H.Fukuzawa

東京と八ヶ岳の二重生活を10年以上続ける。そのきっかけとなった八ヶ岳高原音楽堂を訪れて…

H.Fukuzawa

東京と八ヶ岳の二重生活を10年以上続ける。そのきっかけとなった八ヶ岳高原音楽堂を訪れて、建築への関心が高まる。また、芸術全般に興味が尽きない。特に能は観るだけに飽き足らず、観世流で稽古を積む。論理を超えた、ヒトと社会の繋がりについて思考中。

マガジン

  • 実家敷地に開かれたコミュニティをつくる

    地方で増加する空家問題。東京在住の息子(僕)が、そうなる前に手を打ちました。2020年、平屋賃貸住宅4棟を完成。建築専門紙「新建築」2020年8月号の表紙に掲載されました。これから、それに隣接する敷地で、新たな建築を進めます。ハード(建築)だけでなく、ソフト(住まい方)にも工夫し、地域に開かれたオープンなコミュニティをつくる計画です。そのプロセスをnoteで記録していきます。

  • 建築家とつくる実家の貸家プロジェクト

    地方の空き家、空き地問題。いい加減な収益計画によって増殖する賃貸集合住宅。自分の頭でよく考えて、対応していかなければなるまい。どう考えてつくっていくのか、リアルケースの実況中継です。

最近の記事

第39回 「地域社会圏」という考え方

3月6日、建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を、山本理顕さんが受賞した。これは画期的なことだと思う。山本さんはマスコミ受けする超有名建築家ではない。受賞理由のひとつには、「社会的要求の責任とは何かについて地域社会に意識を喚起したこと、建築の規律に疑問を投げかけて個々の建築の対応を調整したこと、そして何よりも、建築においても民主主義同様に、空間は人々の決意によって創造されなければならないことを再認識させたこと」とある。 彼が評価されたのは、設計した建築物というよりも「地

    • 第38回 LS棟外部設備機器の設置方法

      12月15日の打合せでは様々な課題を扱ったが、その一つがLS棟のエアコン室外機と給湯器の設置場所だ。 その前に、使用エネルギーを整理しておく。ATでは熱源を二種類使用せざるを得ない。キッチンのコンロは電気。法規で木造集合住宅ではガスコンロは使用できないのだ!給湯はプロパンガス(都市ガスはきていない)。タンク一台ですみそうな灯油も検討したが、この地域では灯油の配達は難しいとのことで断念。さらにガスボンベは、部屋の広さに関わらず一戸につき4本を設置せねばならない。LS棟は3戸な

      • 第37回 SW/SE棟間の軒の長さ再検討 

        タイトル写真右側がLS棟で、二階にSW棟とSE棟がある。両棟の玄関が向かいあうテラス部分は、両側から軒が張り出している。この長さはそれぞれ91cmだが、これをもっと長く(130cm)してテラスを覆うようにしたらどうかと栗原さんの提案があった。それぞれ一長一短がある。短ければ空が見え光も差し込みやすい。長ければ雨が降っても濡れない。そこで日照シミュレーションをしてもらうことにした。 以下は冬至の日照シミュレーション。夏至と冬至があるが、冬至のみ掲載。右側がSW棟(西側)で左側

        • 第36回 LS棟テラス床材の検討

          AWAZUKU TERRACEとネーミングしたように、できるだけテラスを広く取りたい。LS棟は階段を上がりテラスを通って、左右の2棟(SW棟/SE棟)に入る動線となっている。このテラスは、里山がきれいに眺められるスポットなので、2棟の住民以外にも開放したいと考えている。 10/13にオンラインで、このテラスの床材の検討を行った。前回設計士からはFRP材が提案されたが、僕は木材やタイルなどの自然素材の検討も依頼していた。 この時提示された比較表が以下だ。なかなか自然素材は簡

        第39回 「地域社会圏」という考え方

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        • 実家敷地に開かれたコミュニティをつくる
          39本
        • 建築家とつくる実家の貸家プロジェクト
          70本

