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【6:37の旅立ち】
そのとき綿毛はわたしを呼び止めた
あなたは何処へ向かうのか
わたしは屈んで
しばらく綿毛を見つめる
春の終わりはみんな巣立って
見送るうてなが自慢げに屹立している
うらやましい
わたしは何に縛られているのだろうか
今よりも先へ向かいたい
自分の奥を探りたい
そんな気持ちで
まだ丸いままの子らに
風をおこす
ふっ
巣立ちの慶びに綿毛が舞った
もう一度綿毛はたずねる
あなたは何処へ向かうのかと
めぐる朔
病院を出ると
いつも
月がいる。
一昨日は猫の爪だったのに
今日は瞳になっていた。
一日おきに見るものが
こんなにも
変わるだなんて。
あらわれて
消えるまで
一か月もかかるのに。
こうして
時間はわたしを置いてゆくくせに
時間でわたしは老いていく。
入道雲
虹渡る船あのひとをおもう夏