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食料と農業

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記事一覧

仮説を立てて挑み、誇りをもって生きる~霜里農場経営者金子美登さん逝去

仮説を立てて挑み、誇りをもって生きる~霜里農場経営者金子美登さん逝去

9月27日午後、池袋から東武東上線急行電車に乗って埼玉県小川町へ行きました。24日に亡くなられた霜里農場経営者、金子美登(よしのり)さんのお通夜に参列するためです。

 有機農業の里として小川町下里(しもざと)地区を国際的にも有名にし、2010年に日本農林水産祭むらづくり部門で天皇杯を受賞。町議会議員も長く務め、地域のために生きる篤農家でした。金子さんが農場で育てた弟子たちは全国で活躍しています

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異業種から事業参入続々、農業Weekー幕張メッセ大賑わい

異業種から事業参入続々、農業Weekー幕張メッセ大賑わい

 第11回農業Week(10月13-15日)を見学しました。会場は千葉市の幕張メッセ。近くなのに千葉市に来たのは7カ月ぶり、幕張メッセは3年ぶりかもしれません。新型コロナですっかり足が遠のいていました。

 最終日だからでしょうか、いくつもある受付はいずこも長い行列。今回「スマート農業展」が目玉の一つですが、事前に登録を済ませていても、バーコードの情報を読み取るリーダーのない受付もあって、「この紙

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「食の安全を守る人々」を観る

「食の安全を守る人々」を観る

 弁護士山田正彦さん(元民主党代議士・農相)と初めて会ったのは十数年前でした。日本海・九州沖での大型まき網漁船によるクロマグロ乱獲問題を調べていて、この問題を取り上げているたった一人の国会議員であることを知り、話を聞きに行きました。

 山田さんは長崎・五島の出身で、離島経済を成り立たせている一次産業に深い思い入れがあったのです。

 その後、民主党が政権をとり、山田さんは農林水産副大臣、大臣に就

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コロナ退治後、アルザスにまた行きたい

 コロナ退治が終わって、自由に旅行ができるようになったら出かけてみたい町。筆頭はフランス・アルザス地方でしょうか。

 写真は1987年に尋ねたコルマール付近の養豚農家。クレディアグリコール・アルザス金庫の融資部長さんが連れて行ってくれました。「アジアでは豚にキャッサバ食べさせて、生産効率がいいそうね」と聞かれても、何にも答えられない私に彼女はきっとがっかりしたことでしょう。

 インタビュー後に

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公正、寛容、人権を重視します~記事・投稿についての私の考え方

公正、寛容、人権を重視します~記事・投稿についての私の考え方

記事・投稿についての考え方 スマホのデータ通信機能が災害時にとても頼りになると実感した東日本大震災からまもなく10年です。私がSNSを利用し始めたのもその直前くらいでした。

 その後も、凋落を続ける新聞のようなマスメディアを飲み込む勢いでインターネット媒体の情報発信力は大きくなっています。

 2年前に新聞社を退職したあとの報道との関わりを模索する中で、私自身、クリエイター向けの投稿サイトnot

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分葱の畑を見て考えたこと

分葱の畑を見て考えたこと

昨日ふらり立ち寄った尾道市岩子島(いわしじま)のワケギ(分葱)畑です。見ていたら「ここは日本一の産地なんです」と生産者の農間富久ご夫妻が教えれくれて、摘み取ったばかりのワケギをたくさん分けてくれました。タマネギとネギのハーフです。うまそうですが、かなり強いニオイです。

もともとこのあたりの島はミカン畑だらけでしたが、農間さんによると、「みんなミカンばかりでは余って仕方がないというわけで、岩子島は

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荘園のまち世羅高原を走る〜大妻コタカ像から「道の駅」まで

荘園のまち世羅高原を走る〜大妻コタカ像から「道の駅」まで

秋の世羅高原。紅葉が綺麗でした。神石高原から広島空港へ行く途中、大妻コタカ生家の案内板を見かけ、ダム湖「神農湖」のほとりにあるその場所を訪ねました。

平家落人集落のあった跡で、戦後ダムの水底に沈んだという碑が立っていました。その隣が大妻女子大学創設者の生家。湖になった場所から移してきたようです。ここは「ごもくめし」の食事処にもなっていますが、あいにくコロナで休業中でした。

