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【オープン探究】アイデア(興味関心)×問いで立てる探究テーマ

探究学習を実施するにあたり、難しいと頭を悩ませる1つのポイントが『探究テーマ設定』ではないでしょうか?
(しかもテーマ設定は最初ステップだからタチが悪い)
今回はそんなテーマ設定について書いてみようと思います。

ちなみに今回も、主体性を育むために必要な3要素(オープン探究、テーマ探究、環境)のうち、オープン探究について書いて行こうと思います。
※主体性を育む3つの要素についてはこちらをご覧ください。

テーマ設定の方法はいろいろありますが、
僕はこの方法が一番いいのではないかと考えています。
「アイデア」×「問い」

「アイデア」とはプロジェクトテーマを決めるに当たって取り扱いたいトピックです。
スポーツ、文化、エンタメ、歴史、テクノロジーなど
自分の興味関心に従って選ぶのが良いでしょう。

「問い」とはプロジェクトの課題に当たる部分です。
知りたいこと、解決したいこと、学びたいこと
自分の好奇心に従って選べると良いですが、全然興味ないこともやってみたら面白いことに気づいたりもします。直感で選べると良いでしょう。

例えば
「アイデア:美容」×「問い:ニキビってなんでできるんだろう」
=プロジェクトテーマ:ニキビを作らない美容方法は?
のようにテーマを作ることができます。
アイデアや問いの出し方は下記でまとめていきます。

環境(教師のマインド)については後述

🔸目標(課題)

そもそもテーマ設定がなぜ重要なのかというと
テーマ設定がうまくいかないと、生徒は探究学習に向かう意欲が湧かず、探究に活動的になれないからです。
自分の興味関心がないテーマ設定をしてしまうと、探究学習は苦痛になりかねません。
元々自分で動いて学びを得る能動的なタイプの生徒はいいですが、教わることが得意な受動的なタイプの学習者にとってはしんどい時間になってしまいます。

ですので、今回の目標は
「生徒が興味関心を持ち、活動意欲を掻き立てるような探究テーマを見つける」
ことに設定していきたいと思います。

正直なことを言うと、どんなにうまくテーマ設定をしたとしても、生徒が最初から目をキラキラさせてワクワクしながら探究活動を始めるとようなことはほぼないと思います。

ですが、テーマに全く興味を持てず「やらされ探究」に陥るのと、「ちょっと面白そう」「ちょっと気になる」と感じながら行う探究では雲泥の差があります。
今回は、テーマ設定の段階で「ちょっと面白そう」と思ってもらえることを目指していきます。

🔸テーマ設定する際の教師側のマインド

まず大切なことは、教師側のマインドだと考えています。
教師側に準備がないと、生徒が興味関心を大切にすることが難しくなります。
テーマ探究では、ある程度方向づけをしながら探究を進めますが、オープン探究では生徒の意思を尊重しましょう。

1)テーマ設定に偏りを作らない

テーマ設定にSDGsや社会問題解決、地域創生などの偏りを作ると、生徒は自身の興味関心に合わせた探究を行うことができなくなります。
その結果、オープン探究本来の目的である「自分をワクワクさせる方法を見つける」ことが達成しづらくなります。
もし、特定のテーマに沿った探究学習を実施したい場合はテーマ探究をお勧めします。

2)教師側の専門ではないテーマを恐れない

よく先生方から困りごととして挙げられるのが
「生徒の探究テーマが自分の(先生方の)専門分野ではないためアドバイスできない」
というものです。
それが原因で無意識のうちに生徒のテーマを自分の得意分野に誘導してしまうことはよくあります。
(僕も生徒の話を聞いている時、教育視点で語ってしまうことがよくあります。)

大人にも得意不得意があり、得意な側面から生徒にアドバイスできるのはメリットとも言えます。
だからこそ、生徒にも同じように自分の興味関心を伸ばせるようなテーマ設定を促したいですね。

探究をバリバリ実施している先生に聞いてみると
「そもそも先生が生徒の探究にアドバイスする必要はない」と言っています。
先生が生徒よりも知識豊富で、探究の道標を持っている必要はないんです。
(むしろ持っていない方が生徒が自主的に探究を進める場合もあるようです。)
生徒が自由意思で探究テーマを選び、その探究を後押ししてあげましょう。

3)社会的意義/価値にこだわらない

近年は素晴らしい探究活動をしている生徒の様子がメディアで取り上げられることも少なくありません。
それらのテーマを見ると「〇〇課題を解決しました。」「〇〇のために役に立っています」という趣旨のものが多い気がします。
そのため、探究テーマは誰かのためになるものでなければいけないと思われがちですが、本当にそうでしょうか?

