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【ブルガリア入国?!】イスタンブールからテッサロニキまでの波乱の17時間バス旅【2023年】

イスタンブールでの短い滞在を終えて、次はギリシャに向かいます。

トルコとギリシャの2カ国を訪れようとこの旅を企画し、イスタンブールからは陸路でギリシャ方面を目指すことにしました。

まずはギリシャ第二の都市であるテッサロニキ(Thessaloniki)へ向かいます。

大都市同士を結ぶバスだからそこまでトラブルはないだろう、と思っていた僕は、それが実に甘い考えだったことを知ることになります。

ジョージアのトビリシから27時間半のバス旅を無事終えた僕でも、まさか途中に別の国に入国するなんて思ってもいませんでした。

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きっかけ

首都ではないもののトルコ最大の都市イスタンブールは、空路だけでなく陸路も充実していることで知られています。

オトガル(Otogar)と呼ばれるバスターミナルからは、連日あらゆる方面へバスが出発しています。

コロナ禍も落ち着き、再び国境が開けてきた現在、外国へ旅行に出かける人も多く、安価で旅ができるこれらの長距離バスは、利用者も多くいます。

イスタンブールからギリシャへのテッサロニキへは、ネットで情報を調べて、チケットを購入しました。

一応価格の比較はしたものの、それほど大差がなかったため、あまり深く調べずに購入してしまいました。しかし、それがその後に響いてしまうとは。。

【旅程】
2月18日(土) 20:30 イスタンブール・ヨーロッパ Esenler Otogar発
2月19日(日) 15:25 テッサロニキ Makedonya Sehirlerarasi Otogar着

【費用】
TRY 650.00(4661円)

【バス会社】
VIP Arda Tur

およそ300km離れた距離に加え、国境を跨ぐため、この費用で移動でできることをありがたく感じます。

トルコとギリシャには1時間の時差があるため、移動時間は18時間です。27時間半のバス旅を終えたばかりだったため、むしろ短いとすら感じていました。

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バスはどこ?

出発時刻よりも2時間早く、出発地のエセンラー・オトガル(Esenler Otogar)に到着し、カフェで時間を潰します。

一日中ネットを触っていなかったため、SNSなどをチェックします。気づいたらとても時間が経ってしまうのが、SNSの悪いところです。

出発30分前になってから、トイレを済ませてバス乗り場を探してみます。

ここで初めて、このバスターミナルがとても複雑な形状をしていることに気づきました。

中央にメトロの駅や商店があり、その周りを囲むようにして道路が走り、その向こうにまた囲むようにバス会社のそれぞれのオフィスがあります。

Esenler Otogar

eチケットに書いてあるバスが見つからない。どうしよう。

案内係はいないし、そもそもバス自体が見つかりません。土曜の夜に出発する人は少ないのでしょうか?

焦って近くの人に声をかけたところ、チケットに書かれたバス会社の名前を検索し、Googleマップで詳しい位置を教えてくれました。

どうやら、乗る予定のバス会社のオフィスに行き、そこで再び尋ねる必要があるそうです。

親切なトルコ人に感謝を伝え(ありがとうのトルコ語はもう忘れた)、スーツケースに重いリュックを背負って、急いでその場所に向かいます。

さっきはあれだけ時間が余っていたのに、最後にこういった展開になってしまう。僕の悪いクセです。

様々なバス会社のオフィスから、自分が乗る予定のものを見つけ、カウンターでeチケットを見せます。すると、レシートのようなチケットを渡されて、入口とは反対側の出口を出るように言われました。

今回のバス会社「Arda Tur」の看板

外に出ると、目の前にバスが何台も停車していました。

これか。

これから乗るバス

どうりでバスが見えなかったわけです。外側にバスが停車していたから、中央にはバスがいなかったのです。

チケットを運転士に見せてから、バスに乗り込みます。

レシートみたいなチケット。全てトルコ語で書かれててよくわからない

バスはどこにもGreeceやThessalonikiという文字を見かけなかったり、運転士も「ソフィア」としか言わなかったため、不思議に思いました。

しかし、先ほどのカウンターでこのバスに乗るよう言われたため、ひとまず合っているということにして乗り込みました。

中では、乗客の点呼が行われ、僕の名前も呼ばれました。おそらく日本人は僕一人というバスの車内です。でも、無事に乗れたということで一安心です。

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イスタンブールを出発

チケットカウンターで初めて知りましたが、テッサロニキはトルコ語で「サラニキ」(Selanik)というそうです。

そもそも「テッサロニキ」という長い名前の正しい発音がわからなかったため、なんとなくの発音でその場をやり過ごしました。こういった情報は事前に調べておけばよかったと後悔しました。

