宮城に続き沖縄、山口でも発覚~広がる和牛の遺伝子不一致、揺らぐ信頼、バブルは崩壊?ブーム悪乗りのツケ

1、JA山口県は1月末に把握

 宮城、沖縄と続いて今度は山口県でも。13日午前11時半、JA山口県の畜産課から電話があり、山口県の家畜市場から出荷された和牛の子牛で遺伝子父子矛盾(不一致)が検出されたという説明がありました。県庁も同時刻に発表したそうです。

 JA山口県の説明によると、最初に遺伝子不一致が判明したのは今年1月30日でした。県外に出荷された子牛のDNAを購買者が検査したところ、不一致があったと通告を受けたそうです。

2、今月4日の家畜市場への出場停止

 その家畜人工授精師が種付けした子牛3頭が今月4日の家畜市場で取引される予定でしたが、JA山口県は出場を停止して遺伝子検査を実施しました。すると3頭中2頭で記録上の父牛(種牛)と遺伝子が一致しない(父子矛盾)という結果が出ました。

 人工授精師と子牛を出荷した生産者は家族で、自家農場で繁殖させる牛にしか種付けをしていなかったということです。県が聞き取り調査などをした結果、意図的に行ったものではない、という結論になっているそうです。

3、自家農場での種付け専門、県内外21頭を調査へ

 JA山口県が調査したところ、県内外に出荷されて、いまも生存中の牛は21頭いるそうで、全頭遺伝子検査にかける計画です。その結果次第で、賠償問題も当事者間で行われることになりそうです。 

4、夜に噂が駆け巡る

 12日夜から山口県の和牛生産者が戦々恐々としていました。和牛遺伝子の不一致(父子矛盾)が判明したのではないか、というウワサが駆け巡っていたのです。

 そこで、13日朝から関係先に電話をして調べてみると、噂ではありませんでした。

 「JA山口県が、ある人工授精師が扱った牛の全頭検査を始める」と教えてくれる農場主もいました。

 3月4日に山口中央家畜市場では、遺伝子不一致の種付けをした人工授精師が関わった和牛の出場が取りやめになっていました。

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 JACCネットで山口中央家畜市場の開催状況を調べると、3月4日には雄(去勢)、雌合計300頭が出場予定でしたが、実際にセリに登場したのは285頭でした。

 体調不良で欠場する牛は一定の割合でいますから15頭すべてが疑わしいわけではありませんが、このうち数頭が遺伝子不一致の疑いによる出場取りやめだったというのです。

 宮城県では石巻市の獣医師が有名な種牛の精液を使ったように見せかけて、不人気な牛のタネをつけていたことが昨年7月に発覚し、宮城県が家畜改良増殖法違反(虚偽報告)の疑いで12月に刑事告発する騒動になりました。

 沖縄でも12日、複数の人工授精師による種付けで遺伝子不一致が確認されていたことが琉球新報の報道で明るみに出て、地元の畜産界に衝撃が走ったばかりです。

5、全国一斉検査の実施を 

宮城県で遺伝子不一致が発覚した時、すでに同じような例が全国にたくさんあるのではないかという声が出ていました。当時から農林水産省や全国和牛登録協会が全国一斉検査を実施していれば、こうした不始末は早期に発見できていたかもしれません。

 意図的に異なるタネを付けた場合は、まさに血統やブランドの「偽装」です。過去数年続いた和牛のバブルはすでに峠を越えて、消費増税、新型コロナウィルスによる消費落ち込みで価格は暴落中です。

 人気の種牛の名前だけ利用しようとするビジネスが各地で蔓延していたとするなら、和牛ブランドの信用は失墜してしまいます。いまからでも一斉検査をしてはどうでしょう。国もJAグループも徹底的な原因究明に取り組むべきです。

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