「介護booksセレクト」⑫『河合隼雄のカウンセリング入門』
いつも読んでくださっている方は、ありがとうございます。
おかげで、こうして書き続けることができています。
初めて読んでくださっている方は、見つけていただき、ありがとうございます。
私は、臨床心理士/ 公認心理師の越智誠(おちまこと)と申します。
「介護books セレクト」
当初は、いろいろな環境や、様々な状況にいらっしゃる方々に向けて、「介護books」として、毎回、書籍を複数冊、紹介させていただいていました。
その後、自分の能力や情報力の不足を感じ、毎回、複数冊の書籍の紹介ができないと思い、いったんは終了しました。
それでも、広く紹介したいと思える本を読んだりすることもあり、今後は、一冊でも紹介したい本がある時は、お伝えしようと思い、このシリーズを「介護booksセレクト」として、復活し、継続することにしました。
もし、ご興味があれば、読んでいただければ、幸いです。
今回も、「介護」とは直接関係はないかもしれませんが、特に「支援」という行為を考える時には、不可欠なことが書かれていると思い、紹介することにしました。
河合隼雄
河合隼雄、という名前は、臨床心理士や公認心理師であれば、知らない人がいないくらいの存在です。
私のように、直接、教えを受けたわけでもなく、ただ書籍などを通して間接的に知っている、ただの一心理士が、何か評価的なことを言うことが、許されるわけでもありません。
そうした大きい存在ではあるのですが、臨床心理学の外の世界にいる人にとっては、こんなふうに語られても、大げさではないかとも思われる可能性もありますが、それでも、臨床心理士の中では、おそらく世間での知名度もトップクラスだと思います。
それは、臨床心理学者として幅広い活動をし、さまざまな分野の方との対談なども積極的に行った成果だと考えられます。
そうした人ですから、私も心理士(師)になる以前、臨床心理学を本格的に学び始める前から、名前も知っていましたし、著作も読んでいました。そして、大学院でも、参考文献に必ず入っている存在でもありました。
それでも、恥ずかしながら、最近まで読んでいなかった本もあります。
今回、紹介する書籍もその一冊です。
『河合隼雄のカウンセリング入門:実技指導をとおして』
「実技指導をとおして」とサブタイトルがついているように、実際に、カウンセリングを教えている姿をもとに、書籍化したものです。それも、臨床心理学を専門に学んでいる学生ではなく、普段は教師として仕事をしている方たちなどが、その指導を受けています。
ですので、たとえばもっと専門性の高い書籍などと比べると、かなり率直であり、教わる側の方々が、カウンセリングに対しての信頼と理解から始めようとしているので、微妙なぶつかり合いが感じられる場面もあります。
その分、カウンセリングとは何か?が浮き彫りになっているように感じ、だからこそ、読んだことで、カウンセリングができるようになるのは難しいとしても、支援職に関わる人が人にとって、聴くことは、避けられない大事なことだとも思いますので、この本は、有意義なのではないかと考えました。
こういった書籍の一部分を抜き出すと、単なるコツやスキルに思われてしまう危険性もあるのですが、カウンセリングの基本が「聴くこと」であるのを、少し経験を積んできた人間にとっても、もう一度、振り返ることができました。
ただ、これも、引用している部分だけで成り立っているのではなく、様々な対話の中で出てきた言葉であることを意識していただけると、理解が深まるのでは、と思います。
何か、有益そうなことを困っている人に伝え、納得し、その通りに行動し、解決する。そんなイメージは、昔の教育関係のドラマにもよくあったと思いますが、おそらく、そういったことこそがフィクションなのは間違いありません。
そのことを改めて、示している言葉だと思います。
聴くこと
傾聴という言葉も一般的になりましたが、この書籍では出てきません。繰り返し「聴く」という表現が使われ、何度も何度も、そこに戻ってくるように感じます。
そして、その大事さは、個人的にも、心理士(師)として仕事をすればするほど、重く迫ってきます。仕事をするたびに、本当に聴けていただろうか、と振り返ることになります。
とても本質的な言葉ばかりですが、これだけ読むとできそうにすら思えます。それでも、心理士(師)として仕事をはじめて、私はまだ短いキャリアですが、いくら経験を積んでも難しいことではないだろうかと、改めて思います。
カウンセラーとしての姿勢
そして、「聴くこと」を支える普段からの姿勢の大事さも、同時に、何度も示されています。
こうしたことを形だけではなく、心の底からできるかどうか。それがカウンセラーの条件というのが分かりながらも、その難しさは、年を追うごとに感じるようにはなっています。
改めて、「聴くこと」の凄さや大事さ、その怖さを考えるためにも、重要な本だと思いました。
(他にもいろいろと介護のことを書いています↓。よろしかったら、読んでいただければ、うれしいです)。
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