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日本代表チームの変革。歴史的勝利に導いた名コーチから戦術論を学ぶ!〜マネプロ#18

こんにちは! DeNAでHRビジネスパートナーをしている坪井(@tsubot0905)です。

マネジメントの進化を探求するnote
『マネプロ』は今回が第18回目です。

このマネプロnoteのシリーズでは、5分で分かりやすく学べるシンプルな構成と、相手とのコミュニケーションで使えるようなシンクロしやすい問いを意識した内容を心がけています。

さて、ここまでのマネプロでは、ミッション・ビジョン・バリューに始まり、前回までの戦略編へと大枠から入って抽象度を下げる形で探求してきました。

今回からマネプロは戦術編に入ります。
※戦術は、戦略の一つ下位の概念です

ビジョンの実現に向け描いた戦略も、実現に向かわなければ仕方ありません。ラグビー日本代表を栄光に導いた名コーチの事例を見ながら、戦略を具体的な戦術に落とし込む視点を学びましょう!

目次はこちら!

<戦略と戦術の違い ー どっちが大事なの?>

いきなりですが、こちらの話題から。

端的に言って、戦略と戦術の違いは
What to win(何で勝つか)
How to win(どう勝つか)
というテーマの違いです。

「何で勝つか?」は、戦略を問う時の視点。

「戦略の失敗は、戦術では取り返せない」という言葉があるように、とても重要な問いだと思います。

もちろん、戦略がなくても勝つことはあります。ですが、それはラッキーパンチ。継続的で再現性のある勝利ではないかもしれません。

そんなわけで「何で勝つか」だけが大事・・・かといえば、もちろんそうではなく「どう勝つか」の戦術の視点としっかり連動されていなければ戦略は何の意味も持たなくなってしまいます。

戦術について、私のお会いした経営者の方がこんなことを話していました。

経営者の仕事は、戦術が大事であると現場に伝えることだ。経営者が現場に行くのは社員を知りたいからではなく、経営者の本気を伝えて、主役はあなた達なのだと熱量を届けたいからだ。


私にとって、経営者というと「戦略」を考えるイメージが強かったのですが、「戦術」にまでこだわって社員に働きかける経営者にお会いして経営者の考え方が広がったエピソードでした。

戦術の実行があってこそ戦略が実現できる
ということを感じられますよね。

結論、戦略と戦術はどっちも大事!笑

<ラグビー日本代表から戦術を学ぶ>

では、具体的に戦略をどう戦術に落とし込むか。
マネプロ恒例の事例紹介に参りましょう!

今回取り上げるのは、ラグビー日本代表の事例。

ラグビーといえば、選手の体の大きさ・強さ・速さがあると有利に働くスポーツのイメージ。となると日本は分が悪そう…。

実際、数年前まで日本はぜんぜん強くなかった。誰もが——代表選手自身さえ——世界の競合に負けるのは「仕方ない」と考えていたそうです。

しかし!
今や日本は世界ランキング10位の強豪国。
(2021年時点。過去最高は2019年の6位。)

その転換点は、日本中でラグビー日本代表が話題になった6年前。W杯で優勝候補だった世界ランキング3位の南アフリカに勝った2015年のことでしょう。当時、世界の誰もが日本の負けは確定的と信じていました(過去の日本のW杯成績は1勝2分21敗)。まさに、歴史的大勝利。

栄光に導いたのは、当時のヘッドコーチ(いわゆる監督)であるエディー・ジョーンズ。彼こそ、戦略で掲げた目標の実現に向けて戦術を組み立てることが上手い名指導者の1人。優れたコーチとしていくつか本も出版しています。

2012年に着任したエディーさんが日本代表で掲げた大きな目標は「世界のトップ10に入ること。そして、3年後のワールドカップで勝つこと」でした。

<ラグビー日本代表の戦略と戦術>

エディーさんが考えた戦略/勝つための方程式は
私なりに解釈すると5つの要素の組み合わせです。

経験 × 持久力 × 集中力 × 俊敏性 × 勝つ文化

この方程式を一言で「ジャパン・ウェイ」というコンセプトで表現していたように思います。

では、具体的に方程式のそれぞれの因数がどう戦術として練習や試合の中での実践に落とし込まれていたのか見ていきましょう。

【 経験 】

日本代表のエディーさんが、就任以来何度も言及してきたのが「チームの総キャップ数」。

彼曰く「ワールドカップ(W杯)で優勝するチームは先発15人の総キャップ数が600前後。1人平均40キャップ程度。それだけのインターナショナル試合の経験値が必要になる」とのこと。

前任と比べ少数精鋭主義で、テストマッチ数は増やしつつも出場させる選手の数は減らすなど、同じメンツでプレーさせることでチームとしての経験を上げていました。

【 持久力 】

世界の対戦相手は足が速く、体が大きいチームばかり。そこで、持久力を付けさせ連続攻撃を行い、54%以上のポゼッションで相手の体力を奪って隙ができたところでトライに持ち込む攻め方で行くという方針を立てました。

そのための日本代表の練習は「ヘッドスタート」という名称で毎朝5時に開始。「本気で追い込めば30分で再起不能になるようなトレーニングを1日5回」も実践したのだそう(なんですかその恐ろしい訓練は!)。

