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54歳、人生初のドイツ短期留学体験記2(講義、クラスメイト、学生食堂)

2023年夏、ドイツ南部ミュンヘンの語学学校に短期留学した時の経験談を書いています。講義開始の前日、学生寮の部屋が汚すぎて掃除で1日つぶれてしまい、ドタバタのスタートとなりました。


講義前日

学生寮初日、掃除が終わってシャワーを浴び、ルームメイトのRちゃんが焼いてくれたレモンケーキで一息ついた後、寮の各種施設の確認ついでに洗濯室へ向かいました。

拭き掃除で汗だくになったTシャツとタオルを(いかにもドイツ製の)巨大かつ堅牢な洗濯機に放り込み、出来上がりを待っている間、何となく近辺を散策していると、向こうから大きなスーツケースを持った女の子がやってきました。

挨拶をすると、開口一番「英語話せる!?」と聞いてきたので、どうやら英語圏からの留学生。

私「英語話せるよ。もしかして今日から入寮?」
女の子「ああよかった。そうなの。さっき着いたばかり。18号棟わかる?」
私「わかるよ。私22号棟だからたぶん近い。こっちだよ。」

同じ敷地内に4階建ての団地のような建物が20棟余り建っており、彼女の18号棟も私の22号棟も、敷地のかなり端っこのほうにありました。

女の子(以下Aちゃん)「ありがとう。私はAっていうの。メキシコから来た。」
私「私はきいこ。日本から来たよ。もしかして明日からサマースクール?」
Aちゃん「そうそう!B2のクラスだよ。」
私「私もB2だよ。明日良かったら朝一緒に行かない?」
Aちゃん「行くいく。実は駅の方向わからなくて。」
私「(駅の方向を指して)ここから駅まで歩いてまっすぐだけど15分くらいかかるらしいよ。初日だからちょっと早めに行こう。7時50分に駅のホーム集合で大丈夫?」
Aちゃん「OK!じゃあ明日駅でね!」

そんな会話をしながらAちゃんを18号棟の前まで送り、洗濯物を引き上げ、部屋に戻って明日講義の準備をして就寝。50代には体力的にキツい日でしたが、親切なルームメイトと明るいAちゃんのおかげで悪くない1日となりました。

このAちゃんはこの後1か月の留学期間中、お昼を一緒に食べたり、一緒に観光に行ったりして仲良くなりました。もちろん今でも時折連絡を取り合っています。

講義初日

講義初日の朝が来ました。ヨーロッパは夏の夜明けが早いので、6時頃には既にかなり明るくなっています。少し早起きして窓を開けると、予想外に寒く、冷たい風が吹き込みました。

手元のアップルウォッチで見るとまさかの気温摂氏12度。8月とは思えない寒さで、急いでカーディガンを羽織り、朝食時には温かい紅茶を淹れました。朝晩がこんなに涼しいとは知らなかったので、リュックにはウインドブレーカーをいつも入れておくようにしました。

朝食後、身支度を整えてお散歩がてら駅まで歩いていきます。緑に囲まれた一本道は、電灯もないので夜は暗くて若干こわいのですが、朝はいい感じの風が吹いていて散歩にはもってこいの道でした。実際、犬の散歩をしている人をよく見かけました。
(この投稿のトップ写真が寮から駅までの道です。)

駅でAちゃんと合流し、学校へ向かいます。
大阪市営地下鉄谷町線のような(関西の人ならたぶんわかる、ちょっと古い薄緑色の車両の)電車にのり、途中の駅でいったん降りて別の地下鉄に乗り換えます。

朝の電車は空いていました。

駅が工事中だったり、乗り換え駅で迷ったりしながら何とか学校の最寄り駅に到着。早めに出発したのにたっぷり1時間かかって、9時の講義ギリギリに教室に入りました。方向音痴の私だけならもっとかかっていたかも。Aちゃんが一緒で助かりました。

と思っていたら、私はAちゃんと同じ教室ではないとのことで、講義が始まってから校内をあたふたしながら自分の教室を改めて探すことになりました。初日からいきなり遅刻でなんとも恥ずかしかったですが、とにかく席について講義を受けます。

当たり前ですが、講義は全編ドイツ語、クラスメイトとのディスカッションも全部ドイツ語、資料も映像も何もかもドイツ語。ドイツ語を学びに来ているのですが、その説明がドイツ語なのでニワトリが先か、タマゴが先か、何から理解すればどうにかなるのか、初日は混乱したままで終わりました。

