樫原弘志 Waterside Laboratory LLC

経済ジャーナリスト 日本記者クラブ会員 ウォーターサイドラボラトリー代表社員 早…

樫原弘志 Waterside Laboratory LLC

経済ジャーナリスト 日本記者クラブ会員 ウォーターサイドラボラトリー代表社員 早稲田大学政治経済学部政治学科卒、日本経済新聞社でシンガポール、大分、千葉の各支局長及び編集委員、日経グローカル研究員など。国際開発高等教育機構リーダーシップアカデミー修了 広島県尾道市出身

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地元有力販売業者が集荷し、販路を開拓か~気仙沼でクロマグロ不正漁獲②

 宮城県気仙沼市内の大目流し網漁業者による太平洋クロマグロの不正漁獲を気仙沼海上保安署が捜査していることを地元気仙沼の「三陸新報」紙が18日、一面トップで大きく取り上げました。筆者がおよそ一週間前、12日にこのnoteでお伝えした内容を確認した内容です。  繰り返しになりますが、この漁業者は市内在住で唐桑半島の小さな港(小鯖漁港)でクロマグロを船から持ち出していたもようです。  大型トラックに次々積み込んで運んだ先も既に特定されていて、気仙沼魚市場を運営する気仙沼漁業協同

    • 太平洋クロマグロ、2025年から大幅増枠へ②韓国、大型魚515トン枠の新設を要求~領海内は沿岸国が管理と主張

       16日まで北海道・釧路で開催した中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)などの国際会議で、韓国は、2002-04年の年平均漁獲実績に基づく太平洋クロマグロの漁獲枠の配分は不当(アンフェア)だとして、2025年から大型魚(30キログラム以上)の漁獲枠を同国に515トン認めるよう提案(写真参照)しました。  基準年の漁獲実績に基づかない枠配分はニュージーランドやオーストラリアも求めています。ニュージーランドは大型魚250トン、オーストラリアは同50トンを要望しています。  

      • 米韓は大型魚50%増を主張、資源悪化の危険伴う日本の131%増提案~太平洋クロマグロ漁獲上限めぐる国際会議①

         7月10日から北海道・釧路で太平洋クロマグロの漁獲枠について話し合う国際会議が開かれています。資源が急回復しているとする科学者の分析結果をもとに、日本政府は2025年から漁獲枠を大型魚については2.31倍(131%増)とするよう提案しました。米国や韓国は50%増に止めるべきだという立場でした。  私も米韓の提案の方が妥当だと思います。日本の倍増提案はせっかく回復した資源を再び悪化させるリスクもあるうえ、流通市場で消化不良を引き起こす可能性もあり、資源が有効に利用されないと

        • JF天草の深い闇~逮捕された監事は「役員就任辞退」を条件に和解し、釈放されていた!

           理解に苦しむ展開でした。6月12日に熊本県警天草署に名誉棄損の疑いで逮捕された天草漁協(JF天草)監事はおよそ一週間の取り調べを受けた後、6月18日に釈放されました。  容疑者逮捕について報道機関に積極的に情報提供した天草署は今回、問い合わせに対しても「警察はコメントする立場にない」として釈放について一切言及しません。  県警は地方検察庁の指揮のもとで捜査をしているだけなので「捜査の結果を検察に報告した後は、検察が判断するので、警察の出番ではない」ということのようです。

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        • 食料と農業
          41本
        • 水産業の成長のカギ
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        • 大間マグロの謎を解く
          22本
        • 動物愛護
          173本
        • メディアについて
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        • 2022
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        記事

          気仙沼でクロマグロ不正漁獲~大目流し網漁船が混獲物を加工業者に販売か

           「第二の大間になるのではないか」――気仙沼の漁業関係者が憂鬱そうに打ち明ける。漁獲上限が決められている太平洋クロマグロの不正漁獲がもうじき明るみに出るというのです。  資源が急回復している太平洋クロマグロの不正漁獲、不正出荷はいま、日本各地に蔓延しています。 違法漁獲、増枠交渉に悪影響も  不正があまりに多いので、漁業を所管する水産庁や都道府県の水産部門は、裏付けとなる証拠が持ち込まれない限り、かたちばかりの聞き取りをして事実上放置してきたといってもいいくらい、調査に

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          監事を「勇み足」に駆り立てたJF天草の深い闇~県・マリンバンクは徹底検査を

          理事会での発言が名誉棄損に  「名誉棄損容疑で男逮捕」――13日朝、そんな新聞記事の写しが熊本県天草市在住の知り合いから送られてきました。  県警の発表をもとにした記事だと思われます。ざっと内容を紹介するとこんな感じです。  「天草署が12日、市内在住の会社役員(記事では実名)を逮捕した。4月30日午後2時半頃、集会場でアルバイト女性(21)の評価を著しく害する内容が記載された文書28枚を参加者に配り、女性の名誉を傷つけた。容疑者は容疑を認めている」  逮捕されたのは

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          農林中央金庫のガバナンスを問う①定年内規を反故にした河野良雄・前理事長

          2期6年が原則の農中定年  私の手元には全国農業協同組合中央会(全中)がかつてとりまとめた全国連役員定年内規一覧表があります。  指導団体である全中、販売・購買など経済事業を担当する全国農業協同組合連合会(全農)、保険(共済)事業を担当する全国共済農業協同組合連合会(全共連)、そして信用(金融)事業を担当する農林中央金庫(農中)の会長、理事長など役員の定年に関するルールを文書化したものです。

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          太平洋クロマグロ、2025年から大幅増枠へ① 「小型魚保護」で着実に資源回復

