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『たった一つを変えるだけ』要約と実践談

こんにちは!
今回は
Dan Rothsteinさん、Luz Santanaさんが共同執筆し
吉田新一郎さんが翻訳された

たった一つを変えるだけ
クラスも教師も自立する「質問づくり」

を紹介し、要約と実際にやってみた感想を書いていきたいと思います。
よかったら参考にしてみてください。

1) 本書の目的

この本に書かれていることは簡単にいえば
「生徒に質問を考えさせたら様々な能力の向上と学習に対する姿勢が大きく変わっちゃいました!」ということです。

そもそも質問を考えさせるとは?
ってとこだと思います。

日本では大体の学校でレクチャースタイルのチョーク&トークですよね。
先生が生徒に答えが明確に決まっている質問を出すこともあるかもしれません。

しかし、アメリカなんかでは少し違って、
先生が生徒に創造性を掻き立てるような質問をします。
「ユダヤ人はなんで迫害を受けたの?」
「シェイクスピアがリア王を通じて伝えたかったことは?」
など
こうなると生徒は「あれ?何でだろ(何だろ)」って頭が少し動きますよね。そこで気になって調べたり、誰かに聞いたりする生徒が出てくることもあります。
ファシリテーターとしての先生はこのように生徒が興味を持つような質問を投げかけることで、生徒の関心を引き出そうとするわけです。

でもこれって結局は
先生(ファシリテーター)が生徒に考えてほしいこと、学習ほしいことを一方的に伝えてることには変わりないですよね。

そこで本書!
本書ではあるテーマ(本書では質問の焦点と呼ばれる)に対して生徒が自由に質問を考えます。
その質問をこねくり回したり、友達と突きあったりして、1番オモシロそうな質問を考えます。

友達と一緒にあれこれ考えながら決めた質問ですからね、
オモシロくないはずがありません!
その質問がそのまま、生徒の探求テーマになっちゃったりするわけですね。

身に付く3つの思考力

さらにこの過程で生徒は様々なスキルを使います。
本書で書かれているのは以下の3つの思考力

①発散思考
アイデア力です。
様々な側面から物事を見れる力、創造的な思考力。

②収束思考
様々なアイデアから必要に応じて選択できる思考力です。
情報の分析、統合ができる力。

③メタ認知思考
自分の思考を客観的に振り返る思考力です。

これらの思考力を使うことで能力を伸ばしつつ、
自分で質問を作成することができるようになります。

自分で質問を作れるということは、
よく言われるクリティカルシンキング向上に繋がったり、
探求学習で自分のテーマを見つけることに繋がります。

今の時代に求められる様々なスキルにつながるその最初の一歩になる「質問づくり」という活動について、早速みていきましょう!!

2) 「質問づくり」アクティビティの具体的な方法


本書では「質問づくり」っていいんだよ!というなぜかって言うとね、、
といった紹介で終わるのではなく、
その具体的なアクティビティの方法と具体例が書いてあります。
さらに各アクティビティで使えるワークシートまで載ってますので
本を読み終えた次の次の日くらいからもう実践ます。(1日くらい準備したいじゃないですか💦)

はい、これはもう買いですね。
定価2400円+税です。
ちなみに僕はもう3冊書いました。(何で?)

さて、では実際のステップをみていきましょう。
具体的には7ステップに分かれています。
それぞれのステップについて簡単に説明していきます。

①質問の焦点づくり

言わずと知れた1番重要なポイント、「質問の焦点づくり」です。
まずは「質問の焦点」とは何かについて説明させてください。

生徒が質問を考えるのはわかっていただけたかと思いますが、
「じゃ、何でもいいから自分の好きな質問考えて」
と言われても「え?無理じゃね?」ってなりますよね笑

なのでファシリテーターが事前にテーマを考えておきます。
これが「質問の焦点」です。

この質問の焦点ですが、本書では
"生徒たちが質問を作り出すための引き金。
生徒たちがそれをきっかけに考えて質問を作り出せるものであれば、短い文章、あるいは写真や短い動画や表・図などの視聴覚教材でもかまわない。"
(p57 引用)とあります。

さらに効果的な質問の焦点をつくるためのポイントとして、以下の4点を挙げています。

  1. 明確な焦点(課題・テーマ・大切にしたいこと)を持っている

  2. 質問ではない(疑問文になっていないことが大事)

  3. 刺激によって新しい思考を誘発する(質問したくなるか)

  4. 教師の好みや偏見は表さない(意見を誘導してないか)

質問の焦点は「その活動を通して生徒に何を考えてほしいか」と言う目的に沿って作成します。
まずはこの活動の理想のゴールを明確にし、上記のポイントを押さえて質問の焦点を作成しましょう。