そしてビックリするほどの宿題の量。「え、これ、1日分ですか?」と言いたくなるほどの量です。今までの学習ペースと私のドイツ語スキルから考えて軽く3~4時間はかかるだろうと思われる量でした。しかも今日の資料の復習と、明日小テストあるとか言ってなかったかしら。日本で一応基礎学習を終えて来たとは言え、こんなにも一日中ドイツ語なのかと思って脳みそが筋肉痛になりそうでした。

クラスメイトたち

寮から学校までの道中、メキシコのAちゃんから聞いたところによると、私たちの参加するB2クラスはドイツの大学に入るために近隣国の高校生が多く、ほとんどはもう一つ上のC1クラスまで進んでから大学へ進学するとのことでした。Aちゃんはメキシコの大学生で、ドイツの大学院を目指してドイツに来たと言っていました。Aちゃんは表彰されるほど成績優秀で、留学期間中や試験前は本当にお世話になりました。

一つの教室でクラスメイトはだいたい20人くらい、年齢層はAちゃんの言ったとおり17~18歳くらいが多そう。国籍も様々、ウクライナ、トルコ、インドネシア、スペイン、イタリア、ベトナム、アメリカ、イギリス、韓国、ルクセンブルクなどなど、国際色豊か。日本は私ともう一人、東京大学のT君。T君はドイツ文学を専攻していて、英語よりドイツ語のほうが得意と言っていました。

挨拶と自己紹介を一通り終えて、席が近くなったメンバーと休み時間におしゃべりをしたり、ディスカッションやプレゼンテーションで意見交換したりするうちに、結構みんなと仲良くなれました。

クラスの中でダントツにドイツ語が上手だったのはウクライナのM君。彼はいつも朝一番早く来て、休み時間も質問し、講義後は観光もせずにさっさと帰っていました。彼は経済学者を目指しているとのこと。一見とっつきにくいタイプだったのですが、私と授業でペアを組んだ時には、私のたどたどしいドイツ語を根気よく聞いてくれ、勉強方法のアドバイスまでしてくれ、とことん優秀な好青年でした。聞くとまだ17歳。君の未来は明るいよ!

席が近くて、東大のT君と私あいてにいつも日本のマンガの話をしていたのはルクセンブルクのK君。フランス出身のおしゃれさんで、「推しの子」が好きなお茶目な人でした。寮も同じだったので時々電車で一緒になり、メキシコのAちゃんと3人で通うこともしばしばでした。日曜日にスーパーが閉まっていて、前日に食べ物を買うのを忘れて困っていた私に、寮のキッチンで簡単な食事を作ってくれました。親切すぎておばちゃん惚れてまうわ。
最近、「高校卒業したよ~!」とメールをくれたのも嬉しかったです。

イタリアから来たG君とCちゃん。クラスのムードメーカーで、いつもみんなを明るく笑わせてくれました。二人の話すイタリア語なまりのドイツ語がとてもチャーミングで、彼らとグループレッスンするのが本当に楽しみでした。G君はサマースクールの期間中に誕生日だったので、クラスのみんなでバースデーカードを書いて渡したら、ものすごく喜んでくれました。
講義後、駅のホームの反対側から大声で「チャオ!」とあいさつしてくれたのもいい思い出です。

トルコから来ていたEちゃん。明るくてハキハキした活発な人ですが、いつも優しくて、ちょっとしたトラブルがあると何かと気遣ってくれました。私が風邪を引いて寝込んだときに、差し入れにハーブティーと食べやすいものを買って、わざわざ部屋まで持ってきてくれたときにはもう泣いちゃったわよ。

他のクラスメイトたちも先生もみんな楽しい人たちで、一緒にランチに行ったり、近所に観光に出かけたり、彼らのおかげで「ドイツ語を学ぶ難しさ」が「ドイツでドイツ語を学ぶ楽しさ」になったのは間違いありません。

忘れてはいけないのがルームメイトのRちゃん
ウズベキスタン出身の彼女と話をすると不思議に落ち着くことができました。自分の選択でドイツに来ているのに、日常の小さなストレスで気持ちがささくれそうになった時がありました。そういうときにRちゃんの焼いてくれたケーキが本当に美味しくて、自分の置かれた環境がいかに恵まれているかを実感することができました。

講義内容と大量の宿題

ドイツの他の学校がどうなのかは知らないのですが、この学校に関して言うと、講義資料は毎回プリントアウトして配布されました。一応、クラスの共有フォルダなるものがあって、講義期間中にアクセスできるようになっているのですが、日常の講義資料は全て紙、宿題もプリントアウトして提出ということになっていました。

