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Goodbye My Love

あなたのことを想うたびに、世界が輝いて見えた。
あなたを好きになって世界が彩やかになった気がした。
いつかあなたの隣を歩くような存在に。
そんな夢が度々私を満たしていた。


                            ***


いつも通りの時間に目覚ましが鳴る。
もう5分だけ…と思いながらも重たい体を起こして、今日の予定を頭の中で思い浮かべる。
「あぁ…動くかぁ」
かすれた声でそう呟いて大きくあくびをしながら、テレビをつけた。
いつも見る朝のニュース番組は、星座占いのコーナーだった。
「本日第12位は…ごめんなさい!おとめ座のあなたです!ラッキーアイテムは…」
いくらテレビの占いとはいえ、最下位なんて朝から縁起が悪い。
「ついてないなぁ…」
そう思いつつ、窓の外に目をやる。
今日も外は少し暗くどんより曇っている。
まるで私の気分みたいだな、なんて思いつつ、天気と占いの結果とで気分が重くなる。
「今日…ちゃんと来るかなぁ」
こんななんでもない日常のひと時でも、考えるのはあなたのことばかりで、そんな自分も少し嫌になった。


「おはよう!」
「あ!おはよう!今日は遅刻しなかったんだ?」
「ばーか、いつも遅刻するわけじゃねぇよっ!」
「なにいってんだか。ここ2日連続で1限遅刻してんのに」
「ちょっ、おまっ、それは言わない約束だろ」
「そんな約束してませーん」
ちょっと拗ねたようなその表情。
何種類感情を持っているんだろうと、不思議になるほど、あなたは色んな顔を見せる。
私はそんなあなたが大好きだった。
友達の輪の中に入っていった君の横顔をぼんやりと見つめる。
この人のこの顔を毎日見れるように…なんて幻想を抱いては、頭の中でかき消した。


忘れようとした。
あの時、あなたにはもう大切な人がいると知ってしまったから。


                           ***


ずっとあなたに振り向いてほしかった。
振り向いてほしくてたくさん背伸びをした。
これまでの私じゃ絶対手を出さなかったような、少し高いブランドの服を着たりなんかして。
背伸びをしすぎて、気づけば私が私じゃないみたいだった。

もう自分がどうしたいのかも、分からなくなってしまった。

こんなに苦しいはずじゃなかった。

どれだけ頑張っても、二人の間に割って入ることはできない。それを知らなければ。


もう忘れなきゃ。
あなたの横顔も、明るい人間性を表したようなその声も。
もう終わりにしなきゃ。
叶いもしない願いを抱えて、あなたを追いかけることも。


                            ***


これまでのあなたへの想いと、あなたとの思い出を涙に溶かしながら、あなたに思いを馳せる。

ずっと私の好きなあなたのままでいてね。


さようなら。背伸びした私。


さようなら。大好きだったあなた。

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