②ルール紹介

ここでは、次回行う③質問だしの際に気をつけてもらいたいルールを紹介します。
ルールは以下の4つです。

  1. できるだけたくさんの質問をする。

  2. 質問について話し合ったり、評価したり、答えたりしない。

  3. 質問は発言の通りに書き出す。

  4. 意見や主張は疑問文に直す。

本書ではこのルールをとても重要視しています。
1, 2, 3のルールは生徒の発散思考を妨げないという点でも重要になります。
ブレインストーミングを行う時のエッセンスに似てますね。
2と3は特に重要だと思います。日本ではアイデアを出すことに抵抗がある生徒が比較的多いと思います。彼らの心理的安全を確保するためにも大事にしたいですね。

ここで注意が必要なのは、これらのルールをただ紹介して終わりにしてはいけないという点です。
これらのルールを紹介した後で、ルールについて生徒同士で話合わせる時間を取ります。

具体的には
各ルールについて
「簡単か難しいか」
「なぜそう思ったか」

を考え、グループで共有します。

こうすることでルールを客観的に見ることができ(メタ認知思考)、その重要性を意識させることに繋がります。

③質問出し

いよいよ質問出しです!!
改めてルールを確認し、質問の焦点を共有します。
時間は最低でも5分、グループ内の人数は3〜5人が良いとされています。

ここで忘れてはいけないのが、出された質問をメモする書記役を必ず決めておくことです。(もしくは全員がメモれるようにしておきましょう。)
そしてルール3と4を徹底します。
3. 質問は発言の通りに書き出す。
4. 意見や主張は疑問文に直す。

あとはファシリテーターは見守るだけです。
(意外と難しい見守るだけ笑 口出ししたくなる気持ちはグッと押さえましょう。)

もしルールを忘れてしまっているグループを見つけた時は、そっとルール番号を伝えてあげてください。
「ルール1、守れてる?」と聞くだけで大丈夫です。

④質問の改善

このステップでは生徒が出した質問を揉んだり突いたりこねくり回していきます。ここでの主な目的は出てきた質問への理解を深めることです。

理解を深めるためにここでは「OPEN QUESTION」と「CLOSED QUESTION」について同時に学んでいきます。
まずはそれぞれの定義についてです。

OPEN QUESTION:Yes / No もしくはもしくは1単語で答えられる質問
CLOSED QUESTION:解答に説明が必要な質問

この2種類の質問を使って質問の改善を行なっていきましょう!

このステップでの具体的な流れは以下の通りです。

  1. OPEN / CLOSED QUESTIONの定義を紹介

  2. 自分たちで出した質問をOPEN / CLOSEDに分類

  3. OPEN / CLOSED それぞれのメリットとデメリットを考え、共有

  4. 自分たちで出した質問を1. 2個選び、OPENをCLOSEDに、CLOSEDをOPENに書き換え

ここではそれぞれのアクティビティにそれほど時間をかける必要はありません。質問に対して理解を深め、その特徴を学ぶことが目的です。
そして、このステップを踏むことで、質問を分析し評価することができるようになってきます。(収束思考)

逆に言えば、この目的のためであれば分類分けはOPEN / CLOSEDでなくても構いません。浅い / 深い、などもいいかも知れません。

⑤優先順位づけ

さて、いよいよ出された質問に優先順位をつけていきます。
ここまでくるといよいよ大詰めに向かって参ります。

これまでのステップでもそうでしたが、ここでは特に収束思考が必要になります。
具体的なスキルとしては、クリティカルシンキング(批判的思考)やロジカルシンキング(論理的思考)、合意形成スキルでしょうか。
どれも現代に求められているスキルであると同時に、なかなか普段の授業では育まれないものではないでしょうか?

そしてこのステップではファシリテーターが事前に行なっておかなければいけない事前準備があります。
それは、優先順位を決める際の基準です。
この基準に関してはその後の活動や「質問づくり」アクティビティの目的に沿っていれば、以下のようなものでいいそうです。

  • 最も重要なものを3つ選びなさい。

  • 最も興味深いものを3つ選びなさい。

  • 探求プロジェクトを実施するのに最も助けとなる質問を3つ選びなさい。

さて、ではこのステップでの流れを説明します。

  1. グループで話し合い、優先順位をつける

  2. 優先順位を決めたら、その理由を明確にする

  3. 他のグループと意見交換をする

優先順位を決める際に、ファシリテーターは生徒を誘導しないために注意が必要です。最後まで自分たちで考え、決定したという経験が後々モチベーションにつながります。

また、2. 優先順位の理由を明確にすることも重要です。
話し合いを繰り返し、流れの中で決まった優先順位はよく論理破綻していることがあります。
一度立ち止まり、なぜこの優先順位にしたのかを考えてみることで、客観的に考えることができます。

最後の意見交換は任意活動でいいかと思います。
自分たちの思考プロセスを一つの成果として発表することで、全体の活動に価値を与えることができますが、
その先の活動のテーマ決めという位置付けであれば不要とも言えます。

