キーエンスの人が直立不動で腕時計を見つめている。
※この記事を読み終わる頃には、上のサムネ画像の猫みたいな表情になることを保証するので最後まで読んでほしい。
みなさまは「キーエンス」をご存知か。
泣く子も黙るキーエンス。大企業である。いや、泣く子がさらに泣くレベルの大企業。ハンパない企業。それがキーエンス。
この記事の公開時点、その時価総額は、トヨタ、ソニーに次いで国内第3位の約14兆2,900億円。ユニクロのファーストリテイリングの時価総額が約7兆2,000億円だというから、キーエンスはユニクロの2倍の時価総額を誇る。それがキーエンス。
トヨタがアンパンマンなら、ソニーは食パンマン、キーエンスはカレーパンマンだ。ユニクロが天丼マンくらいと考えたならキーエンスの大きさが分かるはず。
社会人失格なんだけど、正直、キーエンスが何をやってる企業なのか完全に理解はしていない。「あぁ、キーエンスね。あのキーエンスだ、はいはい、あの」ってなっちゃう。
ただ、キーエンスの営業ノウハウが「ハンパない」ということは、営業を受けたこともないのに知っているわけで。
なんでも、キーエンスは平均年収ランキングのトップ常連企業で「30歳で家が建ち、40歳で墓が立つ」らしい。それだけ働くということなんだろうけど、とにかくその仕事ぶりはヤバいらしいんだ。さすがに40歳で墓は嘘だと思うんだけど。
とりあえず、ここまで読んでいただいた方には、「キーエンスってやべぇんだ」「キーエンスの営業ってえげつないらしい」「キーエンスが何の会社なのか、筆者はよく分かってないらしい」と認識していただきたい。
「知っとるわボケ」という方、すいません。
つ、つづけます、すんません。
さて、今から約5年前、私は札幌市内のある企業と商談をしていた。たしか午後イチだったと思う。1時間を予定していた商談が、思いの外はやく終わって、13:50くらいに商談先の会社を辞することになった。
その企業のエントランスから外に出て、パッと右を見ると、あるサラリーマンの姿が目に入った。直立不動のサラリーマンである。サラリーマンが直立不動で外に立っている。
(むむむ、直立不動の人だ…)
直立不動の彼とは目も合わない。
すっと前を見ている。
(むむむ、どこの人だ?)
スーツの社章を確認する。
(む?あの社章は…まさか!)
(キ、キーエンスだぁ!!!)
(うわあああああああ!!!)
キーエンスの人って、私にとっては「河童、天狗、ツチノコ」の類だった。空想、いや伝説の中の存在。「ネッシー、イエティ、チュパカブラ」だ。キーエンスの人がなぜこの街に!?そんなのいるわけないっつーの!という存在が私の目の前にいる…。
…………
…………
…………
と、いうわけだから、観察することにした。私は直立不動のキーエンスの人の前を通り過ぎて物陰に隠れた。河童、天狗、ツチノコが目の前にいたら誰だって物陰に隠れて観察する。観察は大事。チュパカブラだったら逃げるけど、キーエンスの人なら大丈夫。
(彼はなぜ直立不動でいるんだ?)
(これから商談か?)
そう思って私は自分の腕時計を確認する。
時計の針は13:55を指している。
(なるほど、14:00から商談だな?)
どうでしょう。
全国の営業戦士たちよ。
14:00から商談があるとしたら、皆さんは何時何分にエントランスの受付で受話器を取りますか。ちなみにこの日までの私は13:57でした。
直立不動のキーエンスの人は動かない。
(ほう、13:55だけど動く気配なしっと)
まだ観察する。
…13:56
…13:57
私だったら突入する時間である。
(むむ!まだ動かないか!)
河童、いやキーエンスの人は直立不動の姿勢を崩さない。しかし、その人は腕時計をチラッと確認した!
…13:57
…13:58
(さぁ、いくか!?)
天狗、いやキーエンスの人は直立不動の姿勢を崩さない!その人はまた腕時計をチラッと確認した!
(13:58だぞ!?大丈夫か!?)
…13:58
…13:59
(あと1分!)
ツチノコ、いやキーエンスの人は直立不動の姿勢を崩さない!!彼はまたも腕時計をチラッと確認した!
(まだ直立不動!?)
(立ってろと怒られたのか!?)
(いや!…まっ、まさか!?)
スマホの電波時計で14:00になる20秒前になった時だった。キーエンスの人が腕時計を確認して、とうとうエントランス内へ動き出したのである!!背筋はピンと伸びている!!!
(ま、まさか!!)
残り10秒!!!
(まさか、まさかっ!!!)
私は物陰からその様子を血走った目で見ている!キーエンスの人はエントランス内の受付電話の前に立った!!!私は時計とキーエンスの人を交互に見やる!物陰から!
(嘘だろ!?嘘だと言ってくれ!)
5秒前…4、3、2、1…(カチッ)
14:00!(りんごーん)
キーエンスの人は受付電話の受話器を
14:00ピッタリに取ったのであった。
物陰に隠れていた私は、
「こ…これは…
とんでもないものを見た…(ゴクリ)」
と思ってその場を去った。
河童が頭の皿を洗ってる様子を見た気分であり、天狗がデッカい扇子で風を起こしているのを見た気分であり、ツチノコがジャンプしているのを見た気分。ネッシーがネス湖のほとりでひなたぼっこしているのを見た気分であり、イエティが夏の山を歩いているのを目撃した気分であり、チュパカブラが牛の上に乗ってるのを見た気分。この直後の私の顔は、ちょうどこの記事のサムネ画像のような表情だったと思う。
なんともそら恐ろしい光景だったんだけど、以降は私も商談の際にはその時刻ピッタリに行くようになってしまった。
キーエンス、あぁキーエンス、キーエンス。
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