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『「介護時間」の光景』(180)「結婚」。11.1。

 いつも読んでくださっている方は、ありがとうございます。おかげで、こうして書き続けることができています。

(※この「介護時間の光景」シリーズを、いつも読んでくださっている方は、よろしければ、「2001年11月1日」から読んでいただければ、これまでとの重複を避けられるかと思います)。

 初めて読んでくださっている方は、見つけていただき、ありがとうございます。
 私は、臨床心理士/公認心理師越智誠(おちまこと)と申します。


「介護時間」の光景

 この『「介護時間」の光景』シリーズは、介護をしていた時間に、私自身が、家族介護者として、どんなことを考えたのか?どんなものを見ていたのか?どんな気持ちでいたのか?を、お伝えしていこうと思っています。

 それは、とても個人的で、断片的なことに過ぎませんが、それでも家族介護者の気持ちの理解の一助になるのではないか、とも思っています。

 今回も、昔の話で申し訳ないのですが、前半は「2001年11月1日」のことです。終盤に、今日「2023年11月1日」のことを書いています。


(※この『「介護時間」の光景』では、特に前半部分は、その時のメモをほぼそのまま載せています希望も出口も見えない状況で書かれたものなので、実際に介護をされている方が読まれた場合には、気持ちが滅入ってしまう可能性もありますので、ご注意くだされば、幸いです)。

2001年の頃

 個人的で、しかも昔の話ですが、1999年に母親に介護が必要になり、私自身も心臓の病気になったので、2000年に、母には入院してもらい、そこに毎日のように片道2時間をかけて、通っていました。妻の母親にも、介護が必要になってきました。

 仕事もやめ、帰ってきてからは、妻と一緒に、義母(妻の母親)の介護をする毎日でした。

 入院してもらってからも、母親の症状は悪くなって、よくなって、また悪化して、少し回復して、の状態が続いていました。
 だから、また、いつ症状が悪くなり会話もできなくなるのではないか、という恐れがあり、母親の変化に敏感になっていたように思います。

 それに、この療養型の病院に来る前、それまで母親が長年通っていた病院で、いろいろとひどい目にあったこともあって、医療関係者全般を、まだ信じられませんでした。大げさにいえば外へ出れば、周りの全部が敵に見えていました。

 ただ介護をして、土の中で息をひそめるような日々でした。私自身は、2000年の夏に心臓の発作を起こし、「過労死一歩手前。今度、無理すると死にますよ」と医師に言われていました。そのせいか、1年が経つころでも、時々、めまいに襲われていました。それが2001年の頃でした。

 周りのことは見えていなかったと思いますが、それでも、毎日の、身の回りの些細なことを、メモしていました。

2001年11月1日

 いつも、「介護時間の光景」として、その日見たことを載せているのですが、それ以外にも、母の病院へ「通い介護」した状況もメモしていて、それも同時に並べさせてもらっています。

 そして、2001年は、まだ混乱していて、母が今いる病院への信頼もできないままで、さらに、入院費もかかるので、より未来がなくなるような気持ちで、なんだかわからなくなる時もありました。

 2001年11月1日のことは、「結婚」というタイトルで、その日に見た光景は書いてあるのですが、珍しく、それ以外のことを記録していません。

 自分のことながら、20年以上前のことでほとんど覚えていなくて申し訳ないのですが、時々、本当に今の生活が嫌になり、すべてを終わらせたくなるときも、2001年の頃は多かったですし、この前後の記録を見ると、気持ち的にも、体調的にも良くなくて、そして、何かを書く気力があまり出なかった日かもしれません。

 なんだか追い込まれていたようですが、それでも、見たことは書けているので、自分のことながら、ちょっと安心しました。

 ただ、その文章を読むと、気持ち自体が、かなり荒んでいたのも、わかるように思います。

結婚

 雑誌に出ていたラーメン屋に行って、その後に坂道を登って、そのそれほど高くない坂道を上りきったところにある少しおしゃれな喫茶店にも寄った。

 2階の奥の席。20代くらいのOL風の女性が2人。一人は黒っぽいミニのスーツ。もう一人はカーディガン。2人共、けっこうキレイな顔立ちだった。会話も聞こえてくる。

「やっぱり、みんな少し働いて、やめていくよね。働くより、結婚するよね」。

 と、妙に冷静な声で話していて、さらに話は進んだ。

……27くらいで、色気というかキレイさのピークが来るから、そこで結婚するんじゃなくて、それをキープして、もっと後になって結婚したい…。

 そんな話の時に一人の携帯がなって、話が途切れた。

 電話で、ディズニーシーへの行き方を話している。

 話が終わって、携帯を切ってから、その女性は、彼のお父さんから、と言うと、もう一人が、二股をかけられた話を始める。いろいろな話題にうつっていったけど、自分のキレイさを最大限に生かしたい、というのが共通するテーマのようだった。