⑤までで実質的な質問づくりアクティビティは終わりになります。
このアクティビティを定期的に繰り返すことで生徒は質問を作成する経験値が増えていき、クリティカルに物事を見ることができるようになります。

そしてお気づきのように、この活動事態が探求学習への入り口になります。

⑥次のステップ

これまでのステップで行った活動と、作成した質問を使ってどのような活動ができるかについても少し触れておきたいと思います。

  • 授業の導入としてエンゲージをあげるために使う

  • 作文やレポート作成の題材として使う

  • アウトプット(パフォーマンス)テストの題材として使う

  • 探求学習(PBL)のグループテーマとして使う

  • 長期休みの自由研究課題として使う

このアクティビティを通して質問づくりをした生徒たちの多くは、自分たちで選んだ質問に高い好奇心や興味関心を持つようになるそうです。

探求学習の最初の難所であるエンゲージをこのアクティビティを行うことで突破できるとしたら、これほど有難い話はないですよね!!

⑦振り返り

最後に振り返りについてお話して具体的な方法を終えたいと思います。
ここではもちろんメタ認知思考を発揮して自分の活動を評価していきます。

振り返りの際には以下の3点について考えていくそうです。

  1. 新しく学んだこと(知識)

  2. 感じたこと(感情)

  3. できるようになったこと(行動)

聞き方によって、生徒に意識させられる点やファシリテーターが得られる情報が異なります。
振り返りから何を得て欲しいのか、何を得たいのかを考えながら質問を考えていきましょう。(本書には具体的な質問とその効果も載っています!)

さて、ないがしろにされがちなこのステップですが、生徒が自分たちの活動を振り返り、身につけた経験やスキルを定着させていくために重要なステップでもあります。
活動がうまくいき、また次もやりたいと思うのであればなおさら、振り返りを行うことをお勧めします。

3) 実際にやってみた感想

さて、最後に実際に僕が実施してみた感想をお伝えします。
今回は以下のような環境で実施いたしました。

  • 大学生(学年はバラバラ)

  • オンライン(ZOOMを使用)

  • 4, 5人1グループの3グループ

  • 質問の焦点:拷問は正当化される(本書で例に出されていたもの)

結果からお伝えすると、
かなり難しかったです。笑
しかし同時に、これは可能性があるぞ!!と期待もできました!
以下に難しかった点と期待できる点を書いていきたいと思います。

難しかった点

1番大きな失敗として、そもそもこのアクティビティの目的を伝えきれなかったことが挙げられます。この次のステップが明確な場合はそれを事前に示してあげると良いかも知れません。
「最終的なアウトプットとして『質問』を考えてもらいます。」という説明では参加者の頭の中に??しか生まれなかったです。笑
(「質問」ではなく「テーマ」とか別の単語を使った方がよかったんだろうな〜、、😅)

次に時間について、本書に書かれている全体で45分ではまず終わりません。
特に②ルール紹介と④質問の改善は意外と時間がかかるので要注意です。笑
僕はそれぞれだけでそれぞれだけで30分位のアクティビティが出来そうでした😭
また、各ステップの説明を簡潔に説明するために、スライドを作成し視覚的にわかりやすくすると良いかも知れません。

というわけで、かなり入念な準備が必要だと感じました。
大学生であっても緻密にスモールステップを踏んだ方がいい思いました。
僕もそうですが、単純にこういったアクティビティの経験が少ないため、スムーズに進めるために誘導するところはしっかり誘導する必要があるかと思います。その反面、自由に思考させるところはしっかり手放す。このメリハリが大事かも知れません。

期待できる点

僕の至らなさからも難しいと感じた点が多かったのですが、その割に参加者からのフィードバックはポジティブなものも多かったです。

  • 最初は何をしているかわからなかったが、徐々に熱中していき最後は自分のグループの質問が気になって仕方なかった。(研修後すぐにググったらしいです笑)

  • これまで経験しなかった活動が純粋楽しかった。

  • 卒論を書く前にこのアクティビティをしたい。

  • 質問について理解を深められた。

  • 自分の得意不得意がわかった。(自分は発散思考が得意でした👍)

自分の強みを見つけてくれたのはまさにメタ認知思考ができた証拠ですし、質問への興味関心が持てたのはエンゲージができた証拠だと思います。
その割合はさておき、そういった変化を参加者に提供できたことは今後に期待が持てる結果だったと言えました。

次回はもっともっと準備を徹底しアクティビティの質を上げ再チャレンジしたいです💪💪

みなさんもぜひ、『たった一つを変えるだけ』をお買い求めいただき、
実践してみてはいかがでしょうか?

もし、本書をお読みになられた方、さらに実践経験がある方がいらしたら、
ぜひコメント欄に感想をお書きいただけると嬉しいです!!

長い文章を最後までお読みいただきありがとうございました。


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