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居場所

僕は、体調が良くなかった。
足の巻爪が、悪化して抗生剤を飲んでいる。
なんだかうまく行かない。
先週は、結婚相談所を通して知り合った彼女から、交際を断られた。

職場でも、ここ最近、何かに付けて上司から注意され、指導を受ける。
関係部署から、苦情が相次いでいるという。
報告漏れ、確認不足、うっかり忘れ、理解はできているか、一緒に確認するよう言われた。
システムが古いせいだと、言い返しても仕方がないので、とりあえず謝る、ということを繰り返して、今日も、コンビニに寄ってエネルギーチャージゼリーを買って帰る。
フルーツ味が好きだ。


僕は、できない人、使えない人、そう言われているようだ。

父親と同じ学士を取り、母親の言うとおりにやってきたのに、なぜ、うまく行かないのか。

誰からも褒められない。
犬だけが、哀れんだ目でそばに来てくれる。

流石に、何かが違うと、感じてきた。

家は代々、裕福な方で生活には困らない。
現在、援助があるわけではないが、おそらくは長男なので、祖父母からの遺産が入る予定だ。
疲れない程度になら、働くことも賢明だと思っている。
この方式には満足している。いずれは好きなバイクに費やせばいいだろう。
ルンルンだ。


祖父が亡くなり、次に、祖母が病に倒れた。
娘に当たる叔母が、心配して度々遠方から泊りがけでうちへ来るのだが、長子である父と、母への小言がキツく、家の中は、穏やかではなくなっている。
叔母は祖母を思えばこそ、こうしておけばよかったのに、絶対今度はこうしなさい、と、忠告してくるが、全くの逆効果だ。
母は父に文句を言い、僕や妹が加勢した結果、父の忍耐力が限界になるのも無理はない。
それだけ関わろうとするのであれば、叔母が祖母を引き取るか、病院の送迎や、法事もとりおこなえばいいじゃない、僕としては、そう言いたいところだが、黙っている。

娘は嫁ぎ、長男が跡取りとなる、伯母にとって、父母にとって、それは当たり前なのだ。今の時代では、色々な形もあるが、父母の時代は、年長者の言うことは正しく、逆らってはいけない、親の面倒は長子がみるものだ、親がそう言えば、それが、常識とされてきたし、一般的だ。
べき、に重なるべき、あぁ、重苦しい。
そこに我が家の行き詰まりがあるのではないか。
家、という制度を守るための知恵が、なんだか化石のように、見るだけで活用できるものではないな、と感じる。
伯母だって、祖母と暮らすことを、懐かしみたいのかもしれないが、自身の家族を説得することは、ままならないのだろう。

ややこしいことになりそうだから、という理由で、僕は祖母にはもっともっと長生きしてほしい。
願っていることは、同じだ。





父が、耐えきれずに、昨日も少し荒れたので、止めに入って、僕は筋肉痛になった。
イタタ、タ、と呻いていたら、職場で同僚に運動不足だね?、と、笑われた。


父も母も本当によくやっているのに、満足はしていないらしい。
祖父母も感謝を口にしていたのに、自分で自分自身を認められずにいる。


僕の体調が良い日は、一年にたった数日だ。
アレルギーを持っているせいで、しょっちゅうマスクが汚れる。
僕もこんな自分を認めたくない。

貧乏ゆすりも、スピードアップしてるらしく、職場で共用の回転椅子を壊したことも、自分のせいにされた。

ゴミ出しや商品補充、体力的雑用は全部やっている。そのことで、また上司からのコメントが入った。
雑用とは?なんですか、と。
ちょっと、うるさいな。
消してしまいたい。

会議のノートが、読みづらい、直してから回覧するように。
期限調査は、期限が切れる前に交換するものです。
やりにくければ、そう報告してください。
調査票の手書き文字が、読めません。
発注ミスを防ぐために、何ができますか?

キーンと雑音が聞こえ始める。
そう上司に言ったら、耳にタコができたって、言うわけですかー?、と呆れられた。
上手いな、と思った。


あんなに苦労して資格を取ったのだ。
特別、頭が良いわけでもないので、テストの点を取ることは、本当に苦しかった。
眠いのに起こされ続けた、受験生活は、思い出してもヘドが出る。
幼少期から、クイズ形式でなんでも質問されたせいで、計算だけは早い。
そういうところは、自分でも矛盾していると思うが、クイズ以外の返事は、すっと、出てこない。できないに等しい。
聞いてるのか?と、よく言われる。

みんなが僕に注目していることを意識すると、適当なことを言って、はぐらかす。
とりあえず自虐しておけば、楽だ。


面倒くさいことは、全てやらなくてもいい仕事なのだ。
この先取って代わるものが出てくる。


祖母の熱が続いている。
叔母が来るのをいくらかでも阻止すればいいのに、と父に言ってみたが、それはできないらしい。
妹が、受験シーズンで、こんなに揉め事続きでは受からないかもしれない。
叔母が来るたびに、家中が騒がしい。


祖母の育くんだものは、何だったんだろう。仲が良過ぎるのも、困ったものだ。
相続の話にも必ず叔母は、等分を主張してくる。


立場主義を振りかざせば、結局自分の首を絞める。
長男だから、こうだ、人として、こうあるべきだ、姉だから、娘だから、言って良い、言ってやらなければいけない。
なんでそんなこともできないんだ、、、、。