あまりの苦しさに反エディー派も生まれたそうですが、コーチなんぞ憎まれてなんぼの精神で突っ切ったエディーさんでした。

【 集中力 】

練習の厳しいエディーさんですが、3時間、4時間という長い時間の練習はさせませんでした。実践に近い45分、走行距離も100-120mの範囲で行う練習に没頭させ、試合で100%力を出し切ることを意識できる練習メニューにしていたようです。

持久力を鍛えるなら長時間の練習にしてしまいがち。ですが、試合の最後まで相手の隙を狙う戦い方を追求するなら「集中力」を意識すべきと練習にも反映させていたことが伝わります。

W杯南アフリカ戦終了直前の逆転勝ち越しトライは練習の成果ですね。

【 俊敏性 】

日本人選手の速さは世界では劣りますが、10メートルの走力なら世界一の速さになれると期待していたエディー氏。日本人の俊敏性という個性を活かして短距離を賢く走りきれば世界に勝てると考えたのです。

キックを使わず巧みなパスとランを軸に攻撃を組み立てる、これが日本独自の戦術となりました。

【 勝つ文化 】

先ほど触れたように、日本人はラグビーでは不利という考えが選手にも根付いていました。戦う前から負けの言い訳が用意されていたんですね。

しかし、エディーさんは「頑張って負けたなら仕方がない」という敗者の美学を許しません。勝利にこだわるメンタリティへ変化させないといけないと問題視し、選手に語りかける言葉はもちろん、厳しい練習や試合数を増やすことも含め、勝利を愛して止まないチームに変身させていきました。

〜〜〜

世界で通用する日本の強みや世界との戦いで足りないものが分かる指導者だったエディーさん。卓越した観察眼に基づいた戦略とそれを巧みに実現させていく戦術はお見事という他ありません。

長々とラグビーの話をしてしまいました。
ここからは戦略を戦術に落とし込む方法論について考えていきましょう。

<戦略を戦術に落とし込む4原則>

新たに戦略を立てるということは、それに伴う戦術、つまり日々やる活動が変わってくるということ。中には変わらない部分もあるでしょうが「今と比べてこうする」という変化が必ずあります。

戦術の方向性には以下の4種類しかありません。

・新しくやる(新規)
・もっとやる(強化)
・続けてやる(維持)
・やめる  (撤退)

この4つの組み合わせでやり方を変える。
これが戦略を戦術に落とし込む4原則です。

エディーさんのラグビー日本代表なら、

新規→選抜メンバーの選定基準を変えて経験値を上げる
新規→朝からのハードワークで持久力を上げる
強化→実践的な短期集中の練習メニューで集中力を上げる
維持→俊敏性という日本人の持つらしさを活かす
撤退→負け癖のメンタリティを捨てて勝つ文化に変える

といった具合です。
日々の行動変化があってこその戦術ですね。

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<戦術に求められる2つのPのお話>

最後に、優れた戦術には2つのPがある。
という話をします(結婚式のスピーチか)。

まず、1つ目のPはプラクティカル(Practical)。
すなわち「実践的」であること。

そして、もう1つのPはポッシブル(Possible)
すなわち「可能な」ものであること。

そもそも、戦略では現状維持のままでは困難な目標を掲げています。戦略のように論理的なものではなく、現状から「実践的」にできることを積み重ね、戦略の実現にむかって「可能な」状態をつくっていく。

簡単に言えば、「できない」を「できる」に変える実践的なメソッドの上手い組み合わせが優れた戦術なんだと思います。優れた戦術は夢への可能性を拓くと思えてきますね!

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信じられる戦略と優れた戦術があれば、あとはどれだけやり切るかのみ。なぜなら、結局「人の考えることに大差はなく、実際にどこまでやるかで差がつく」からです。

最後にエディーさんの名言を紹介。

この世に完璧な指導者などいません。
それを目指す道があるだけです。


<今回のQuestions>

以上が18回目のマネプロでお届けしたかったコンテンツでした!
いかがでしたでしょうか?

ということでマネプロ恒例、最後の問いです。

今回のテーマを通じて、リーダーやマネージャーの方々に問いかけたい4つの質問を選びました。忙しい皆さんの思考の整理と、新たな行動の後押しになれますように!

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※「自分はこう考える」「自分ならこれを問いかける」という考えはぜひTwitterにて「#マネプロ」を付けてつぶやいていただけたら嬉しいです!


<次回にむけて>

今回は、戦略と戦術についての概要から入り、ラグビー日本代表の例と共に優れた戦術とは何かを探求してきました。

次に取り扱うテーマは「事業のマネジメント」。ビジネスモデルを扱って戦術の組み立てを探求します。

次回は2週間後の水曜日。
良かったらぜひnoteのスキやフォローをお願いします。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました!

読者のみなさんと共にマネジメントの進化を探求できれば何よりです。Twitterのフォロリツ大歓迎です!DMでの感想も是非!(@tsubot0905)

noteで取り上げた内容について、みなさんの持論や新たな問いかけの視点をもらうことでマネジメントの探求がもっと楽しくなるはず。ですので、みなさんからのリアクションを心待ちにしております。よろしくお願いします!

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