講義初日にノートパソコンを持って行ったのですが、まったく出番がなく、代わりに大きなバインダーが配られました。厚さ7~8センチ、A4ワイド版?くらいの大きさで、毎日毎日A4判のプリントアウト資料10~20枚くらいが配られます。宿題も少ないときで5~6枚、多いときは10枚くらい。10枚といってもギチギチに文字が印刷された10枚です。しばしば両面コピーです。

バインダーがまあまあ重たいのと、資料が日々どんどん増えていくので、私は2日目からはパソコンを持たないことにし、リュックにバインダーと筆記具、辞書と飲み物、ナッツなどの間食を入れて通学していました。

宿題は初日に感じた通り、毎日4~5時間はかかりました。
講義は平日の毎日9:00~12:30、そこから学生食堂で昼食をとって学生寮に戻るとだいたい15:00頃になります。駅前のスーパーで夕食の買い物をしたり、図書館に寄ったりすると帰宅は17:00頃になります。
そこからシャワーを浴びて、今日の講義の復習をし、19:00頃に夕食をとり、短い休憩を何度か挟みながら22:00〜23:00頃までかかって宿題をする、というのが留学中の日課でした。

ノートパソコンは関連資料を調べたり、プレゼンテーション資料を作ったりする以外にはほとんど使いませんでした。

若者たちは夜にクラブなどに繰り出していたようですが、50代の私はそこまでの体力はなく、翌朝も6:30頃に起床するので、23:00過ぎには寝るようにしていました。

紙のことばかり書いてきましたが、講義内容と宿題の組み合わせは今から考えてもよくできていると思います。
講義では主に文法事項と語彙について毎回違うテーマで先生が生徒の質問に答えていきます。疑問点が解決したところで、ディスカッションやグループトークなどでアウトプットの機会を多く作ります。宿題は語彙の復習と決められたテーマに沿った作文、または読解とその内容についての問題演習が多かったです。

この学校では、一つのテーマ(文法・語彙・表現などその時々で)につき全方向から練習することを重視していて、その練習のための素材が宿題で、講義は練習の過程で生じた疑問点を解決し、それを実践的に使う場、という感じでした。きわめて効率的に練習サイクルをまわすようにカリキュラムが組まれていました。先生の教え方も熱意があってわかりやすかったですし、何より先生自身がこの仕事を楽しんでやっていることが伝わってきました。

学校を決める際、私は環境と費用重視で決めたのですが、結果的に試験にも合格でき、短期留学の成果としては大満足でした。

Mensa(学生食堂)

私はもともと料理がそれほど得意でないせいもあって、メインの食事はもっぱら学生食堂に頼っていました。

朝晩はかんたんにパンと果物などで済ませ、昼食は学生食堂(ドイツ語でMensa:メンザ)で割とがっつり食べます。カフェテリア方式でおおきなお皿に好きなものをとり、最後に重さをはかって支払うという方式でした。

デザートや肉料理などは別勘定で、別途1ユーロ~2ユーロ追加するようになっています。メニューは日替わりで、ベジタリアンやヴィーガンメニューも充実していて、時々カレーライスなどのご飯ものも出ますので、食については全く困りませんでした。

ある日のメニュー。これで6ユーロ(当時のレートで840円くらい)

ミュンヘン市内で外食などすると、簡単なメニューでも20ユーロ+チップで3000円くらいは飛んでいくので、安価で美味しく、栄養も十分摂れる学生食堂はとてもありがたかったです。

朝晩は学生寮のデスクでかんたんにパンとヨーグルト、果物などで済ませました。果物やパンはスーパーで結構安く売っていたので、1日の食費は10ユーロ以内、1カ月でもだいたい300ユーロ(45000円弱)くらいだったと思います。

支払いはプリペイドカードをあらかじめ発行してもらい、そこにいくらかのお金をチャージしておいて、都度決済できるようになっていました。最終日にカードを返却すればデポジットを除いた残額が戻ってくる仕組みです。いろいろ便利なシステムがありました。

そういえば、イタリアのG君はいつもこの学生食堂で私の倍くらい食べていたっけ。

こんな感じで1か月の留学生活はあっという間に過ぎていったのでした。
わずか1年前のことなのに、ずいぶん昔のように感じます。この時に出会った人々は、これからどんな人生を送っていくのか、折々に連絡をくれるのを楽しみにしています。

短期留学中、ほとんどは勉強漬けでしたが、週末にはAちゃんたちと小旅行に出かけたり、一人でコンサートにでかけたりしました。学生寮の部屋にクラスメイトを招いて抹茶をたてたり、日本のお菓子を食べたりもしました。

そんな勉強以外の話もまた書いていこうと思います。よろしければまたお越しください。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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