようやく戻って来たで!」 

武日たけひ「エピソード555以来やじ!」 

アマ「無事に、ミッションをげたようじゃのう。」 

ちね・武日たけひ「これはこれは『アマ』様。御尊顔ごそんがんはいたてまつりましたるだん恐悦きょうえつ至極しごくぞんもうたてまつりまする。」×2 

ワッコ「めっしょん? なにがあったのですか?」 

ちね「かたればなごうなるんで、エピソード555を見てくれ。」 

武日たけひじゃがその通り。」 

ワッコ「か・・・かしこまりました。」 

アマ「では、大夫たいふも五人、そろったことゆえ、次の遷座地せんざちまいろうぞ。」 

ワッコ「次は、何処いずこになりまするか?」 

アマ「その名も、家田田上宮やたのたのうえのみやじゃ。喜べ!」 

ワッコ「では、早速さっそく、解説を始めましょう。」 

カーケ「二千年後の地名で言うと、何処いずこになるのかね?」 

乙若おとわか矢田宮やだのみやと同じく、伊勢市いせし楠部町くすべちょうにござりまする。」 

おしん「候補地は、大土御祖おおつちみおや神社じんじゃだべ。」 

地図(大土御祖神社)
大土御祖神社(鳥居と拝殿)

カット「祭神さいじんは、三柱さんはしらになりまする。」 

市主いちぬし「すなわち、大国玉命おおくにたま・のみこと水佐々良比古命みずささらひこ・のみこと水佐々良比売命みずささらひめ・のみことにござりまする。」 

ねな「大国玉命おおくにたま・のみことは、この地の守り神で、水佐々良比古命みずささらひこ・のみこと水佐々良比売命みずささらひめ・のみことは、水の神様よ。」 

ワッコ「祭神が『アマ』様ではないが、ロマンということじゃな。」 

アララ「あらら・・・。そういうことになっちゃった。」 

ワクワク「そして、このみやにいる時に、ぼくは、さだめちゃったんだよね。」 

ワッコ「さだめた?」 

ワクワク「『アマ』様に御供おそなえする、朝と夕の御神饌ごしんせん御米おこめを作る御田みたさだめたんだよ!」 

くにお「もしや、その御田みたというのが、矢田宮やだのみや跡地あとちと言われる・・・。」 

ワクワク「その通り! 神宮神田じんぐうかんだが誕生した瞬間だよ!」 

インカ「ちなみに、神宮神田じんぐうかんだは、穂田ほたとも呼ばれまする。」 

ちね「なんでや?」 

ワクワク「御供おそなえする稲穂いなほを抜き取る神事しんじが、この『田んぼ』でおこなわれるからだよ!」 

ワッコ「二千年後も、続けられておるのじゃな・・・。」 

アマ「うむ。ありがたいことじゃ。では、次にまいるぞ!」 

オーカ「あしにあらしゃいますなぁ。」 

アマ「ん? 何か言うたか?」 

オーカ「い・・・いえ、何も・・・。」 

こうして、一行は、次の遷座地に向かったのであった。 

つづく

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