ギリシャ語表記では「Θεσσαλονίκη」。これも後から知ったため、早く知っておくに越したことはありません。

バスは夜22時30分すぎにイスタンブールを出発しました。

残念ながら、このバスはWi-Fiも電源もありませんでした。Wi-Fiは明らかに電波が一つあるものの、添乗員からは「ない」と一蹴されます。

電源は、蛸足コンセントがひとつだけ入り口付近にあったため、みんなが使い終わったタイミングで使おうと思いました。そもそもWi-Fiがないなら、あまり電源も使わないだろうと思いました。

一つ前の席の人に話しかけられ、クッキーを2個もらいました。なんと優しい。

先ほどトイレで歯を磨いたばかりなのに、と心の中で思ったものの、ありがたくいただくことにします。そういった優しさは強く記憶に残ります。

夜も遅くなろうとしていたため、出発後すぐに消灯され、僕も眠りに入ります。

バス車内。そこそこ快適

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入国した国はどこ?

バスの車内はそれほど寒くなく、リクライニングもできて快適でした。いつものように靴を脱いで、良い体勢を探しながら睡眠をとります。

ふと目を覚ますと、電気がついて明るくなり、バスが停車していました。

休憩かな、と思ったものの、他の乗客全員がいなかったため、「出国だ」と思い荷物を持って外に出ます。事前にイスタンブールが国境から程近いところにあることを知っていたため、寝起きでもすぐに反応できました。

時刻はトルコ時間の1時50分。睡眠サイクルを壊され、3時間足らずで起こされたことで、イライラした気持ちが募ります。おまけに一日中行動していたから、疲れは溜まっています。

出国検査の列に並びながらも半分は寝ていました。近くにビザの発券機のようながあったものの、日本国籍は大丈夫だろう、という謎の自信のもとスルーしました。

出国検査では特に何も言われず、自分史上最もブサイクな手続きを終え、トルコを出ました。

外は寒かったものの、まだまだ眠いままです。ここでは、再びバスに乗り込んで次の入国検査に進みます。

ここで、僕は衝撃の文字を目にしました。

Republic of Bulgaria

あれ??ギリシャじゃなくてブルガリア??

一気に目が覚めました。

突然現れる「BULGARIA」の文字

冷静になれ、自分。

GPSのみがつながるGoogleマップを開くと、今から入ろうとしている国がブルガリアであることがわかります。

え???なんで???

僕はギリシャに行くためにこのバスに乗ったのに、なぜかブルガリアに入国しようとしています。

よくわからないままバスを降り、入国検査の列に並ばされます。

並んでいると、2つ前に並んでいた同じバスの乗客が、入国検査でしぶられています。何を話しているかわからないけれど、雲行きが怪しそう。

そんな姿を見て、ブルガリアに入る予定のなかった自分は大丈夫なのかと不安になりました。

ブルガリアの入国要件については全く何もわかりません。

あれ、ブルガリアってEUなんだっけ?シェンゲン協定なんだっけ?ビザって必要なんだっけ?そもそもブルガリアという国のことすらなにも知りません。

いろんな疑問が浮かんだものの、ここにいてももうやることはないからと、ひとまず列に待ち続けました。

先ほどの乗客は20分ほど待たされて無事に入国できました。なんだったんだろうか?

そして僕の番になると、パラパラとパスポートをめくり、すぐにスタンプを押されて完了。

数分前の不安が嘘のように一瞬で入国できました。

心配して損をした気分でしたが、これも海外旅行ならではのことでしょう。再びバスに乗り込みます。

無事にブルガリア入国

これから僕はどこに向かうのだろう。

ゴーギャンの大作が頭に浮かんだものの、これは哲学ではなく今目の前の話だと我に返ります。

Googleマップを見たところ、バスの進行方向にブルガリアの首都「ソフィア」を発見します。

もしかして、このバスはソフィア行きだ。先ほどの運転士が「ソフィア」と連呼していたのは、ただ目的地を言っていただけなんだ。

すべてがクリアになりました。

ギリシャのテッサロニキに行きたかった僕は、なぜかブルガリアのソフィアを目指すバスに乗っていたのです。

***

ソフィアに到着

トルコとブルガリアには1時間の時差があったため、ここからは時刻が午前3時が午前2時となります。スマホの時計を直してから、再び眠りに入りました。

この時、テッサロニキに着けるかどうかという不安よりも、早く寝たいという気持ちが強くありました。

イスタンブールで一日中動き回った身体は疲労のピーク。まだ28歳とはいえ、徐々に疲れが取れなくなってくることを感じます。

ふと目を覚ましたら、ガソリンスタンドに停車していました。時刻は5時20分。出発から8時間が経過していました。

ひとまずトイレに行こうと降りてみます。ガソリンスタンドに併設されたコンビニには、いろんな商品が売られており、トイレは無料で使用できました。

ブルガリアはロシア語と同じキリル文字を使っており、何が書いてあるのか全くわかりません。

通貨の単位がわからない

食欲がなかったし、通貨がわからないから価値の基準もわからず、結局何も買わずにバスに戻りました。今思えば、カードは使えたし、記念に水でも買っておけばよかったと思いました。

