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第27回 母屋リノベ―ション仕様大筋決定 

コレクティブハウジング協会(CHC:第18回参照)の方との相談も参考にして、これまで検討課題だったいくつかの事項に結論を出し、設計事務所にも伝えた。2月28日のオンライン検討会で、それを踏まえた案を提示してもらった。

1)母屋には土間(モルタル)は敷かない
仮に前回示したような土間を敷く場合、既存の床を壊して床面を下げるわけではないので、土間面と室内面(靴脱ぐ)の高低差はほとんどない。都会ならともかく、周囲に畑もたくさんある田舎だ。いくら足ふきマットを入口付近に敷いても、砂は室内に入り込んでくる可能性が高い。毎日丁寧に掃除をする飲食店であればいいかもしれないが、ここではそうはいかない。砂やほこりがたまってしまうリスクを補うだけのメリットを、土間には感じなかった。

また、土間にする理由の一つは、北側に扉を設け土足で南北を通り抜けできるようにしたいとうものだった。北側の扉から右に回り、狭い路地を通って洗濯もの干し場に移動できれば便利だと考えたが、その路地は思いのほか狭く、たとえ横の樹の枝を掃ったとしても使い勝手が悪いと判断した。(その代わりキッチンにテラスドアを設ける)

2)母屋で生活する母の部屋に、水回りを設置する
これまで、母はコモンスペースにあるトイレとキッチンを使ってもらおうと考えていた。しかし、母含めいろいろな人の意見を聞いたところ、母専用の水回りがあったほうが、住人も母も気を遣わずにすむのではないかと思うようになった。

また、将来母の部屋が空いた時に、そこに新たな住人に住んでもらう可能性もある。その時も、個人領域とコモン領域を分離するために、他の住戸と同様に最低限の水回りがあった方が望ましい。

栗原さんに検討してもらった結果、ミニキッチンは現在の床の間に設置可能で、そこから台所に水道管をつなぐ。しかし、トイレは、母の和室に設置はできないとのこと。トイレの排水管と外に通る下水道管との距離が遠すぎてしまい、しかも必要な傾斜が取れないからだ。仕方ないので、現在あるトイレを母専用にし、その隣にコモン用トイレを設置する案で検討を進めることになった。

右下が母の部屋を想定する和室

3)母屋コモンリビングはフローリングに改修
やはり、高齢者含め畳敷きは長時間座るのにはしんどい。古民家カフェなどで、畳に座って座卓で飲食するケースも多いが、それは非日常だから味わい深いし耐えられる。残念ながら、畳敷きを日常とする生活は無くなってしまった。

また、畳に座る醍醐味は、その低い視点から日本庭園を眺めるところにもあるが、ここではそうではない。畳に寝転びたいときは、隣の仏間にいけばいい。それらを鑑み、フローリングすることにした。

ふすまを外せば畳とづローリングが連続した18畳

4)コモンキッチン周辺
コモンキッチンの設備は、住人組合で自分たちが使いやすいものを選択し購入してもらおうと考えていた。しかし、CHCの方の意見を聞き、やはり当初からオーナー負担で設置すべきだと考えを変えた。テーブルや椅子なら、いくらでも後から選んで購入すればいいが、キッチン設備は設計にも直接関係するからだ。よりインフラに近いといえるだろう。各戸にキッチンはあるので、あえてコモンキッチンを使いたくなるような設備にしたほうが、マグネット効果も高まるだろう。検討を進めたい。

洗濯物干スペース(兼東屋)はアトリエ跡地に設置する。ランドリーからそこまでの動線(青線)を確保するために、コモンキッチン東側にテラスドアを設ける。玄関を回っていくのは、やはり不便だ。

また、洗濯物干しに隣接する壁面にカウンター設置もすることにした。物干し以外にも、このスペースを活用してもらいたいので。

5)母屋2階は、現納戸のみ改修
納戸は天井が低く、梁と木組みが露出している。これはこれで味があるので、ここをPCワークスに窓があるので、三面にカンターを設置し、そこで仕事できるようにしたい。新築の頃は、東側窓から海(三河湾)がかすかにみえた。今はどうだろうか?

納戸天井

早速、栗原さんはカウンターの図面を引いてくれた。天板を載せるベースプレートに足をつけるイメージ。足は邪魔になるので、壁にL字型フックをつけ、そこに天板を載せ固定するようにはできないか。残りの一面には本棚を設けたい。

入り口は現在板の引き戸なので、外から中が見えない。ガラスを入れて中の気配が感じられるドアに変えた方がいいかもしれない。

ワークスペース

なお母屋二階の洋室2室は、今回は手を入れないつもり。まだ十分使えるし、将来本格的に民泊などの用途が見えてきた段階で、改修しても遅くはない。

6)断熱と耐震は、提案されたレベルで実施する
いろいろ考えたが、この時期にリノベーションして断熱や耐震工事に全く手をつけないのは、不誠実だと感じたので、費用は掛かっても可能な範囲で実施することにした。

7)新築棟のは洗濯機を置けるよう排水管は通すが、パンは置かない
母屋内にコモンランドリーを設けるが、各戸の洗濯機をどうするかは、ずっと迷っていた。洗濯機置き場は、スペースを取ってしまい空間を有効活用できないので、できれば設けたくない。しかし、人によっては、プライベートの洗濯機が必要と思うかもしれない。

そこで、二人以上で住むことを想定するM室とL室には、洗濯機を置けるように排水口は用意しておくものの、パンは置かずに洗濯機を設置しない時にはそのスペースを他に利用できるようにしようと思う。ただその時少し心配なのは、洗濯機を設置せず蓋をした排水管から臭いが上がってこないかということだ。調査が必要だろう。

8)外壁は張り替える
耐震工事をすることに決めたため、現在のトタンを剥がすことになる。剥がした後に耐震壁を設置するからだ。そうであれば、外壁を新たに張り替えることは合理的だ。栗原さんは、AWAZUKU HOUSEと同じ白く塗装した杉板を張ることを提案しているが、やや不安がある。

下の写真はAH完成時に空撮した写真に、母屋と新築2棟の模型を合成したものだ。

写真と模型の合成

母屋は瓦葺の典型的な日本建築。その外壁が白っぽい板張りだと、なんだかバランスが悪く思える。頭(瓦屋根)が重く、体(外壁)が軽くて不安定に感じてしまうのだ。

もうひとつは、近隣の建物とのバランス。上の写真の手前の瓦屋根2棟は、隣のKさん宅。この建物は母屋よりもっと古い日本家屋で、外壁は長い時間を経て焦げ茶色になった板張り(下写真左側)。この建物との連動性(整合性)も、できるだけ考慮したい。新築2棟の外壁も同様だ。周囲から「浮いた」建物にはしたくない。既存AHとの連動性と外部環境との連動性、矛盾したような要望だろうが、適切な落としどころを探っていきたい。


向かいのKさん宅


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