JW475 敢都美恵宮
【垂仁天皇編】エピソード4 敢都美恵宮
第十一代天皇、垂仁天皇(すいにんてんのう)の御世。
紀元前28年、皇紀633年(垂仁天皇2)のある日・・・。
ここは伊賀国(いが・のくに:現在の三重県西部)。
天照大神(あまてらすおおみかみ)(以下、アマ)の御杖代(みつえしろ)、倭姫(やまとひめ)(以下、ワッコ)が、驚きの声を上げていた。
ワッコ「なっ・・・なにゆえにござりまするか?」
アマ「なにゆえか・・・。もう、そのような答え探しは、やめようではないか・・・。」
ワッコ「と・・・とにかく、遷座(せんざ)せねばならぬのですね?」
アマ「その通りじゃ。次の宮の名は、敢都美恵宮(あえとみえ・のみや)じゃ!」
ワッコ「して、何処(いずこ)に遷(うつ)るのですか?」
アマ「同じ伊賀国じゃ。喜ぶが良い!」
するとそこに、三人の人物がやって来た。
采女(うねめ)の香刀比売(かとひめ)(以下、カット)。
大称奈(おおねな)(以下、ねな)。
その弟、大荒(おおあら)(以下、アララ)である。
カット「此度(こたび)の宮は、候補地が二つにござりまする。」
ねな「じゃあ、さっそく、解説させてもらうわね。まず一つ目は、都美恵神社(つみえじんじゃ)よ。祭神は、栲幡千千姫命(たくはたちぢひめ・のみこと)になってるわね。」
カット「栲幡千千姫命と申せば、天孫降臨(てんそんこうりん)で有名な、瓊瓊杵尊(ににぎ・のみこと)の母上様ではないか? 『アマ』様とは、関わりが無いような・・・。」
アマ「何を言うておるのじゃ。栲幡千千姫命こと『チヂミ』は、わらわの息子の嫁じゃ。全く関わりが無いわけではないぞ。」
ねな「でも『アマ』様が祀(まつ)られてないのよ? これは、どういうことなの?」
アマ「そ・・・そのようなこと、わらわに尋ねるでない!」
カット「あれ? 『ワッコ』様? ずっと解説に加わっておりませぬが?」
ワッコ「えっ? あ・・・いや・・・おじいさま(崇神天皇のこと)が、お隠(かく)れになったというのに、お別れ出来なかったことが、心残りで・・・。」
アマ「何を言うておる。汝(なれ)は、まだ産まれておらぬのじゃぞ? 致し方なかろう。」
ワッコ「そうなのです。産まれていないというのに、解説をしている自身は、一体、何者なのか・・・。」
ねな「そんなこと気にしちゃダメよ。大事なことは、鎮座地(ちんざち)の解説なんだから・・・。」
アララ「あらら・・・。そういうことになっちゃった。」
ねな「解説を続けるわね。鎮座地は、三重県伊賀市(いがし)の柘植町(つげまち)になるのよ。」
カット「そして、二つ目の候補地は、敢國神社(あえくにじんじゃ)にござりまする。こちらの祭神は、大彦(おおひこ)様にござりまするな。今の大王の祖父に当たる御方にござりまする。」
ワッコ「ひいおじいさま・・・。嗚呼、おばあさま(御間城姫のこと)とも、お別れ出来なかった・・・。」
アマ「し・・・して、鎮座地は、伊賀市の一之宮(いちのみや)であるぞ。」
こうして、なにはともあれ、敢都美恵宮の候補地紹介に成功したのであった。
つづく
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