例えばプロサッカー選手になる人の最初の探究テーマは「ドリブルで相手を抜く方法」かもしれません。
ユニコーン企業の創業者になる人の最初の探究テーマは「日本で1番コスパのいいバイトは何か」かもしれません。

特に探究活動の初期は自分の中に生まれた興味関心をわがままに追求するくらいでも良いのではないではないかと思っています。(そこに本人の強い意思があるなら尚更)
活動を繰り返す中で自ずと誰かのためになる価値あるものに昇華していきます。
それまで気長に待ちましょう。

4)活動してみないとわからない

上記のことを注意しながら、生徒に探究テーマを決めてもらっても
生徒がそのテーマに本気になるかは、活動してみないとわからないというのも事実です。
生徒本人も、結局実際にやってみないとそれが自分に合っているのかわからないものです。

余談ですが、何度もテーマを設定することで生徒が本当に興味があるもの(自分のキャリアにつながるもの)に気づけると考え、年間で何度PJを3周する学校もありました。

1年生や探究を始めて間もない時は、1つのテーマに拘らずにどんどん活動のサイクルを回し、何度もテーマ設定を行えると良いかもしれません。

🔸アイデア出し(興味関心を探す方法)

アイデア出しの方法を紹介していきます。
どんな方法であってもアイデア出しで大事なのは否定しないことです。
例え環境(教師や友達)が言葉にして否定しなくても
生徒自身のキャラクターや雰囲気が「それ、私っぽくない」と否定する場合があります。
できるだけ自由に発案できる環境を作りましょう。

1)マインドマップ

言わずと知れたマインドマップ。方法は簡単で、中心にテーマを書き枝を増やしながら関連ワードをひたすら書き出すだけです。
連装ゲームの容量ですね。

2)マンダラチャート

こちらはメジャーリーガーの大谷選手が学生の頃に使っていたことで有名な方法です。本来は目標達成ツールですが、アイデア出しにも使えます。
ポイントは真ん中に書いた8つのアイデアに対してそれぞれ9つずつアイデアを追加しなければいけない点です。

例えばアニメと書いたら「ワンピース、呪術廻戦、押しのキャラ、アニメ制作会社、テーマソング、30分尺、アニメ映画、声優、CMうざい」など
気になるもの、少しでも興味があるものを書き足します。

3)アイデアの掛け算

これは孫正義氏が使っていたらしく、突飛なアイデアが出やすい方法です。
やり方は簡単で、
マインドマップやマンダラチャートでいくつかのアイデアを出した後に、ランダムに2つのアイデアを掛け合わせるんです。

例えば「スポーツ」と「ビタミン」だとしたら「ビタミンが必要な運動」「ビタミンが摂れる運動」「運動することでビタミンを作る」など
頭を柔軟にして2つのアイデアを掛け合わせてみます。
ここでも否定するのを止めて、まずは口に出してみる、書いてみると良いでしょう。

4)News Picks(ニュース記事)を使う

これは生徒によりますが、今も昔も情報を得るならニュースが一番です。
特に最近は自分の興味関心のあるニュースを優先的に出してくれるツールが多いですよね。
だからこそ、そこから自分の興味を探ることができます。

News Picksを使うのであれば
サイトから自分が気になるタイトルを10個ほど持ってきて
さーーーーっと読み飛ばし、気になった単語をメモするだけでもOKです。

ちなみにNews Picksは生徒も楽しめるような軽いニュースもたくさんあります。
「新聞やニュースはうちの生徒にはちょっと、、」という先生も一度見てみてはいかがでしょうか?

5)好きなもの(気になるもの)を100個書く

ネタが尽きてきたかと思われそうですが、これが意外と面白いんです。
最初の30個くらいはどの生徒も同じようなものばかりなのですが、
50個を過ぎたあたりから生徒のアイデアが枯渇していき、
「ん〜ん〜」言いながら捻り出してくる70個を過ぎたアイデアは個性的なものになってるんだとか

最初の意味づけが難しいですが、
素直な生徒の多い学校では案外刺さるかもしれません。

6)強い感情からアイデアを出す

最後の方法もユニークですが、個人的には好きな方法です。
これは京都の先生が教えてくださった方法で
生徒の強い感情(特にネガティブな感情)を使ってアイデアを出します。

例えば以下のようなテーマでブレインストーミングをします。
「どうしても許せないこと」
「どうしても譲れないこと」
「めっちゃ嫌いなこと」
これらのアイデアはネガティブな感情や我儘ばかりで役に立たないように見えますが、その裏には生徒の価値観や強い関心があります。