この後どうなるのか。今は何も情報を持っていないため、再び眠りにつくことにします。

そして7時20分、出発から10時間が経過し、ソフィアの中央バスターミナルに到着しました。

ここで全員降りるように言われます。

ブルガリアのソフィアに着いたバス

思いもよらぬブルガリア入国と、突然外に放たれるソフィアの朝。これからどうしたら良いのか。

悩んでいても仕方がないので、運転士に聞いてみますが、英語がわからないと質問以前にシャットアウト。

では他の乗客にと、近くにいた黒人の青年に声をかけてみます。すると、テッサロニキへ行く予定、とのこと。

自分もそうだと伝えると、彼はひとまずここで待つと言い出したので、僕も同じように待ってみることにしました。

話を聞いてみると、彼はアフリカ系のオランダ人で、カタコトの英語は話せていたものの、訛りが強くほぼ何を言っているかわかりませんでした。

そのうち、彼は持っていた現金をブルガリアの通貨に換金して、パンとコーヒーを買ってきてくれました。寒かったし、何か食べたかったのでとてもありがたかったです。

なにかつらいときに手を差し伸べてくれる人は素敵だと改めて感じました。

青年が買ってきた温かいカフェラテ

少しして、遠くの空から朝日が昇り始めます。

これから一日が始まるというのに、僕は見知らぬ国で途方に暮れています。

しかし、そんな状況でも朝日は偉大で、ぎらぎら日が差しながら温かいコーヒーを飲んで幸せな気分になりました。

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ソフィアを出発

僕がトイレに行きたいと言うと、彼は硬貨を一枚くれました。トイレが有料なのは覚悟していたものの、まさか硬貨をくれるなんて。その優しさに泣きそうになりました。

ほとんど何を言っているか聞き取れなかったものの、確かにその優しさは受け取りました。良い人に出会えると心がホッとします。

バスターミナルのすぐ隣にあるソフィア中央駅のトイレに行ってから、少しだけ周囲を散策しました。

日曜日の朝ということもあって、とても静かでした。車は少ないものの、駅前にはトラムが走っており、時々音を立てるのが聞こえてきます。

駅前の奇妙なモニュメントや、道端でキーホルダーを売っているおばちゃんなど、多少静かでもこの街の日常は確かにあるのだと思いました。

ソフィア中央駅前にある謎のモニュメント

元の荷物の場所に戻ってくると、乗っていたバス会社のカウンターが開いていました。

中に入りカウンターで、テッサロニキに行きたかったのにここに来てしまった旨を伝えたところ、10時発のテッサロニキ行きのバスに乗るように指示されました。

なんと!

あと1時間半で次のバスが来る。気持ちが一気に軽くなりました。

僕の荷物は重いスーツケースと重いリュック。

先ほどの彼はまだここで待つと言い出したので、僕も荷物のこともあったので周囲をぶらつくことはせず、バスターミナルでひたすら待機していました。

全く何が書かれているかわからないブルガリアの看板

気持ちが晴れると、集中力が高まります。

時間潰しに本を読んでいたらあっという間に時間は過ぎ、9:45頃バスターミナルに新たに1台のバスが到着しました。

このバスには「THESSALONIKI」という紙が挟んであります。

これだ!

ついにバスが来たことに嬉しくなり、運転士に確認してすぐにバスに乗り込みました。指定席だったみたいですが、僕はチケットを持っていなかったので、空いている席に座りました。

出発直前に一人一人のチケット確認があります。僕は昨日出発前にもらったレシートとeチケットを見せたところ、難なくOK。

万事休す。

日が高くなってきた朝10時。出発から12時間半、ソフィアに着いてから2時間半が経過した頃、僕が乗ったバスはソフィアを出発し、テッサロニキに向かうことになりました。

新たに到着したバス。テッサロニキ行き

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ギリシャに入国

天気に恵まれ、次第に暑くなってきます。

今回乗ったバスは、先ほどと同じくWi-Fiも電源もありません。しかし、この天気の良さと車窓からの大自然が僕を興奮させます。

ブルガリアの大自然を横目に見つつ、バッテリーが続く限り狭い車内でパソコンを開き、noteの執筆を進めていきます。

ブルガリアの大自然が広がる

時刻が12時を過ぎた頃、出発から16時間が経ち、バスはブルガリアとギリシャの国境へ到着します。

やっと入国だ。

ブルガリアはわずか10時間ほどの滞在だったものの、僕にとってとても記憶に残る訪問でした。いつか、ちゃんとした形でブルガリア、そしてソフィアを訪れたいと思いました。

