樫原弘志 Waterside Laboratory LLC

経済ジャーナリスト 日本記者クラブ会員 ウォーターサイドラボラトリー代表社員 早…

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経済ジャーナリスト 日本記者クラブ会員 ウォーターサイドラボラトリー代表社員 早稲田大学政治経済学部政治学科卒、日本経済新聞社でシンガポール、大分、千葉の各支局長及び編集委員、日経グローカル研究員など。国際開発高等教育機構リーダーシップアカデミー修了 広島県尾道市出身

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大臣許可漁船もクロマグロ不正漁獲~気仙沼の流し網「第18一丸」を海保が摘発

 気仙沼海上保安署が18日、漁業法で義務付けられている太平洋クロマグロの漁獲量の報告を怠った容疑で大目流し網の大臣許可漁船の船長を仙台地方検察庁に書類送検しました。 大臣許可船のクロマグロ密漁摘発は初  大臣許可漁船のクロマグロ不正漁獲の摘発は前代未聞です。同市内の業者を含む複数の流通業者が買い付けたもようです。  混獲が不可避とされる大目流し網によるクロマグロの不正漁獲は以前から漁業者や流通業者の間で話題になっていました。水産庁は大目流し網漁船の操業実態を混獲、放流し

    • 間違いをごまかし、強弁してキズを広げる水産庁~太平洋クロマグロ漁獲枠の配分に監視が必要③

       「長い道のりを経て思う」――そんな見出しのコラムを元水産庁次長で中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)北委員会の議長・宮原正典氏(よろず水産相談室afc masa代表)が8月23日付の日刊水産経済新聞1面に書いていました。  WCPFC北委員会で太平洋クロマグロの資源回復を受け、来年から大型魚は50%、小型魚は10%それぞれ増枠することを合意しました。 「奇跡を祝おう」と呼びかける水産庁OB 「何と幸せな状況にいるか、感慨にふけりたくなるのは私だけだろうか」  議

      • 政治と宮沢賢治~羽田孜さんが懐かしい

         ミスター政治改革とも呼ばれた元首相、羽田孜(つとむ)さん(2017年没)は宮沢賢治の愛読者でした。  戦前、朝日新聞記者から政治家に転身した父・武嗣郎さんが政治活動の資金を作るために「羽田書店」を創立し、1939年(昭和14年)に賢治の童話集「風の又三郎」を出版しました。  そんな環境のもと、羽田さんはまだ、字を習い始めたころから賢治の童話に親しんでいたようです。著書「志」(朝日新聞社、1996年)でこう書いています。  結核で病んでいる子の家を訪れ、その子のふとんの

        • 「金銭的にみて」誰が得をし、損をしたのか~太平洋クロマグロ漁獲枠の配分に監視が必要②

           前回、太平洋クロマグロの漁獲量配分について漁業者らと話し合いを始めるにあたって「水産庁は準備不足だ」と書きました。役所が持つ情報量と漁業者が持つ情報量に大きな格差があります。役所はクロマグロをめぐる諸事情について的確に判断できる情報をもっとたくさん用意して、公開する必要があるのに、十分に行われていません。 「現場の負担の重さ」めぐる議論が空回り  例えば、針や網にかかったクロマグロを漁獲せずに放流する実態に関する情報です。  現在の漁獲制限のもとでは、1本のクロマグロ

        大臣許可漁船もクロマグロ不正漁獲~気仙沼の流し網「第18一丸」を海保が摘発

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        記事

          「争いの種」をまく水産庁~太平洋クロマグロ漁獲枠の配分に監視が必要①

           8月21日、東京・新橋の民間の貸し会議室で水産庁主催による「くろまぐろに関するブロック説明会」が開催されました。オンラインでも参加できますが、雰囲気を感じるには会場参加が一番です。午後1時半からおよそ3時間。漁業者のほか、レジャーの釣り人からもたくさんの意見が出ました。その印象を含めて、大幅増枠が決まった2025年以降の太平洋クロマグロの漁獲量の配分のあり方について私見を述べておこうと思います。 議論の前提となる情報欠如、水産庁は準備不足  結論から先に言えば、水産庁は

