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われ反抗す、ゆえにわれらあり。 〜山口周さん『クリティカル・ビジネス・パラダイム』を読んで

久々のnote投稿になってしまいましたが、今回は書評にチャレンジしてみたいと思います。

紹介する本は、2018年頃から私自身に最も影響を受けた著作家と言える山口周さんの最新刊である『クリティカル・ビジネス・パラダイム』になります。

さて、『クリティカル・ビジネス・パラダイム』についてですが、
私自身の感想を一言でまとめると、
「これは革命の狼煙を上げる方法について書かれた本だ!」
ということです。

なんだか大仰に聞こえますが、この本の大きなテーマは、
「抗う」(あらがう)こと
だと思います。

まだ読んでいない人向けに、そもそも「クリティカルビジネスって何?」
ということについてお伝えします。

クリティカルビジネスとは、
「社会運動・社会批判としての側面を持つビジネス」
ということになります。

つまり、既存の価値観に対しての批判的な眼差しから駆動されるということを前提としており、
対義語として使われているアファマーティブビジネス(既存の価値観を受け入れ、顧客のニーズに適応し続ける)からのパラダイムシフトこそが社会変革を導くという、いわゆる「アンチテーゼ」と言えます。

非常にチャレンジングな考え方だと思いますが、個人的には大いに共感できます。

というのも、人が行動を起こすためにはやはり「違和感」というものが重要になると思うからになります。

「このままで良いのか?」「もっと良い方法があるのではないか?」
という現状に対する違和感から新しいビジョンが生まれてくるということは往々にしてあります。
不完全さ、不条理さに対する違和感を言葉にし、それとはまた別の方法で実現する手段を提供するというのが、これまでのイノベーションのプロセスであったのではないかと思います。

この本の中で特に印象に残ったのが、
「第3章 反抗という社会資源」でした。

そこでこの記事のタイトルにも記載した言葉であり、アルベート•カミュの『反抗的人間』から転用された
「われ反抗す、ゆえにわれらあり」
が登場します。

この言葉は、デカルトの『方法序説』で使われた有名な言葉である「我思う、ゆえに我あり」をなぞらえて使った言葉かと思われますが、
「反抗こそ社会変革の原動力になる」
という強いメッセージを感じます。

そして、それに捕捉された山口周さんの表現が非常に素敵でした。

クリティカルビジネスは「不正義や不平等に共犯者にならない」という選択をすることで、社会に対する深い愛情や尊重を表現している

まさにその通りだなと。
真剣になって「今のままじゃダメだ」と語る裏には、社会に対する愛情が存在するとともに、明確なアイデンティティが存在するからであると思います。
また、これは過去に哲学者、もしくはロックミュージシャンが理想的でない社会に対してメッセージを発信していることとほぼ同義とも思います。

反抗的だからこそ、多くの共感を得ることに繋がる
ということを諦めないことには強いパッションを感じます。

自分自身が持つ批判的な衝動に根ざして、アジェンダを掲げる
これこそがクリティカルビジネス勃興のきっかけであり、原動力と言えます。

さらに、もう一つ印象に残った言葉を紹介しますと、米国の思想家・エマソンによる以下の言葉です。

「内心に潜む確信を語れば、それは普遍に通じる」

これはなかなか痺れますね。

今は多くの人には受けれてもらえない問題かもしれないが、自分の中で正しいと確信して行動し続ければやがてそれは普遍になりうる。

このように考えると非常に勇気が湧いてきます。

そんな刺激的な思想に溢れた本であるからこそ、
私は最初に書いたような革命の狼煙を上げる方法が書かれた本だという表現に至ったわけです。

※サムネの画像は同書内に「クリティカルビジネスのアクティビストのための10の弾丸」になります。「弾丸」という表現がとても刺激的ですね。

ひょっとするとこの本を読んで、「こんなの理想論だ」と一蹴したくなる人もいるかもしれません。
特に逸脱を許容しづらい文化のある日本では、簡単には受け入れられ難い考え方とも言えると思います。

しかし、「これからどういう社会を築いて生きていくのか?」という考えを止めてしまっては、社会創造は停滞します。

「このまま全て何も変わらなくて良い」
そんな超楽観的な思想に陥ってしまう人などそうはいないと思います。

だからこそ、
こうありたい」「こうであってほしい」というあるべき姿を考え続けること

これが社会変革におけるエンジンであり、これを許容していくことこそが真の意味で「開かれた社会」になるのではないかと思います。

ということで、皆さんもこの本を読んで、
既存の価値観に違和感を大事にしていきましょう!
 そしてそれを意見としてアジェンダを掲げましょう!!
 さらにそこから共感者を集め、さらに良い社会を目指していきましょう!!!

P.S.
個人的には、山口周さんの著作として、
 『ニュータイプの時代』
 『ビジネスの未来』
に続く3部作の完結編のような印象でした。

この2つの本も新しい視点を与えてくれる非常に中身の濃い本だと思いますので、まだ未読の方はぜひご一読ください。

今回も最後までお読みいただき、大変ありがとうございました。
皆様の貴重なお時間を本記事にいただいたことに心より感謝申し上げます。
ではまた。

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