マガジンのカバー画像

短編小説。

24
読み切りの短編小説はいかがですか?
運営しているクリエイター

#失恋

君のいた余韻。

君のいた余韻。

「忘れ物ない?」
「うん、大丈夫。ないよ」
もう取りに来れないからなぁ、って君は笑う。
「もし忘れ物してたらさ、私のとこまで持ってきてくれる?」
「…馬鹿なこと言うなよ」
「あはは、冗談冗談」
助手席に乗っている君が、目じりを少し拭ったように見えた。
それは笑ったからか。それとも…。
君は、膝の上に大きな荷物を乗せている。
会話もほとんど交わさず、君をいつもの駅に送る。
これが君と過ごせる、最後の

もっとみる
I wanna be with...

I wanna be with...

ねぇ、あなたは今どこにいるの。
どこで何をして、今という時を過ごしているの―。

別の人の彼女になった。
あなたとは、まるでタイプの違う大人な人。
「じゃあ、今日も行ってくるよ」
「うん、いってらっしゃい」
あなたとは喧嘩ばかりの日々だったけれど、すごく余裕があって、口喧嘩すらすることがない。そんな優しい人。

「ねぇ、私のこと好き?」
「え?あぁ」
あなたといたときはこんな会話ばかりだった。

もっとみる

Ending

「今日さぁ、バイトでこんなことあってさ…」
「うんうん」

「今日服買いに行ったんだけどさ…」
「えー!どれどれー?」

「この前友達がさ、めちゃくちゃ面白くて…」
「ははっ、うんうん」

二人でいるといつでも僕は僕の話ばかりで。
今思えば、どれだけ君の話を聞いていただろう。
そんな僕でも、君はいつでも笑顔で話を聞いてくれていた。

***

もっとみる
日常革命。

日常革命。

朝7時。
いつもの時間にアラームで目が覚める。
すごく寒い。出たくない。
ベットの枕元にあるライトスタンドの電気を消して、空になった加湿器に水を補充する。
「起きなきゃ…」
そう呟いてベットから出ると、洗面台に向かった。
1本だけになってしまったピンクの歯ブラシを見ながら、少しだけ切ない気持ちになる。
そんな気持ちを誤魔化そうと、最近ハマっているバンドの音楽聞きながら、朝の支度をする。
「そんな曲

もっとみる
Goodbye My Love

Goodbye My Love

あなたのことを想うたびに、世界が輝いて見えた。
あなたを好きになって世界が彩やかになった気がした。
いつかあなたの隣を歩くような存在に。
そんな夢が度々私を満たしていた。

***

いつも通りの時間に目覚ましが鳴る。
もう5分だけ…と思いながらも重たい体を起こして、今日の予定を頭の中で思い浮かべる。
「あぁ…動くかぁ」
かすれた声でそう呟い

もっとみる
君がいた世界に。

君がいた世界に。

今日、僕の最愛の人が亡くなった。
信じられなかった。
受け入れられなかった。
涙も枯れ果てて、頭がぼんやりしている。
君の弾けるような笑顔を見つめながら僕は呟いた。
「似合わねぇよ…」
聞いたことないぐらい掠れた声だった。
鼻の奥がツンとする。
どんな服も似合う君だったけれど、遺影に映る姿だけは全くだった。

「もう!なに泣いてんのー?」
これは全て夢で、起きたらまた隣に寝ている君がそう言って笑っ

もっとみる
きみとぼくの白昼夢。(下)

きみとぼくの白昼夢。(下)

前編はこちらから。

“赤い糸”が切れてしまっても日常は続いていく。

君を失って1年が経とうとしていた。

君がいないことに絶望感を抱いていた僕だが、人間というのは残酷な生き物だ。

もう既に君の知らない僕に少しずつ変わっていっていた。

***

見たい映画ができた。
最近話題の興行収入が億を突破した作品だ。
特に誰のファンとかではないが

もっとみる
きみとぼくの白昼夢。(上)

きみとぼくの白昼夢。(上)

2人を繋ぐ“赤い糸”が切れる音が聞こえた。

2人の時間が、君が他の誰かと出会う時間になっていった。

2人の日々は色褪せていった。

悪い夢を見ているようだった。
早く覚めてくれ。そう願うばかりだった。
でも夢じゃなかった。

僕は君を失った。

***

いつも通りの時間に目を覚ます。
君のもので溢れかえる部屋を見渡す。
君は

もっとみる
ヘイコウセカイ。

ヘイコウセカイ。

君は先に寝てしまった。
すごく幸せそうな寝顔だ。
「ねぇ、どんな夢見てるの?」
返ってくるはずのない問いかけを君に投げかけた。
「ごめんね」
聞こえるはずのない謝罪。

「好きな人がさ、できちゃったんだ」

***

いつも通り「またね」と手を振って、君が部屋を出て行ったあと、僕は洗面所に向かった。
並んでいる青と黄色の歯ブラシに目を向ける

もっとみる
君とカメラと花火。

君とカメラと花火。

終わった。
全てを失った気分だ。
大好きなカメラにも触りたくないくらい、喪失感にかられていた。

シャッターを切る。
そんな一瞬さえも君に使えばよかったと思えるほど大切だった君は、僕のカメラには映らないくらい遠い存在になってしまった。

***

外でなにやら大きな音がする。
「あぁ今日花火だったか」
それまではなにも頭になかったのに、急に切

もっとみる
しあわせ。

しあわせ。

「いや!すごいだろ!」
「あははは!なにそれ!」
今日も他愛もない話で盛り上がる。あなたの隣で笑っていられるだけで幸せだった。
「あれ?次の授業なんだっけ?」
「…」
「ん?ねぇ、聞いてる?」
返事が返ってこなかったから、ふとあなたの方に目を向けた。

そこには、教室の端で女の子と笑い合う“あの子”を見つめる君がいた。

あぁ。そうか。
本当は分かってた。あなたがどれだけ“あの子”が好きなのかも。

もっとみる
永久花~Dried Flower~

永久花~Dried Flower~

「なんでスマホばっかみてるの」
「は?別に良くない?」
いつからこうなってしまったのだろう。
「よくないでしょ。私とこうやって会ってるのに」
「だって別に2人でいても喋らねぇもん」
他愛もない会話をしていても、気がつけば口喧嘩をしてしまっていた。

ごめんね。
私じゃない方があなたはよかったのかも。

ずっと言おうと思ってた。
私たち、もう無理だねって。

そう。2人は終わった。
1秒にも満たない

もっとみる
ワンルーム

ワンルーム

「今年の夏は、一緒に花火見に行こうか」
「いいね!行こう!」
―あの時の君の笑顔を、君との約束を、僕は果たすことができなかった。

***

僕の春は終わった。
これから始まる暑いこの季節を、君と迎えることは叶わなかった。
「もう…会うこともないのか」
君1人がいないだけなのに、部屋がものすごく広く感じた。

窓を開けた。窓

もっとみる
セブンスター

セブンスター

わかってる。どれだけ手を伸ばしても届かないことも。私になんて振り向いてもらえないことも。

***

「あ!先輩!お疲れ様です!」
「おぉ、おつかれさまー!」
今日もいつもの場所にあなたを見つけた。

「ちょっと先輩、またたばこ吸ってたんですか?」
「なんだよ。だめか?」
私が咎めるような視線を向けても、気にせず胸ポケットから

もっとみる