          「争いの種」をまく水産庁~太平洋クロマグロ漁獲枠の配分に監視が必要①

          月刊農業経営者8月号に「しっかりしろよ、農林中金」を寄稿しました

          農業経営者の最新号【341 (発売日2024年07月28日)】| 雑誌/電子書籍/定期購読の予約はFujisan

          月刊農業経営者8月号に「しっかりしろよ、農林中金」を寄稿しました

          地元有力販売業者が集荷し、販路を開拓か~気仙沼でクロマグロ不正漁獲②

           宮城県気仙沼市内の大目流し網漁業者による太平洋クロマグロの不正漁獲を気仙沼海上保安署が捜査していることを地元気仙沼の「三陸新報」紙が18日、一面トップで大きく取り上げました。筆者がおよそ一週間前、12日にこのnoteでお伝えした内容を確認した内容です。  繰り返しになりますが、この漁業者は市内在住で唐桑半島の小さな港(小鯖漁港)でクロマグロを船から持ち出していたもようです。  大型トラックに次々積み込んで運んだ先も既に特定されていて、気仙沼魚市場を運営する気仙沼漁業協同

          地元有力販売業者が集荷し、販路を開拓か~気仙沼でクロマグロ不正漁獲②

          太平洋クロマグロ、2025年から大幅増枠へ②韓国、大型魚515トン枠の新設を要求~領海内は沿岸国が管理と主張

           16日まで北海道・釧路で開催した中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)などの国際会議で、韓国は、2002-04年の年平均漁獲実績に基づく太平洋クロマグロの漁獲枠の配分は不当(アンフェア)だとして、2025年から大型魚(30キログラム以上)の漁獲枠を同国に515トン認めるよう提案(写真参照)しました。  基準年の漁獲実績に基づかない枠配分はニュージーランドやオーストラリアも求めています。ニュージーランドは大型魚250トン、オーストラリアは同50トンを要望しています。  

          太平洋クロマグロ、2025年から大幅増枠へ②韓国、大型魚515トン枠の新設を要求~領海内は沿岸国が管理と主張

          米韓は大型魚50%増を主張、資源悪化の危険伴う日本の131%増提案~太平洋クロマグロ漁獲上限めぐる国際会議①

           7月10日から北海道・釧路で太平洋クロマグロの漁獲枠について話し合う国際会議が開かれています。資源が急回復しているとする科学者の分析結果をもとに、日本政府は2025年から漁獲枠を大型魚については2.31倍(131%増)とするよう提案しました。米国や韓国は50%増に止めるべきだという立場でした。  私も米韓の提案の方が妥当だと思います。日本の倍増提案はせっかく回復した資源を再び悪化させるリスクもあるうえ、流通市場で消化不良を引き起こす可能性もあり、資源が有効に利用されないと

          米韓は大型魚50%増を主張、資源悪化の危険伴う日本の131%増提案~太平洋クロマグロ漁獲上限めぐる国際会議①

          JF天草の深い闇~逮捕された監事は「役員就任辞退」を条件に和解し、釈放されていた!

           理解に苦しむ展開でした。6月12日に熊本県警天草署に名誉棄損の疑いで逮捕された天草漁協(JF天草)監事はおよそ一週間の取り調べを受けた後、6月18日に釈放されました。  容疑者逮捕について報道機関に積極的に情報提供した天草署は今回、問い合わせに対しても「警察はコメントする立場にない」として釈放について一切言及しません。  県警は地方検察庁の指揮のもとで捜査をしているだけなので「捜査の結果を検察に報告した後は、検察が判断するので、警察の出番ではない」ということのようです。

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          JF天草の深い闇~逮捕された監事は「役員就任辞退」を条件に和解し、釈放されていた!