それは、祖母らが教えてきたことなのだろうか。愛を注いできたものたちが形になったのだろうか。


しかしそのどれもが、°"幸福"には結びついていない。
今のところ、僕は、聞くだけで、そうとう気分が悪い。
理解しようともがくほど、辛い。
マイクロチップがどうとか、変な言葉を話さないでほしい。
それを話しているのは、僕の頭の中かもしれない。


妹は、試験に受からないかもしれない。
叔母のせいで。
心配で倒れそうだ。

実家を出て半年になるがそんなことが色々重なって、しょっちゅう実家へ帰るはめになった。
ちっとも帰りたくはないのだが。

なぜ帰るんだろう、僕は。

巻き込まれたくない。
けれど、帰らないと、長男のくせに冷たいと、親に言われてしまうので、渋々帰っている。
冷たい人だとは、思われたくない。
両親が自分に温かかったことは、今は思い出せないが。
妹も弟も、よく耐えているのは遺産の行方がよほど気になるのだろう。


両親は、結婚相手に対しても意向があり、聞き入れない場合は、援助はないと思え、僕に言ってきた。

モヤモヤとする。
いつも巻き込んでくるし、この先も介入は免れないぞ。
結婚相手は、喜んでくれるんだろうな。たっぷり支援があるのだから。
何でもお金がすべてなのだ。

うまく行かないのはお前のせいで、うまくいったことには、自分のおかげだと、母は僕をまるで自分の持ちものか、家のロボットのように扱う。


父のマネをする。
いったい僕は、誰のなのだろう。

母のマネをする。
ほらまた失敗してしまった。



婚活相手から断られた理由が、あり得ない。

子供の教育に共に取り組めそうにない、向上心がない、予定を合わせてくれない。



嘘だろ。
大学まで出て、資格職についている。
本当に学生時代は頑張ってきたはずだ。
子供の教育について、話した?そんな時間はあったかな?
教育方針は、教育学部卒の君のほうが詳しいだろうから何を参考にするかは任せたい、そうは言ったかもしれない。
協力しない、という意味などではない。

大学なんて、本人が行きたくないときもあるし、他の夢があることもある、と話した。自分が苦労したからそういう場合もあるな、と思ってのことだ。

約束をドタキャンして、予定を変えたりしたのはそっちだったじゃないか。
僕の顔には、融通がきくと書いてあったはずだ。

なにを間違えたのか?



シフトを、交代してもらいます。あなたと一緒だと馬鹿にされてるように感じる、とスタッフから言われたけど、心当たりはあたりますか?
だって。

何故だ。
評価の仕方がおかしいのじゃないか。
普通の人間にはできない内容の仕事だ。
僕優先で良いはずだ。
それも違うのか。


何故、自分は精一杯やっているのに、伝わらないんだ?

傷つけたことに、された、、。
僕だって生身だ。
やめてくれ。

全部うまく行かない。

叔母のせいだ。
体調が悪いのも。
婚活がうまく行かないのも。
仕事で、注意を一方的に受けるのも。
叔母は、今や事故物件だ。
きっとあのパンデミックで、おかしくなったんだ。
叔母が悪いのではない。弱い生き物、お可哀そうに。



ヒソヒソと僕に対する批判が話し合われる。
期待は裏切られるものだ。
これ以上、協調する必要はあるか。
体調が悪い中でも、黙ってやれることはやっているじゃないか。
雨の日も風の日も、上へ下へ、走り回って働く。
ボタンさえ押し間違わなければ、あとは流れるように仕事は終わる、終わらせてみせる。


怒る気にもなれず、時折ため息が出る。


なぜみんな理解しないのか。
僕もいずれああなるんだろうか、、、。
いやだ、、、。


※☆#°✜~-∶✫@❛@ᕦ༼ຈل͜ຈ༽ᕤ

期待値が高すぎたようです。
英亜居くんは、システム不具合が多く報告されています。
分析するのにエネルギーを費やし、実行に移すパワーがもたないようです。
お金へのアクセスはオープンですが、乗り物にはこだわりがあるようです。
自分自身への愛をプログラムに追加しておかなくては、将来、危険かもしれません。
アウトプットは得意です。


忘れられない記憶は95%になっていて、そろそろゴミ箱へ移行しないと、もうすぐスペースがなくなります。

英亜居くんの家庭に問題はありません。全員、普通に寿命を全うしています。
自分の体調不良は、認識するようになりました。

仕事は確実なぶんゆっくりです。
作業の指示方法を変えて見る、と先方から申し出がありました。
マニュアルや、指示を見える化しよう、というものです。
人の顔色や感情を読み取るには、視力が適していません。クレームに対する学習力がないのはそのせいです。


時間が経てば、叔母を、別時空の自分の妹だと理解するでしょう。

共存に必要なものは、クリエイティブな思考と笑いだと、個人的には思う。
ひとは笑えば、チャラになるのだ。
ヘッチャラに。


))]"」ᕦ༼ຈل͜ຈ༽ᕤピッピッ

期待は裏切るものなの ᕙ(͡°‿ ͡°)ᕗ

そう、きみも。
裏切っちゃえ。

プログラミングをしながら、私は窓の外の暗い空に、目をやる。
静かだ。
自分の音にだけ、私は反応する。
これが私だ、という確固たるものは、存在しない。


何か事が起きて、振り出しに戻る。
英亜居は、常に周りを成長させる。

私も、現場も、同じ答えを共有している。

私が成長すれば、英亜居が進化する。
英亜居が進化しなければ、現場が変化を遂げる。


英亜居自身は、意図せず進化し後退もする。
ただの動く、ロボットではない。揺れ動くヒト型ロボットなのだ。


英亜居のまわりの波紋が美しい。
そうありたい。

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