かぱぴー

浅学非才な一介の芸大生です。少しだけ地球を青くしています。

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世界のかたちと、きみと暮らした半年について。

「村雨のごと俺を抱きしあの熱 点のごとくにとほくなりしも」  あ、また、あの人のことを歌にしてる。  なんて、いつも思うよ。自分で作った短歌や小説には、たまに、…

かぱぴー
3か月前
9

木星のちょっと先あたりで

 あのとき同じバスに乗ってなかったらとか、そもそも俺が宇都宮に来ることがなかったらとか、あの日バイトの予定を変えられなかったらとか。  まあ、全部たらればなんだ…

かぱぴー
1か月前
3

なんてね。

 30kmをぶっ続けで歩いたり、異国の地を一日で600kmバイクで走ったり、そうじゃないと体力枯れない。  体力枯れないから、寝られない。東京の、狭くて直線と直…

かぱぴー
1か月前
6

あるいは遠くのエピタフ

 幼い頃は、愛し愛されればいいと思っていた。少し歳を経ると、セックスすればいいと思っていたし、もう少ししてからは自分の表現を確立できればいいと思っていた。  ま…

かぱぴー
2か月前
7

somewhere far away

 明けてゆく東の空で徐々に薄くなってゆく四等星みたいに、あるいはサイドミラーの中で少しずつ遠ざかってゆくナトリウム灯みたいに、淡く融けて、消滅できたらいいのに。…

かぱぴー
3か月前
8

不安という機能、猿人のアイデンティティクライシス、信仰と芸術表現の起源。

 以下、親愛なるI氏と話した内容の完全なメモであるが、読者のキミたちにも何かしらの考える契機となることを願って、少しだけキーボードを叩くこととする。  表現への…

かぱぴー
3か月前
3

日陰のプラタナス、あるいはタイで事故って入院し、顔を38針縫って全身麻酔した日本人

 俺は転勤族の生まれで、昔から引っ越しが多かった。  あのとき「どうしてもここがいい!」と駄々を捏ねていなければ、あのとき「もう一軒だけ見てみようよ」と言ってい…

かぱぴー
3か月前
8

ユーラシア大陸を走る食物アレルギー人間のエッセイ、否もう少し散文、よりももっと雑談。

 赤土の砂埃が道の果てまで舞っている。風を切る。アクセルをひねる。130キロで身体が前のめりに繰りでてゆく。  路面は整備されていなく、ツルツルのアスファルトの上を…

かぱぴー
4か月前
16

自由意志などの無きことを

 小学生くらいの幼い頃、起きたとき、自分は昨日まで自分だったのか疑問に思うことが幾度かあった。  俺は、かぱぴーという人間にたった今なって、かぱぴーという人間が…

かぱぴー
4か月前
4

蝉は夏を知らない。

 やあ、今日は話を聞きにきてくれてありがとう。帰りたかったら途中で帰ってくれて構わない。これはあくまでも、そういうものとして聞いてくれればいいさ。え? 田中さん…

かぱぴー
4か月前
9

ナニモノ⁉︎

 三十一文字で歌うのも、140字で綴るのも、それはそれでいいんだけれど、まだ若いし、溢れて留まらない心の澱は消えないし。 「いつかちゃんと生きたい」って思ったりもす…

かぱぴー
4か月前
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世界のかたちと、きみと暮らした半年について。

世界のかたちと、きみと暮らした半年について。

「村雨のごと俺を抱きしあの熱 点のごとくにとほくなりしも」

 あ、また、あの人のことを歌にしてる。
 なんて、いつも思うよ。自分で作った短歌や小説には、たまに、あの人がうっすらと感じられて、そのことにひとたび気がつくと、まるで冬のセーターに絡んだ細く長い髪の毛みたいに、無性に気になってしまう。
 まだ、忘れられない、とかそんなんじゃなくって、なぜか、いる。そのつもりがなくても、心のどこかにいる、

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木星のちょっと先あたりで

 あのとき同じバスに乗ってなかったらとか、そもそも俺が宇都宮に来ることがなかったらとか、あの日バイトの予定を変えられなかったらとか。
 まあ、全部たらればなんだけどね。
 人生が偶然的か必然的かなんて、そりゃ考えたくはなるけど、いくら考えてもわかりっこないし、いくら考えてもわかりっこないことはとりあえずは考えないことにしようって、デカルトのおじさんも言ってたから、考えないことにするけど。
 けど、

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なんてね。

なんてね。

 30kmをぶっ続けで歩いたり、異国の地を一日で600kmバイクで走ったり、そうじゃないと体力枯れない。
 体力枯れないから、寝られない。東京の、狭くて直線と直角だけで囲まれた星空の中じゃ、俺は休まらない。ずっと、夜更かししている。
 24時間のうち7時間寝たとして、たった17時間なんかで眠くなれない。
 そして俺は冬眠し損なった熊みたいに、のろのろと包囲磁石の効かない森を練り歩く。意識の中でさま