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          気仙沼でクロマグロ不正漁獲~大目流し網漁船が混獲物を加工業者に販売か

           「第二の大間になるのではないか」――気仙沼の漁業関係者が憂鬱そうに打ち明ける。漁獲上限が決められている太平洋クロマグロの不正漁獲がもうじき明るみに出るというのです。  資源が急回復している太平洋クロマグロの不正漁獲、不正出荷はいま、日本各地に蔓延しています。 違法漁獲、増枠交渉に悪影響も  不正があまりに多いので、漁業を所管する水産庁や都道府県の水産部門は、裏付けとなる証拠が持ち込まれない限り、かたちばかりの聞き取りをして事実上放置してきたといってもいいくらい、調査に

          気仙沼でクロマグロ不正漁獲~大目流し網漁船が混獲物を加工業者に販売か

          監事を「勇み足」に駆り立てたJF天草の深い闇~県・マリンバンクは徹底検査を

          理事会での発言が名誉棄損に  「名誉棄損容疑で男逮捕」――13日朝、そんな新聞記事の写しが熊本県天草市在住の知り合いから送られてきました。  県警の発表をもとにした記事だと思われます。ざっと内容を紹介するとこんな感じです。  「天草署が12日、市内在住の会社役員(記事では実名)を逮捕した。4月30日午後2時半頃、集会場でアルバイト女性(21)の評価を著しく害する内容が記載された文書28枚を参加者に配り、女性の名誉を傷つけた。容疑者は容疑を認めている」  逮捕されたのは

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          農林中央金庫のガバナンスを問う①定年内規を反故にした河野良雄・前理事長

          2期6年が原則の農中定年  私の手元には全国農業協同組合中央会(全中)がかつてとりまとめた全国連役員定年内規一覧表があります。  指導団体である全中、販売・購買など経済事業を担当する全国農業協同組合連合会(全農)、保険(共済)事業を担当する全国共済農業協同組合連合会(全共連)、そして信用(金融)事業を担当する農林中央金庫(農中)の会長、理事長など役員の定年に関するルールを文書化したものです。

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          農林中央金庫のガバナンスを問う①定年内規を反故にした河野良雄・前理事長

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          太平洋クロマグロ、2025年から大幅増枠へ① 「小型魚保護」で着実に資源回復

           太平洋クロマグロの資源回復が着実に進んでいて、2025年年から国別の大型魚(30キログラム以上)の漁獲枠を50ー100%拡大することも議論されています。今後は増枠を前提として、国内の配分をどのようにしていくかが大きな争点になるでしょう。  中西部まぐろ類委員会(WCPFC)などの依頼を受けて資源評価を行っている国際科学委員会(ISC)の分析によると、太平洋クロマグロの産卵資源量(SSB)は2022年時点で約14万4千トン、初期資源量の23.2%の水準でした。5万トンを切り、

          太平洋クロマグロ、2025年から大幅増枠へ① 「小型魚保護」で着実に資源回復

          銀行としての原点回帰が急務、農林中央金庫の行く末はJAバンク解体か、それとも国有化かーーストイカ配信記事

          銀行としての原点回帰が急務、農林中央金庫の行く末はJAバンク解体か、それとも国有化かーーストイカ配信記事

          「隠れたマグロ漁獲」は「不良債権」にも似て大間漁協の経営を揺るがす問題に

          大間漁協は2024年度の県からのクロマグロ漁獲枠配分をおよそ30トン減らされる。昨年2月、漁獲したことを青森県に報告しないままクロマグロを出荷、販売した容疑で仲買業者2人が逮捕された事件で、容疑となった2021年度の未報告数量は青森県が立ち入り調査で把握していた大間など3漁協分約60トンよりもさらに30トン多いことが判明したからだ。大間漁協所属の漁業者の違反分とみられる。  2020年以前の漁獲にも未報告の疑いがある。筆者が大間産の未報告マグロを大量に扱っていた静岡市中央卸

          「隠れたマグロ漁獲」は「不良債権」にも似て大間漁協の経営を揺るがす問題に