教えてくださった例としては
「通学の満員電車が嫌い」「通信制限とかムリ」「既読無視ムカつく」「虫大っ嫌い」など
これらの感情に対して様々な質問を投げかけるとそれがいきなりプロジェクトテーマになったりします。

🔸テーマ設定(問いを考える)

テーマ設定を行うためのもう1つの要素が、問いを考えるステップです。
このノウハウはテーマ設定のために行うのもいいですが、普段の授業や活動から取り入れてスキル(能力)として習得していけると良いかもしれません。

オープン探究のテーマ設定においては、自分の興味関心を問いにすることで、課題を見つけ、プロジェクトにするステップとして設置しています。

方法としてはアイデアをいくつか出したあと、
それらのアイデアに対して下記方法で「問い」を立てます。
その中で一番ワクワクするものを探究テーマに設定していく流れになります。

さて、そもそも「問い」とは何か、について簡単に書きたいと思います。
問いを説明するためには、質問や発問といった似た単語との違いを説明するのがわかりやすいかと思い、MIMIGURI安斎さん共著の「問いのデザイン」から情報を引っ張ってきます。

https://note.com/yuki_anzai/n/n392714d791ea

つまり、問う側も問われる側も答えを知らないものが問いです。
生徒が問いを設定できれば1番良いですが、
個人的には最初は質問でもいいと思っています。
先生や周囲の大人、社会からしたらよく知られている質問も、生徒からしたら魅力的に見えることもあります。

1)質問の種類

質問にはいくつか種類があり、それらの質問から思いつく問いを考えます。
下記の図は質問を考える際の観点です。
これが全てでないですが、これらの観点から質問(問い)を洗い出します。

最初のうちは、それぞれの観点から1,2個ずつ質問を考えるワークをしても良いかもしれません。
そのうちこの観点を使わずに質問が量産できるようになると良いですね。

例として、「ファッション」をアイデアに決めたとすると、以下のように様々な質問や問いが出てきます。
未来:10年後のファッションはどうなってる?
過去:昭和の流行ファッションを並べると何がわかる?
事実:世界で1日に何着の服が作られている?
感情:ファストファッションについて若者はどう感じているか?
行動:ファッション業界に新しい流行を作るにはどうすればいい?
思考:環境問題の視点から、ファッション業界はどう考えられている?
具体:ファッションは人をどのように幸せにするのか?
抽象:ファッションとアートの共通点は?

そのほかの観点として、
・比較/最大最小
・OPEN(文章でないと答えられない)/CLOSED(はい、いいえや1単語で答えられる)
などもあります。

これらは質問出しのヒントになるものです。
無理に全ての観点から質問を作る必要はないし、
難しそうだと判断したものは飛ばしで構いません。
まずは数を出すこと、そしてそこから興味をそそられるものを選ぶことが大事です。

2)QFT方式

QFTについては下記記事、たった一つを変えるだけで記載していますのでよければお読みください。
(ちなみにQFTでは問いと質問を分けていなかった気がします、、)

質問の出し方としては
1)ブレインストーミングでテーマに対する質問を複数人で出します。
2)出した質問をオープンクエスチョンとクローズドクエスチョンに分ます。
3)それぞれの質問を逆の形式に書き直します。
(オープンをクローズドに、クローズドをオープンに)

さまざまな質問に対してオープンとクローズドの二面を考え、質問を書き換えることを通してその質問を通じで何を明らかにしたいかを捉える思考を身につけます。

これによって一つの質問を多角的に捉えるノウハウと、自分の立てた質問が何を明らかにしようとしているかを学びます。

質問を考えることになかなか前のめりになれない生徒がいたら
自分が出した質問に対してさらに質問を考えて見るというのも面白い方法です。

例えば
アイデアで「電車」を選択した生徒に質問を考えてもらったときに
・電車は好き?
・電車はどうやって走る?
と言った質問を出したとします。
しかし生徒がなかなかこの質問を面白がれなかったとしたら、さらに上記の質問に対して質問を考えます。
・電車は好き?
 →好きだと断言できる理由は?
 →電車好きじゃない人にこの思いを伝えるには?
・電車はどうやって走る?
 →昔も今も走る原理は一緒?
 →全ての電車が同じ方法で走るの?
など、質問を見たとき、もしくはその回答に対してさらに質問を考える方法です。

まとめ

今回はオープン探究のテーマ設定について書いてみました。
実はまだ、テーマ設定のための環境や質問の出し方など書きたいことが色々あったのですが、長くなりすぎたので今回はこの辺で

もし「試してみました!」という方がいましたら、
コメントに感想もらえたら嬉しいです!

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