           太平洋クロマグロの資源回復が着実に進んでいて、2025年年から国別の大型魚(30キログラム以上)の漁獲枠を50ー100%拡大することも議論されています。今後は増枠を前提として、国内の配分をどのようにしていくかが大きな争点になるでしょう。  中西部まぐろ類委員会(WCPFC)などの依頼を受けて資源評価を行っている国際科学委員会(ISC)の分析によると、太平洋クロマグロの産卵資源量(SSB)は2022年時点で約14万4千トン、初期資源量の23.2%の水準でした。5万トンを切り、

          太平洋クロマグロ、2025年から大幅増枠へ① 「小型魚保護」で着実に資源回復

          銀行としての原点回帰が急務、農林中央金庫の行く末はJAバンク解体か、それとも国有化かーーストイカ配信記事

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          「隠れたマグロ漁獲」は「不良債権」にも似て大間漁協の経営を揺るがす問題に

          大間漁協は2024年度の県からのクロマグロ漁獲枠配分をおよそ30トン減らされる。昨年2月、漁獲したことを青森県に報告しないままクロマグロを出荷、販売した容疑で仲買業者2人が逮捕された事件で、容疑となった2021年度の未報告数量は青森県が立ち入り調査で把握していた大間など3漁協分約60トンよりもさらに30トン多いことが判明したからだ。大間漁協所属の漁業者の違反分とみられる。  2020年以前の漁獲にも未報告の疑いがある。筆者が大間産の未報告マグロを大量に扱っていた静岡市中央卸

          「隠れたマグロ漁獲」は「不良債権」にも似て大間漁協の経営を揺るがす問題に

          Alleged bluefin tuna trade by the large purse seiners

          I knew it was so. I couldn't help but think so. After walking through Shiogama Port in Miyagi Prefecture, Japan's largest port for landing fresh bluefin tuna, and Otsu Port in Ibaraki Prefecture, one of the bases for the large purse seine f

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          架空業者名で出荷・宮城塩釜港、漁協職員らにもバラマキ・茨城大津港~大型まき網船団による疑惑のクロマグロ取引

           やはりそうだったか。そう思わずにいられませんでした。日本一の生鮮クロマグロ水揚げ港である宮城県の塩釜港と、北部太平洋で操業する大型まき網船団の拠点の一つである茨城県の大津港を歩いて、市場関係者から聞こえてきたのは、水産庁、つまり国直轄で管理している大中型まき網漁業によるクロマグロ漁獲のごまかしが疑われる情報です。  塩釜では市場の運営会社「みなと塩釜魚市場」が、地元の水産問屋の求めに応じて実在しない架空業者名義による出荷を扱い、現金でその代金を授受していたことが今年10月

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          架空業者名で出荷・宮城塩釜港、漁協職員らにもバラマキ・茨城大津港~大型まき網船団による疑惑のクロマグロ取引

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          生鮮クロマグロ水揚げ日本一・塩釜魚市場で架空名義取引、税務署調査で確認、漁獲報告漏れを指摘する情報も

           宮城県塩釜市の水産卸売市場営会社「みなと塩釜魚市場」が架空の名義による水産業者からの出荷を受け付け、販売していたことが明らかになった。税務署による税務調査で発覚し、実在しない業者の名義で出荷した地元の大手魚問屋も税務署から事情を聴かれているもようだ。 塩釜は生鮮クロマグロの水揚げ量が日本一の漁港で、水産庁は今年3月、クロマグロ漁獲報告体制が適切かどうか現地を調査したことがある。かねてうわさされていた実在しない業者名での取引が判明したことで、水産庁は塩釜市場でヤミの水揚

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          生鮮クロマグロ水揚げ日本一・塩釜魚市場で架空名義取引、税務署調査で確認、漁獲報告漏れを指摘する情報も

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          暴走する「社会正義」に一定の歯止めが必要 ③

           ◆PFIによる広島県動物愛護センター開業、譲渡活動を推進  ところで、8月1日から広島県動物愛護センターが広島空港脇に移転しました。死亡動物の焼却炉などがある旧施設を残したまま、新しい施設を流行のPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)で建設したものです。設計、建設、そして15年間の維持管理運営費としておよそ14億円(うち維持管理運営費は5.5億円)を投じたそうです。  移転後の最大の使命は譲渡活動の促進です。そのために移転先として交通アクセスがよい広島空港

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          暴走する「社会正義」に一定の歯止めが必要 ②リンチを放置してはならない

           ◆千葉のドーベルマン連れ去り事件、裁判官は「動機が独善的」と断罪  最近の動物虐待をめぐる事件にも鯨肉を盗み出したグリーンピースのような間違った英雄主義のニオイを感じています。  昨年5月には、千葉県木更津市では、動物愛護活動家が飼い主をだましてドーベルマン2匹を盗み出し、逮捕・起訴された事件がありました。  飼い主のもとから逃げ出したドーベルマンの捜索活動に加わった際、飼育環境に問題があると思った活動家たちは、発見されたドーベルマンが飼い主のもとに戻った後、そこから

          暴走する「社会正義」に一定の歯止めが必要 ②リンチを放置してはならない

          暴走する「社会正義」に一定の歯止めが必要 ①「意識高い」人たちの勘違い

           ◆勘違い、錯覚に陥りやすい「意識高い系」の人々にご用心  正義感あふれるひとたち、または、少しばかり「意識高い系」のひとたちは、強い調子で相手を非難したり、自分たちを特別扱いされてしかるべき存在だと勝手に思い込んだりすることがあるようです。  2008年に起きた環境保護団体グリーンピースによる鯨肉窃盗事件はその典型例です。調査捕鯨に反対していたグリーンピースは調査捕鯨船の乗組員が鯨肉を横領しているという情報を掴んで、荷物の追跡調査を進めていました。  それは社会正義と

          暴走する「社会正義」に一定の歯止めが必要 ①「意識高い」人たちの勘違い