        記事

          第35回 外部と内部の仕上材の検討

          Kさんに承諾書をいただいた9/2,せっかくの設計士とのリアル打合せなので、オンラインではなかなかできない、仕上げ材のサンプルをみての検討を行った。 ■外壁と屋根 外壁は杉羽目板張りに決まっている。その板に塗るキシラ(デコール)塗装の色を検討した(下左写真参照)。板の真ん中は、「やすらぎ」という素地の色をできるだけ残す(透明)色を一回塗ったもの。「ワイス」は白っぽい色。板の下側は、やすらぎ4:ワイス1の比で混ぜた塗料で一回塗ったもの。雰囲気はわかったものの、まだ決めるには至ら

          第35回 外部と内部の仕上材の検討

          第34回 雨水排水管で解釈変更

          8/10、設計事務所とのオンラインでの打合せで、またも役所の解釈変更の話を聞かされた。今度は、町役場の土木課。雨水排水管の問題。こういうことだ。 現在母屋の雨水は、南側道路に埋設されている雨水排水管につながってお寺脇の川に放流されていることはわかっている。ただし、母屋から道路下までの経路は不明だ(第24回参照)。この道路下の雨水排水管は、本来は町が管理すべきものだが、町はその存在を知らず管理もしていない。かつて父が勝手に道路を掘って雨水排水管を川まで通したようなのだ。今回、

          第34回 雨水排水管で解釈変更

          第33回 役所の駐車場に関する解釈変更

          8/7、突然設計事務所からzoomで相談したいことがあるとの連絡があり、急遽オンラインで打合せした。建築許可申請を提出する先の、国土交通省下部組織の「西三河建設事務所」の担当者が変更になり、これまでと方針が変わったという。どういうことか。 新築する建物の敷地は市街化調整区域のため、様々な制約がかかる。その一つに敷地内に戸数分の駐車場の設置義務がある。今回5戸新築するため、5台分駐車上が必要になる。ただ、5台分も駐車場を作ると、建物のスペースがなくなってします。そこで、敷地内

          第33回 役所の駐車場に関する解釈変更

          第32回 収納の工夫と様々な制約

          これから新築する建物や住戸の呼称を整理することにした。設計事務所とのコミュニケーションを迅速にするためだ。 今回、二階建ての建物を2棟建てる。西側のMM棟と東側のLS棟だ。MM棟は、一階と2階に一軒ずつM(中)サイズの住戸が重なる。一階をM1棟、二階をM2棟と呼ぶ。東側のLS棟は、一階にL(大)サイズの住戸が一軒あり、その上の二階部分にS(小)サイズの住戸が2軒乗っかり、一階をL棟と呼ぶ。二階西側のSサイズ住戸をSW棟、東側をSE棟と呼ぶことにした。2階で空いたスペースはテ

          第32回 収納の工夫と様々な制約

          第31回 工事の順番問題

          4月以降も様々な課題が現れてきた。というか、以前から課題だとわかっていたが、いよいよ判断を迫れる時期にきたということ。そのうちの一つで最大の課題が奥の母屋のリノベーションと、その手前に新築する2棟の工事の順番だ。変数がたくさんある。 当初は先に新築2棟を完成させ、その後奥の母屋に着手する予定だった。これであれば、母屋に住む母が完成した新築棟にいったん移ってから母屋に着手し、母屋完成後に戻ればいい。しかし、問題がわかった。それには、ランドリーが関わってくる。母屋にコモンランド

          第31回 工事の順番問題

          第30回 いよいよ基盤工事開始

          まだまだ設計は途中だが、解体や土地整備に関する基盤工事を先に実施することになった。以下で説明するセットバック部分の鋤取りをしなければ、道路がからむ(町が管理)上下水道、雨水排水工事に着手できず、さらにそれが終わらねば建物の工事にも入れないからだ。鋤取り工事以外はもっと後でもよかったが、同じ業者にいっぺんに頼んだ方が効率的なので、今回まとめて作業することにしたわけ。 以下のように、4段階で作業する計画。 第一段階:アトリエ解体 2/27に着工、2日間で完了した。 写真は、

