宮城県開示文書①和牛DNA不一致、5月に地元JAでこっそり説明会、「風評被害」懸念?

 この夏、筆者のnoteへの投稿で明るみに出た宮城県産の和牛DNA不一致問題について、宮城県の対応記録を情報公開請求したところ、4月下旬から8月上旬までの会合メモなど計27種類92ページの行政文書が開示されました。

 不定期となりますが、順次note上で公開していきます。

 第一弾は、2019年5月27日開催の「遺伝子検査結果矛盾にかかる説明会」の記録です。宮城県と全農宮城県本部が記者会見などで公表する2ヶ月も前に地元の農業協同組合(JA)で説明会を開いていました。

 文書は、説明会に出席した宮城県東部地方振興事務所の齊藤裕部長ら県職員3人の出張報告(復命書)として作成されたものです。

 出張目的地はJAの施設です。黒く塗りつぶされていますが、DNA不一致和牛が多数発覚した場所である石巻市のJAいしのまき(松川孝行組合長)であることは間違いないでしょう。

 開会は5月27日午後2時。開会挨拶も協議事項の説明もJAが受け持っているところをみると、JAいしのまき主催だったとみられます。

 県と全農とJAが説明側で、説明を聞くのは問題となったDNA不一致牛の発生源である石巻市在住の獣医師による人工授精を受けて生まれた牛を飼っている農場主らです。

 記録上の父牛と子牛の遺伝子型が一致しない事例やその補償状況などに続いて、人工授精を担当した開業獣医師は凍結精液の取り違えだと主張していることなどの経過説明がありました。

 獣医師が授精した牛からの産子全頭を対象にした検査が必要になっていること、検査結果や状況により補償の内容も様々になるだろうことも説明されました。

 役割分担としては、DNA検査や補償に関する話題は全農宮城県本部が、獣医師に対する調査に関する話題は宮城県畜産課となっています。

 質疑応答の内容をかいつまんで紹介します。

Q 未使用ストロー(凍結精液)在庫確認実施状況は?

A (県) 在庫等の確認は行っていない。流通経路は様々あり、すべて把握するのは現実的ではない。全国的にも把握は困難だ。県はストローとラベルを一元管理し、人工授精に都度授精証明書(無料)発行を指導済みであり、確実な実施により取り違え防止が可能だと考える。

Q 適正管理されているかの判断は?

A (県)授精台帳の確認は、記録一つ一つを突合しているわけではない。

Q 獣医師が行っているワクチン等の委託業務は?

A (県)畜産課と協議しながら進めていく。

Q 獣医師免許へに影響は?

A (県)獣医師審議会を通した判断になるが、業務停止や剥奪等の処分については、量刑確定後となるので、現時点では何とも言えない。今後の進展による。
 (全農)全国和牛登録協会での罰則はない。

Q 故意ではないという獣医師の主張は状況から判断するとおかしい。

A (全農)追及したが、本人は一貫して取り違えを主張している。

Q 父子矛盾が発覚したのが去年だからという理由で調査が進んでいるが、それ以前の状況に対しても疑念がある。

A(全農)今後の結果次第で判断していく。

Q 検査頭数の規模や終了のメドは?

A (JA)現在180頭程度(繁殖牛、子牛)、今後生まれてくる子牛もいる。市場上場牛を優先的に調査する。6月上場牛以降の検査は畜産経験ある職員導入し、スピードを上げたい。

Q 検査費用は農家負担だが、知らずに引き落とされたままにならないか?

A (JA)5月17日以降の検査分からは全額獣医師負担となり引き落としはない。

Q 検査費用請求に対し全額支払えない場合はどうなるか?

A (JA)本人の所得がいくらあるかは知るよしもない。組合としては生産者利益と風評被害の払拭に主眼をおいて検査を粛々と進める。全体被害額がどのくらいになるか把握していく。

(以下は非開示)




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