神野美紀

1971年、大阪出身の現代詩人。 独学で書きはじめ、文学ジャンル以外の様々な場所・方法…

神野美紀

1971年、大阪出身の現代詩人。 独学で書きはじめ、文学ジャンル以外の様々な場所・方法などで、積極的に発表。 最近では、活版印刷の手法を取り入れた作品を多く制作している。

最近の記事

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『砂を並べ生きる(PT)』解説

序文。言葉、そしてコミュニケーション 他者と言葉を交わすとき、そこには必ず『受け取り方』という乖離ができ、理解への溝が生まれる。そしてそれは時として互いの断絶を生み、伝えたかった事は虫食いの穴が空き、意味の通じない文のようになってしまう。 だが、そこでお互いがコミュニケーションという歩み寄りを行うことで、その溝を少しずつ狭めることができる。 そのコミュニケーションの濃度が上がったとき、互いの溝は解消され『伝わる』ようになるのだ。 今回の作品はコミュニケーションを第一テーマ

    • 『武者震いかどうかなんて知るか』解説

      日常の中で何かいつもと違う出来事が起こった時、または能動的にそれを起こす時、その人の心の中では様々な感情が入り乱れているのではないだろうか。 悪い出来事はもとより、良い出来事でさえ、嬉しさの裏側で 「本当にうまくいくのだろうか」 「自分はこの出来事に見合うものを持っているだろうか」 など、不安になる要素は少しでもないだろうか。 そしてそんな時、人はどうするか。 そう、とりあえず己を鼓舞するのだ。それがたとえ空元気でも。 日々はいつでも本番の連続で、どんな小さな出来事であろう

      • 【6:37の旅立ち】

        そのとき綿毛はわたしを呼び止めた あなたは何処へ向かうのか わたしは屈んで しばらく綿毛を見つめる 春の終わりはみんな巣立って 見送るうてなが自慢げに屹立している うらやましい わたしは何に縛られているのだろうか 今よりも先へ向かいたい 自分の奥を探りたい そんな気持ちで まだ丸いままの子らに 風をおこす ふっ 巣立ちの慶びに綿毛が舞った もう一度綿毛はたずねる あなたは何処へ向かうのかと ひと呼吸おいて立ち上がりながらつぶやいた しばらく共にまいりましょう 風に乗る

        • 6:25の結晶

          夜明け前の街灯下で ちらりちらりと雪の落ちるが見える あまりに少ないものだから 自重を支え合い 雪は雪のままで重なり 屈めば 結晶の姿を露わにしたまま きらりと ダイヤより繊細で 雲母より危うい存在を 主張している 僅か数ミリ 樹枝六花 広幅六花 角板付樹枝 樹枝付角板 美しく透明な花には こうして 名前がついている

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        『砂を並べ生きる(PT)』解説

          怠惰の言い訳

          死んだように生きている 定刻通りの予定調和 自分に腹が立って 両手を大きく払って 全部ご破算にしたくて 恥ずかしいやら 情けないやら 猫だけが黙って腹を出す お言葉に甘えて 吸わせてください その腹を 猫の爪が額に食い込んで 叱咤される安心に 胡座をかく

          怠惰の言い訳

          3:50の遊泳

          足の痺れで目覚め 細かな振動が脳へと届き揺れる 布団の中で後ろへ倒れたら 感覚の消失が ブラウン管テレビの電源オフを 忠実になぞる 吐瀉物 発汗 共鳴する振動 意識は刈られ 無重力の夢を泳ぐ 生還できるか 生還できたか 自問自答の雑音に 眩暈が足された刹那 楔が穿たれた

          3:50の遊泳

          自己との対話

          入眠時幻覚 睡夢 明晰夢 自動筆記 私のこころは すべて夜に紡がれるため 支配されている なぜか? 理性のたがを外すためだ

          自己との対話

          めぐる朔

          病院を出ると いつも 月がいる。 一昨日は猫の爪だったのに 今日は瞳になっていた。 一日おきに見るものが こんなにも 変わるだなんて。 あらわれて 消えるまで 一か月もかかるのに。 こうして 時間はわたしを置いてゆくくせに 時間でわたしは老いていく。

          めぐる朔

          わたしはくまになる

          夫婦は家族へと質を変えたが イタズラは今も続いている 性の煩わしさからスッカリ解放された夫に 寝顔で天下無双される日も少なくない この日 私はリラックマになった なんだ、満喫しているじゃないか 写真のポーズが語りかける そのとき私がどんなに息苦しく眠っていたか 知りもしないで だがまあ 人と会うときはこのクマに頼ってみるのもアリだろう まるで誂えたようなフィット感なのだしね

          わたしはくまになる

          猫耳

          通院日こわいこわいとイカの耳 猫は怖がっているとき、耳がイカのようになります。

          ハンバーグ

          「しんどいねん…」私がポツリと言ったから 今日は夫がチャチャっとごはん

          ハンバーグ

          やつあたり

          寝付けない夜 時計の音ばかりが大きくて 時間が急流のように 私の前を通り過ぎる 寝られない時は 気付けばいつも朝だ くやしいから 夫の鼾に 心の中でゲンコツひとつ

          やつあたり

          カササギ橋

          七夕夜はれを願うも雨降りて 橋のカササギ涙に濡れる

          カササギ橋

          遊びごころ

          夏にそなえ蚊遣り線香、蚊帳をだす 大人の密かな独り寝の基地

          遊びごころ

          ほうせんか

          こいごころ ふれてはじける ほうせんか

          ほうせんか

          入道雲

          虹渡る船あのひとをおもう夏