湖畔からおよそ10分

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「競争できる環境」を望んだ農業団体

「競争できる環境」を望んだ農業団体

 全国肉牛事業協同組合の理事長を16年間務めて今年8月に退任した山氏徹(やまうじ・とおる)さんを囲む懇談会を、29日夕、東京・内幸町の日本記者クラブで開きました。

 日比谷公園を見下ろす場所にあり、窓越しにみる日比谷や大手町のオフィス街の夜景もなかなかキレイです。自民党農林部会長当時、政府、農業関係者との議論を積み上げて農政改革案をまとめ上げた小泉進次郎環境相も駆けつけ、山氏さんを労いました。

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タフ・ネゴシエーター塩飽二郎さん逝く〜国際交渉を進めるときの One Voice の大切さ

 Facebookへの投稿を転載しました。

 1986年にプンタデルエステでウルグアイ・ラウンドの開始が宣言されたときは、農林水産省国際部長。米の関税化猶予を主に米国との秘密交渉で合意したのが1993年秋。開始から終結まで一貫して交渉に関わり、ジュネーブに通い続けた数少ない人物。私も記者として農林水産省を初めて担当したのが1986年でしたから米国による農産物12品目の対日ガット提訴に始まる貿易自

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茨城県産和牛にDNA父子矛盾、現在も調査を続行中

茨城県産和牛にDNA父子矛盾、現在も調査を続行中

1、宮城、沖縄、山口に続き 茨城県産牛で種付けに使用した種牛とは異なる遺伝子を持つ子牛の存在、いわゆる父子矛盾が発生したことが茨城県畜産課生産振興グループの調査で確認されました。遺伝子の不一致は昨年宮城県の獣医師による人工授精の不正が発覚して以来、沖縄、山口でも発覚しています。もはや話題にもならないくらいDNA不一致は蔓延しているのでしょうか?

 7月末に筆者のnoteに「茨城県で和牛の父子矛盾

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「コメ」をたくさん食べるところでは「新型コロナ」感染率が低い〜渡辺昌教授らが論文

「コメ」をたくさん食べるところでは「新型コロナ」感染率が低い〜渡辺昌教授らが論文

 コメの消費量が多い国では新型コロナ感染者が少ない、という統計的解析結果をまとめた論文が発表されました。小麦の消費量が多い国では逆に感染者が多いということです。

コメを主食とする日本で感染率が低く死亡者も少ない謎を解くきっかけになりそうです。

 論文は渡辺昌・東京農大客員教授(元国立がんセンター研究所疫学部長)と飯沼一元・ライステック社長(工学博士)によるものです。米国のオンライン出版の研究誌

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宮城に続き沖縄、山口でも発覚~広がる和牛の遺伝子不一致、揺らぐ信頼、バブルは崩壊?ブーム悪乗りのツケ

1、JA山口県は1月末に把握 宮城、沖縄と続いて今度は山口県でも。13日午前11時半、JA山口県の畜産課から電話があり、山口県の家畜市場から出荷された和牛の子牛で遺伝子父子矛盾(不一致)が検出されたという説明がありました。県庁も同時刻に発表したそうです。

 JA山口県の説明によると、最初に遺伝子不一致が判明したのは今年1月30日でした。県外に出荷された子牛のDNAを購買者が検査したところ、不一致

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加担者として「顧問弁護士」の責任を問う安愚楽牧場被害訴訟

 3日午前、霞が関の東京地方裁判所で裁判を傍聴しました。

 9年前に4千億円の負債を抱えて倒産した和牛預託商法の安愚楽(あぐら)牧場の加担者責任を追及する民事訴訟です。

■加担者としての責任問う裁判

 被告のひとりで、私も当時取材した安愚楽牧場の元顧問弁護士、土屋東一(とういち)弁護士(東京第二弁護士会所属)に対する尋問が行われたのです。

 裁判所1階玄関で手荷物検査を受け、傍聴したい事件

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宮城県開示文書①和牛DNA不一致、5月に地元JAでこっそり説明会、「風評被害」懸念?

 この夏、筆者のnoteへの投稿で明るみに出た宮城県産の和牛DNA不一致問題について、宮城県の対応記録を情報公開請求したところ、4月下旬から8月上旬までの会合メモなど計27種類92ページの行政文書が開示されました。

 不定期となりますが、順次note上で公開していきます。

 第一弾は、2019年5月27日開催の「遺伝子検査結果矛盾にかかる説明会」の記録です。宮城県と全農宮城県本部が記者会見な

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