          第30回 いよいよ基盤工事開始

          第29回 コレクティブハウスに住む若者は何を感じ、どう考えているのか

          今回は、建築というハード面ではなく、そこに住む人について考えてみる。僕はあえて大きさの異なる5戸を建設し、既存の母屋をリノベーションして、そこを主にコモンスペースとするコレクティブハウスとしようと考えている。コレクティブハウス自体については既に書いたが、今回はそこに住む住人がどんな思いで暮らしているのか、どういう種類の人が住む傾向にあるのか、そしてそれが持つ現在の日本にとっての意味を考えてみたい。 SYNODOSという有料電子メディアが4回にわたって「コレクティブハウスで生

          第29回 コレクティブハウスに住む若者は何を感じ、どう考えているのか

          第28回 母屋とMM棟の位置関係

          2月28日の打合せでもう一つテーマになったのは、母屋とMM棟との位置関係だ。 下の合成写真に見える母屋とその手前に建つMM棟が、近すぎるのではと僕は心配した。(青線はセットバックした後の道路境界線。模型の建物位置は、セットバックが考慮されておらず、実際にはもう少し北側(上側)になければならない。) 下の平面図の位置が正しい。青矢印線が最も接近した場所。道路との距離と、母屋との距離が同じくらいだ。 2月9日にアトリエ解体撤去の下準備で実家に行ったとき、少し気になっていた母

          第28回 母屋とMM棟の位置関係

          第27回 母屋リノベ―ション仕様大筋決定 

          コレクティブハウジング協会(CHC:第18回参照)の方との相談も参考にして、これまで検討課題だったいくつかの事項に結論を出し、設計事務所にも伝えた。2月28日のオンライン検討会で、それを踏まえた案を提示してもらった。 1)母屋には土間(モルタル)は敷かない 仮に前回示したような土間を敷く場合、既存の床を壊して床面を下げるわけではないので、土間面と室内面(靴脱ぐ)の高低差はほとんどない。都会ならともかく、周囲に畑もたくさんある田舎だ。いくら足ふきマットを入口付近に敷いても、砂

          第27回 母屋リノベ―ション仕様大筋決定 

          第26回 母屋の土間をどこまで通すか

          母屋一階は、主にコモンスペースとして使用する計画だ。住人が気軽にそこに入ってこられるように、母屋内部にモルタル敷の土間を通すことを考えている。土間といっても掘り下げるのではなく、現在の床板の上にモルタルを敷くだけのもの。だから、床面が今より約2㎝高くなる。工事費用は、フローリング < タイル < モルタル の順で高くなる。モルタルがフローリングよりも高価とは意外だった。 ではどこまでを土足敷きにするか。栗原さんは2023/1/12の打ち合わせで4案を提示した。 室

          第26回 母屋の土間をどこまで通すか

          第25回 アトリエを解体し物干しスペースへ

          母屋東側には、父が2018年に増築したアトリエがある(経緯はこちらで)。約4畳半くらいの広さで、そこで油絵を描いていた。10㎡以上なので、建築確認申請を出す必要があったのに出していない違法建築だ。知り合いの大工に頼んでつくったもので、図面もない。 そのアトリエは台所部分に接続されている。増築前は台所の東側の窓から日差しが入っていたが、今では窓の向こうにアトリエ内部があり、日差しは全く入ってこない。食べものを扱う台所が、暗くなってしまうのはよくない。 また、母屋自体はリノベ

          第25回 アトリエを解体し物干しスペースへ

          第24回 雨水排水問題

          以前、上水道と下水道の問題への対応は記述したが、水の問題はこれだけではなかった。雨水の排水をどう処理するかという問題だ。 建物の樋などから流れ落ちる雨水を、敷地内で一箇所に集め、それを河川その他の公共の排水路に接続しなければならないという規制がある。今回の計画では、敷地前面の道路に雨水マスがあるので、そこに流し込めばいいと単純に考えていた。 設計事務所の方が、その雨水マスの経路を2022年12月初め調査した。その雨水マス(a)に水を流したところ、右下の三叉路の中心にあるマ

          第24回 雨水排水問題