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何度も会ったことがあるのに、14年間話したことがない人。


私の妹には、いわゆる親友がいる。

名前をツッチー(仮名)という。

彼女は妹の高校の同級生で、妹とは14年来の友だち。全般性不安障害で苦しむ妹の話を聞きに、自宅まで遊びにきてくれる素晴らしい人格者。


◾️妹についての話は昨日の記事を読んでね!


ツッチーは高校時代から私の実家によく遊びにきていた。今から14年も前のことになる。当時、妹がツッチーを家に呼び、ああでもないこうでもないと、何か話をしていた。


私は?


ツッチーとは、あいさつ程度。


(あ、今日もツッチーがきてるんだなぁ)

そう思いながら見ていた。当時のツッチーの髪の毛はショートで、たまに赤みがかった色になったかと思えば、次にきた時には緑になっていたり、一言でいえばパンクだった。


ずいぶんパンクな友だちがいるもんだなぁ。
…オリジナルな感じでいいねぇ。


兄としては、ただそう思うだけ。

ツッチーと会話のラリーをしたことはなかった。


現在、妹は全般性不安障害になり、保険の重要性が身に染みてわかったらしい。何かがあってからでは遅い、と。

で、ツッチーを紹介してくれた。

ツッチーは家族を病で亡くした過去を持つ。


生命保険外交員として働く兄を持ち、まさに今、心の病に苦しむ妹だから、ツッチーにはなんとしても私の話を聞いてほしかったようだ。何かがあってからでは遅いから。


ツッチーは30歳を超えている女性だが、無保険だった。妹の心配性もあり、私はツッチーに保険の話をすることとなった。


何度も会っているのに、
14年も話したことがないツッチー。


ツッチーとは妹の自宅ダイニングで話した。
横には私の妹がいる。


(…はて、どんな話をしたものか)


いきなり保険の重要性を語るのは粋ではない、と思って、まずはツッチーがどんな人間なのかを聞くことにした。単純に興味があった。

いろいろと聞かせてくれた。妹とはどんなきっかけで仲良くなったのか、今の仕事、家族との関係、興味のあるものは何なのか、たくさん聞かせてくれた。


で、保険の話をした。


妹そっちのけで、
ツッチーと2人で真剣に考えた。

ツッチーは何を考えて生きているのか、
どんなリスクが起こりうるのか議論する。


ツッチーは言う。



「おにい、私は200歳まで生きたい。
 将来は妖怪になりたい」




妖怪への転生を希望する人とは初めて会った。

14年前の私が抱いた「うわ、パンクな人だな」という印象を、ツッチーは時を超えて証明してくれた。パンクではない。妖怪である。



「じゃあ、ツッチーが心配なく妖怪になれる保険を一緒に作ってみよう」



そんな保険はないけれど、限りなく近づける設計にした。そうして保険の話がひと通り終わる。妹と3人で話をしていると、noteの話になった。妹が言ったのだ。

「うちの兄は、毎日エッセイを書いては自己満足に浸って、ほくそ笑んでる。だけどおもしろいから、いまは家族みんなが読んでるの」


間違っていない。


ツッチーは「ふーん」という反応だった気がするが、noteのアカウントは持っているらしい。文章は書いておらず読むだけだそうだ。


で、ツッチーに話す。


「俺のnoteは毎日更新でね、
 18時までに記事を公開してるんだ」


強く勧めておいた。





ツッチーとの保険契約から約3週間後。


契約後の確認のため、ツッチーに会う必要があった。場所はまた、妹の自宅である。テーブルに座る。妹を合わせて3人で。


で、保険の話もそこそこにnoteの話になった。
ツッチーは読んでくれたんだろうか?


ツッチーは言う。


おにい、あたしね、毎日18時になったら、欠かさずnoteをチェックして、おにいのエッセイ読んでる。素数の記事が最高だった。

心臓の話も笑った。19歳で私を生んでくれた~の記事は、あたしは家族を知ってるから絶対泣くやつじゃん、と思ったけど、案の定、感動した。

おぉ。


でも、おにいにアカウントがバレるのが怖いから、いつも読むだけでスキもフォローもしてない。

いつもnoteを開いて、18時だ! 更新されてるかな? あ! きた! と思って読んでる。活字から離れてたけど、おかげでまた文章を読む習慣がついた。

おぉ。


素数の記事はやばかった。最初からどんどん展開していって、概念に人格を与えていく感じがグイーンと最後まで続いてやばくて。

心臓と会話が出来たら、ってのも考えたことあったけど、あそこまで深く考えたことなかった。面白すぎて、あたしの妹に読んで、って言ったもん。

おぉ。



いや待て待て。




めっちゃファンじゃん、ツッチー。




会ったことがあるのに、14年話したことがなかった妹の友だち、ツッチーと話した結果、彼女はパンクで熱心な私のファンになってしまった。


読者さんからの感想を直接もらえる機会なんて、そうそうないから、私は嬉しくて。「あれは読んだ?これは読んだ?」と恥ずかしげもなく聞きまくる。


ツッチーには、ついでに私のstand.fmも
きちんと聴くように伝えた。


◾️最新話だけでも聴けば、全てが分かる!



アカウントは前々から持っていたらしい。妹は「でも120分は長いよ、聴く気にならない」と言っていたが、ツッチーは「いや、コンテンツは長い方が面白い。自分で調整できるんだし」と言うから、わかってるなぁ、と。



ツッチーと次に会った時は
どうなっちゃっているんだろうか。


妖怪かぁ。




…そして思う。


毎日18時、私のエッセイの更新を楽しみにしてくれている読者さんは、ツッチーの他にもどこかにいるんだろうか。


なんて考えながら、私の名刺の裏面に「ひらがな」でサインを書いてツッチーに渡してあげた。



サインはカタカナで「イトーダーキ」って書けばよかったかもしれないけど、それは作家ぶってて恥ずかしい。だから「ひらがな」のサインにした。


そんなことを考えながらサインを書いたのは、
ここだけの秘密にしておこう。


<あとがき>
少しずつ、北海道の身近な人たちの中にも私の大切な読者さんが増えてきました。糸井重里氏が今日のダーリンを20年以上毎日更新しているように、遠いどこかに熱心な読者さんがいるはず、と思って書いています。私の原動力になってくれて、どうもありがとう。今日も最後までありがとうございました。

【今週末】stand.fmに「みーな」さんが登場!

〈日時〉
・2023年2月11日(土)21:00〜
・2023年2月12日(日)21:00〜
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