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あるいは遠くのエピタフ

あるいは遠くのエピタフ

 幼い頃は、愛し愛されればいいと思っていた。少し歳を経ると、セックスすればいいと思っていたし、もう少ししてからは自分の表現を確立できればいいと思っていた。
 まるで駄目だ。
 ただDebussyの月の光を聴いているだけで。
 死しか救いがないという人はいるし、それはかつてないほど正しいのだけれど、だけれど必要なのは老練にて華麗な死であって、何かを成し遂げる前の未熟な逃避としての手段ではない。

 

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somewhere far away

somewhere far away

 明けてゆく東の空で徐々に薄くなってゆく四等星みたいに、あるいはサイドミラーの中で少しずつ遠ざかってゆくナトリウム灯みたいに、淡く融けて、消滅できたらいいのに。
 本当は何もかも全部を覚えていたくて、何もかも全部を知りたくて、でもそれはできないから、少しずつ諦めていくうちに諦める癖がついていって、それで、こんな人間になってしまった。
 きみといる夜も、ただ一人でいる夜も、八日目の月はやはり左側だけ

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不安という機能、猿人のアイデンティティクライシス、信仰と芸術表現の起源。

 以下、親愛なるI氏と話した内容の完全なメモであるが、読者のキミたちにも何かしらの考える契機となることを願って、少しだけキーボードを叩くこととする。

 表現への衝動の根源、ひいてはそれへの焦燥について。
 俺たちはなぜこんなに焦っているのか。早く何かを創出し、何者かになろうとして焦っているのか。毎時何かに追われながらも、それをこなせない己の弱さと怠惰さに幻滅し、憤怒し、失望しているのか。

 そ

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日陰のプラタナス、あるいはタイで事故って入院し、顔を38針縫って全身麻酔した日本人

日陰のプラタナス、あるいはタイで事故って入院し、顔を38針縫って全身麻酔した日本人

 俺は転勤族の生まれで、昔から引っ越しが多かった。
 あのとき「どうしてもここがいい!」と駄々を捏ねていなければ、あのとき「もう一軒だけ見てみようよ」と言っていなければ、あのとき「ここにコンビニあるじゃん」と見つけていなければ、あの家には住まなかっただろう、と小さな頃からよく考えた。
 家が変わっていれば学区も間違いなく変わっていて、だから、今いる周りの友達は違ったはずだった。たぶん歌人や作家など

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ユーラシア大陸を走る食物アレルギー人間のエッセイ、否もう少し散文、よりももっと雑談。

ユーラシア大陸を走る食物アレルギー人間のエッセイ、否もう少し散文、よりももっと雑談。

 赤土の砂埃が道の果てまで舞っている。風を切る。アクセルをひねる。130キロで身体が前のめりに繰りでてゆく。
 路面は整備されていなく、ツルツルのアスファルトの上を赤土が薄く覆っている。前を走るトヨタのハイラックスが砂粒を舞い上げるたび、130キロの飛礫が顔面に降りかかる。生憎、俺のヘルメットはクラッシックタイプだ。顔が痛い。
 ただ砂と排気ガスだけの舞う田舎道を、俺はわざわざ自ら望んで来ている。

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自由意志などの無きことを

 小学生くらいの幼い頃、起きたとき、自分は昨日まで自分だったのか疑問に思うことが幾度かあった。
 俺は、かぱぴーという人間にたった今なって、かぱぴーという人間が歩んできたであろう過去をたった今脳に埋め込まれたのではないか、と。
 本当は自分はさっきまでは存在しなくて、今記憶を持ってここに誕生したのではないか、と。
 それを『世界5秒前仮説』と呼ぶことを知ったのは高校生くらいになってからだったが、幼

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蝉は夏を知らない。

蝉は夏を知らない。

 やあ、今日は話を聞きにきてくれてありがとう。帰りたかったら途中で帰ってくれて構わない。これはあくまでも、そういうものとして聞いてくれればいいさ。え? 田中さんの実家が燃えた? 田中さん、いますぐ帰りなさい。おうちの人が心配してるさ。え? いきなり台詞なのにカギカッコがない? 仕方ない、適当につけておくよ。「」ああ、そういうもんさ。適当に聞いてくれ。

 無知であることは、幸福か。あるいは、好奇心

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ナニモノ⁉︎

 三十一文字で歌うのも、140字で綴るのも、それはそれでいいんだけれど、まだ若いし、溢れて留まらない心の澱は消えないし。
「いつかちゃんと生きたい」って思ったりもするけれど、雨はつめたいし、夜は暗い。
 本音を言うと向いてないんだよね、正直だし。発達障害だし。才能ないし。けど、弱音吐いてる人間が一番つまんない人間だと思うから、まだ死なないでいる。自殺って弱音だから。そう思うことにしてるから。
 定

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