                         (2001年11月1日)


 それからも、その生活は続き、いつ終わるか分からない気持ちで過ごした。

 だが、2007年に母が病院で亡くなり「通い介護」も終わった。義母の在宅介護は続いていたが、臨床心理学の勉強を始め、2010年に大学院に入学し、2014年には臨床心理士の資格を取得し、その年に、介護者相談も始めることができた。

 2018年12月には、義母が103歳で亡くなり、19年間、妻と一緒に取り組んできた介護生活も突然終わった。2019年には公認心理師の資格も取得できた。昼夜逆転のリズムが少し修正できた頃、コロナ禍になった。


2023年11月1日

 秋の空気になった。
 空の感じも変わってきて、天気もいいので、やっぱり洗濯を始める。

 庭の柿の木の実が、知らないうちに色づいてきて、いつ高枝切りバサミを使ってとろうかということを考えるようになった。

菓子

 明日は珍しく来客が来るので、お菓子を買おうと思っているけれど、それが割と新しく隣町にできた洋菓子屋に行こうと思っているのは、この前、そこのケーキを食べて、美味しい上に、何か試みを続ける感じがするので、できるだけ購入したい気持ちもあるからだ。

 そんな気持ちは、なんだかお客の変な自己満足みたいだけど、今は、今日は本当に開店しているのか、そして、売り切れていないのか、といった不安に襲われている。

 それで電話をしたら、呼び出し音が続くだけで、出ない。

 この前、同じパターンで休みだったから、そのことを妻に伝えたのだけど、行ってみたら、という話になったのは、その街のスーパーでの「飲むヨーグルト」は、この近辺では一応最安値だから、それを買いに行く用事もあり、だけど、そのお菓子屋が閉まっている場合に備えて、その街の別のケーキ屋のことも教えてもらった。それでちょっと安心もした。

休み

 妻が病院に出かけてから、夕方になって遅くなったら焼き菓子も売り切れるかもしれない、という恐れもあって、午後2時過ぎに出かけた。今年になってできた近所の洋菓子屋は定休日なのは知っている。

 郵便局に寄って、心理学に関する講座のための本を購入したので、その支払いをした。

 それから、自転車をこいで、隣町に行き、スーパーで低脂肪牛乳と飲むヨーグルトと、飲料を買った。

 それから、最初の目的の美味しくてかっこいいお菓子屋は、閉まっていた。ちょっとがっかりする。だけど、教えてもらったケーキ屋があると思って、さらに自転車に乗っていたら、そのケーキ屋は初めて来たけれど、シャッターが降りていた。かなりがっかりする。

 背の高い並木の向こうの太陽はすでに西日になっている。

 それから自分の街に向かっていって、途中に和菓子屋があったけれど、うーんと迷って買わず、そういえば、近所の目立たない小さいスペースに新しい商業スペースがあったはずと思って、さらに自転車をこいで、ちょっと探しながら向かったら、そこも鎖がかかっていた。

 自分の不運を確認した気持ちになった。

病院

 妻は病院に行く日だった。

 介護中に、ぜん息になって、それから毎日、薬を吸入したり、病院にも通う日常になった。それで、今日も何ヶ月かに一回の診察日で、それで、薬ももらってきて、ケーキ屋が全部しまっていたので、その買い物も頼んで、無事に帰ってきた。

 最近、飲み物を飲んだあとに、咳き込むことが多くなり、そのことと、あとは、コロナウイルスに感染した場合のリスクについて妻は医師に聞いてきた。

 それによると、咳き込むことについては、逆流性胃炎かもしれない、だけど、結局はわからない、という誠実な答えだったらしい。その一方で、ぜん息であっても、重症化リスクは変わらない、ということだったらしく、それについては専門家だからと思いながらも、肺がやられると聞いている新型コロナウイルスなのに、とも感じた。もう少し調べたり、考えてみようと思った。

 日が暮れるのは、早くなった。




(他にも、介護のことをいろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。




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