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JW576 伝説の海女

【伊勢遷宮編】エピソード35 伝説の海女


第十一代天皇、垂仁すいにん天皇てんのう御世みよ

紀元前4年、皇紀こうき657年(垂仁天皇26)。

天照大神あまてらすおおみかみ(以下、アマ)の御杖代みつえしろ倭姫やまとひめ(以下、ワッコ)は、垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊いくめいりひこいさち・のみこと(以下、イク)たち家族と共に、御膳御贄みけおおみにえところさだめる船旅ふなたびに出た。

系図(大王一行)

大神主おおかんぬし大若子おおわくご(以下、ワクワク)と、舎人とねり乙若子おとわくご(以下、乙若おとわか)が付き従う中、一行は、かづの「おべん」と遭遇そうぐうしたのであった。 

地図(現在地:三重県鳥羽市国崎町)

ワッコ「べんよ・・・。私は、この地のかづたちを、湯貴ゆきかづさだめたいと思うておる。」 

べん湯貴ゆき?」 

ロミ子「アマ様のあした御饌みけゆうべの御饌みけを、ささたてまつつとめにござりまするよ。」 

べん「えっ? そんな・・・おそおおいことにございます。」 

イク「そんなこと言わないで・・・。僕からも、御願いしたい。」 

べん「さ・・・されど・・・。」 

マス子「美味おいしい新鮮なあわびですからねぇ。ってけやと思いますよ?」 

シロ「べん・・・。大王おおきみ御杖代みつえしろたのみが、聞けぬともうすか?」 

べん「いえ・・・。ただ、なまあわびでは、くさってしまいます。鮑を薄く切り、したモノでも、よろしいでしょうか?」 

ワッコ「あわびじゃな? されど、生の鮑も、捨てがたい・・・。」 

干し鮑

ダッコ「どちらも納めていただく・・・というのは、どうでしょう?」 

ひばり「ダッコ? なまは、くさってしまうのよ?」 

ダッコ「生の鮑は、届いた、その日に食べれば、つかいかと・・・。」 

ニッシー「そうか! 流石さすが、ダッコ! その日に食べちゃえば、いいんだよ!」 

カキン「して、それ以外の日は、干し鮑を御饌みけとするわけですな?」 

ダッコ「そういうことね。」 

ワッコ「べん・・・。姉上のさく如何いかがであろうか?」 

べん「オリジナル設定のかたから、策をいただいた上は、お受けせねばなりませんね。」 

ワッコ「そうか! 受けてくれるか!」 

ロミ子「ちなみに、神宮に納める干し鮑は、熨斗鮑のしあわびと呼ばれるのでござりまするよ。」 

熨斗鮑

マス子「おかあさま? これが、熨斗のし起源きげんみたいですねぇ?」 

ロミ子「左様さようにござりまするよ。」 

ニッシー「熨斗のしって、なに?」 

シロ「兄上? 熨斗のしも知らぬのですか?」 

ニッシー「えっ?」 

ひばり「贈り物に付ける、かざりのことよ。」 

乙若おとわか熨斗袋のしぶくろの右上に有る、紋章もんしょうのようなモノが、熨斗のしにござりまする。」 

右上にあるモノ

ニッシー「ま・・・まあ、知ってたけどね。」 

ワクワク「知らなかったみたいだね!」 

ニッシー「はぁ? 僕の話、聞いてた? 知ってたから!」 

シロ「負け惜しみは、見苦みぐるしゅうござりまするぞ。兄上。」 

ニッシー「いやいや・・・僕は、だねぇ・・・解説の流れを考えて・・・。」 

ワクワク「ちなみに、熨斗鮑のしあわびだけど、二千年後も、鳥羽市とばし国崎町くざきちょうでは『伊勢いせ神宮じんぐう御料鮑ごりょうあわび調製所ちょうせいしょ』で、古来の製法のままに作られているんだよ!」 

地図(伊勢神宮御料鮑調製所)
調製風景
調製所の建物
調製所の干し場

ニッシー「ちょっと! ワクワクさん!?」 

ロミ子「ちなみに、べんは、神として、まつられたのでござりまするよ!」 

べん「えっ? 私が?!」 

ロミ子「海女あま神様かみさまになったのでござりまするよ。」 

ワッコ「や・・・やしろの名は?」 

カキン「海士潜女あまかずきめ神社じんじゃにござりまする。」 

乙若おとわか「他にも『あまくぐりめじんじゃ』とも呼ばれておりまする。」 

海士潜女神社(鳥居と拝殿)

シロ「明治めいじ時代じだいまでは『海女あま御前ごぜん』と呼ばれていたとのこと・・・。」 

ダッコ「べんは、伝説でんせつ海女あまとか、海女の始祖しそと言われてるみたいね。」 

イク「そうなんだよ。ちなみに、神としての名は、潜女神かづきめのかみって、呼ぶみたいだね。」 

ひばり「鎮座地ちんざちは、御贄地みにえどころとなった、鳥羽市とばし国崎町くざきちょうです。」 

地図(海士潜女神社)

マス子「全国の海女や、ダイバーたちが、崇敬すうけいしてはるみたいですねぇ。」 

べん「お・・・思わぬことで、なんもうして良いのやら・・・。」 

ワッコ「とにもかくにも、これからも、アマ様の御饌みけのこと、よろしく頼んだぞ。」 

べん「かしこまりました。」 

ニッシー「ところでさぁ・・・二千年後も『おべん』の子孫が、海女あまをやってるみたいだね。」 

べん「えっ?」 

ワッコ「ニッシー兄上? それは、まことにござりまするか?」 

ニッシー「ちょっと! ワッコ! 僕が、うそくわけないでしょ!」 

シロ「ん? 兄上? さきほど・・・。」 

こうして、御贄地みにえどころさだまったのであった。 

つづく

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