「HELLAS」がギリシャを指すことはなんとなく知っていた

この国境では、他の国よりも簡素な出入国検査が行われていました。

屋外にいたままブルガリアの出国審査のカウンター(高速道路の料金所のイメージ)を通り、次にその隣のギリシャの入国審査のカウンターを通るというもの。

全員バスを降りて、列に並びます。

ブルガリアの出国は、パスポートをじろじろ眺められたものの、無事に終わりました。

すぐ隣の窓口で行ったギリシャの入国審査では、パスポートを眺められた上、偽造のものではないかを細かくチェックされ、添付されているビザについても説明を求められました。

少し面倒だと思ったものの、英語が伝わったため、スムーズに伝えられました。ブルガリアの全く英語が伝わらない状況と比べると、比較的楽な展開です。

言語が伝わることも、精神衛生的には大切だと実感します。

ビザについて説明すると理解を示してくれ、無事にギリシャに入国できました。

後々知ったことですが、ブルガリアとギリシャは共にEUであるものの、ブルガリアはシェンゲン協定外なため、ここでは国境検査が行われています。

しかし、ブルガリアはシェンゲン協定を目指そうとしているため、今後この国境検査も撤廃される可能性があります。

ギリシャ入国

ギリシャに入国した後、すぐに目の前にカフェがありました。小腹が減っていたので、ここでクロワッサンを購入します。

メニュー欄に記載されていた貨幣はユーロ。ギリシャはヨーロッパの端ではあるけれど、ここでの通貨はユーロです。

少しテンションが上がります。

安心感と高揚感の中、しかも大自然に囲まれた中で食べるクロワッサンはとても美味しく、大きな満足感がありました。

美味しいクロワッサン。2.3€

ついにギリシャだ。ずっと行きたいと思っていた国に来ていることをじわじわ感じてきます。

再びバスに乗り込み、テッサロニキに向かいます。

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テッサロニキに到着

高速道路から見える看板はギリシャ文字。高校時代の数学を思い出す「γβθμπ」などの文字がいたるところにあります。

太陽は高く上がり、バス車内の気温も上がっていきます。次第に瞼が重くなり、気づいたら眠りについていました。

少し汗ばむ中、目を覚ますと周囲はビルや住宅が多い、都市部に入っていました。

いよいよ着きそうだ。高揚感を感じます。

速度を緩めたバスはとある建物に入っていきます。天井が高く不思議な形状。この空間に何台ものバスが停車しています。

バスが停車し、運転士が「テッサロニキ!」と叫びます。

着いた!

時刻は14時40分。予定よりも1時間早い到着でした。

そもそも、元々のタイムスケジュールはソフィアで乗り換える前提だったと気づきました。とはいえ、チケットのどこにもそんな表示はなかったし、誰だってその状況は混乱するはずです。

これも海外旅行の醍醐味だと受け入れ、経験値が増えたことに対する喜びの気持ちすらありました。

到着した場所は、市内西部のKTELバスステーション。想定していた場所よりとは違ったものの、いろんなバスが停まっていて楽しい雰囲気がありました。

バスステーションは特徴的な建物

テッサロニキはギリシャ第二の都市。とは言え人口は32万人ほどの小さな都市です。

2018年のギリシャの財政破綻の影響を受けたのか、街は郊外に向けてシャッター街が続き、そのシャッターには落書きが多く描かれていました。

少し治安の悪い雰囲気を受け取るも、中心部は海沿いを中心におしゃれなお店も多くあります。

海沿いにあるアレクサンダー大王像

ここで僕は5日間滞在し、次は北マケドニアのスコピエに向かう予定です。トルコとギリシャの2カ国を巡る予定でしたが、もっといろんな国に行きたいという興味が湧いてきました。

***

まとめ

結果的には17時間の旅となりました。

バスに乗っていた時間は14時間ほどだったため、腰に響くものはとくにありませんでした。

しかし、別の国に入国してバスを乗り換えるという奇妙な体験をしました。想像もしなかったことが起こってしまいました。

無事にテッサロニキに着いてホッとしています。

海外旅行は何があるかわからない。物事がうまくはいかない海外ならではの事情を体験できた気分です。

イスタンブールからテッサロニキに向かわれる方は、ぜひ束の間のブルガリア旅行もお楽しみください。




旅の様子はこちらにまとめています。

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それでは、また明日お会いしましょう!

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