記事一覧
海のピ(山のポ)(#毎週ショートショートnote)
今日もニュースでは「海のピ」の話題が中心だった。
「地球温暖化のせいでしょうか、今年も日本近辺の海には「ピ」が大量発生しています。繰り返します、海のピが大量発生しています。生態系に何らかの影響を及ぼすものと思われます」
日本近辺には、近年未確認生命体である「海のピ」が大量発生していた。しかし、その姿形はわからず、「ピ、ピ」と音がするだけであるが、明らかに生態系を大きく変えており、魚種により
天ぷら不眠(#毎週ショートショートnote)
眠れない時には、布団に入り、羊の数を数えるといいと聞いた。
「羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹・・・・羊が三百二十九匹・・・」
全然眠れやしない。動物をえてみよう。
「鶏が一羽、鶏が二羽、鶏が三羽・・・・鶏が四百三十一羽・・・」
ダメだ、鶏は朝、おはようのコケコッコーだ。鶏じゃない、野菜にしてみよう。
「サツマイモが一個、サツマイモが二個・・・・サツマイモが五〇個・・・」
なんか違
友情の総重量(#毎週ショートショートnote)
高校を卒業し、30年。
男子校で幹事を引き受けるようなまとめ役がいなかったからか、同窓会も開かれず、卒業式以来の再会。クラス45人中、30人くらいは集合した。
田舎の進学校だったこともあり、自分も含め、クラスメイトの大半は東京や関西の大学に進学した。何人かと年賀状のやり取りこそあったが、こうやって再会する機会はなかった。
「本当に久しぶりだな、変わっていないな」
「今、どこで働いてんのよ」
てるてる坊主のラブレター(#毎週ショートショートnote)
「マスター、いつものモーニング、お願い」
土曜の朝のルーティン、行きつけの喫茶店でのモーニング。マスターは白髪頭でいつも穏やかだ。
「マスター、何?あのてるてる坊主?」
窓辺に少し大きめのてるてる坊主。
「孫が明後日、遠足なんだよね。天気予報わるいでしょ。だから店にてるてる坊主つるせって」
「懐かしいね、私も昔よくつくった」
マスターが淹れてくれた珈琲を一口、いつもの苦みだ。
「さっちゃ
放課後ランプ(#毎週ショートショートnote)
「神谷、ちょっと話あるんだけど、放課後理科室に来てよ」
中学二年の夏休み前、谷島智子に声をかけられた。矢島のことは前から気になっていた。バレー部のエースで運動神経がいいところ、誰とでもフラットに話すところ、でもクラスでは決して1軍ではないところ。
理科室にはアルコールランプが一つ。誰かが片付けるのを忘れたんだろう。引き出しからマッチをとり、火をつける。オレンジ色の炎が揺らぐのをしばらく眺めてい
春ギター(#毎週ショートショートnote)
公園の桜は満開だ。
赤ら顔で缶ビール片手にはしゃぐ彼らは会社の仲間だろう。
とても楽しそうだ。
シートの上で二人の世界に入って語り合うカップル、とても幸せそうだ。
ゆっくりな足取りで散歩するおじいちゃんとおばあちゃん。
桜の花はみんなを幸せにしてくれる。華麗に咲いて、惜しげもなく散る桜。この世に未練を感じさせないのも桜の魅力かもしれない。
花見の喧騒の中、僕は毎年ギターを弾いている。
深煎り入学式(#毎週ショートショートnote)
桜が満開の入学式。
3人のピッカピカの一年生が15人のお兄さん、お姉さんに迎え入れられた。
この古びた木造校舎での最後の入学式。
翌年からは隣町の小学校に統合される。
「●〇小学校に入学したことをうれしく思います」
ボクが代表で読み上げた。
児童の数より、倍の数の大人がいる入学式。
1年間だけだったが、夏には蝉の鳴き声を聞きながら、汗だくで受ける授業。
冬には隙間風で寒かったけど、ヤカンをの
三日月ファストパス(#毎週ショートショートnote)
「亡くなったら、三日月様を滑り台のように滑って、飛んでお星様になるんだよ、そうあの星がおじいさん。」
小さい頃、三日月を見ながら祖母から聞いた話。
思い出はもっとたくさんあったけど。これだけは鮮明に覚えている。
今日、会社からの帰り道、見知らぬ男の人から「三日月ファストパス」を書かれた一枚の紙をもらった。
「お急ぎなら、どうぞ使ってください」
別に何も急いでいないんだけど・・・
洞窟の奥はお子様ランチ(#毎週ショートショートnote)
半年に一度、百貨店のレストランでお子様ランチを食べ、屋上の遊園地で遊ぶのが唯一の贅沢だった。
しかし、その百貨店は10年前に閉店した。
都会ではITバブルやら、リーマンショックやら、景気に波があり、好況だった時もあるようだが、地方経済は40年失われたまま。
洞窟の中を歩くように毎日もがきながら生きてきた。
昔夢中になったロールプレイングゲームのように、黙々と仲間と作業をこなし、苦労を
行列のできるリモコン(#毎週ショートショートnote)
とある街の古びた電気店に長い行列ができていた。
どうやらリモコンを売っているらしい。
「購入の際には申込書に氏名、生年月日を記入の上、身分証明書をご用意してお待ちください」
看板にそう書かれていたので、気になって申込書を手に取り、行列に並んだ。
ようやく手に入れたリモコンを手に取ると1から86までの数字が書かれたボダン。
試しに27のボタンを押してみる。
15年前の結婚式の様子が頭の中に鮮
アメリカ製保健室(#毎週ショートショートnote)
20●●年
体育の時間にけがをした生徒が保健室で手当てを受けながら保健室での会話
A:3年前に○○市にできた新しい高校はアメリカ製らしいぞ
B:それはインターナショナルスクールってこと?
A:いや違う、設備や教室、体育館、全てがアメリカ製らしいんだ、
教育方針もアメリカナイズされていて、将来の一攫千金を夢見て、
多くの学生が門をたたいているらしい
B:へぇ~
A:ITもスポーツの教育も盛
ドローンの課長(#毎週ショートショートnote)
テクノロジーの世界にも年故序列があるらしい。
1月からドローンが課長に昇進した。
社長はガラケー、専務にはスマホ、部長にはエコカーがそれぞれ就任した。
それでもドローンは誕生から管理職就任まで異例の早さと言われていた。
しかし、物事を俯瞰できる能力を持っているうえに、モノを運ぶことのできる機動性などを高く評価されてのことであったと言われている。
とは言えども20世紀に誕生したガラケ
会員制の粉雪(#毎週ショートショートnote)
「クラブ雪(会員制)」
一代で身を興した成功者で、既存会員2名以上の紹介がないと入れないといわれるクラブ。このクラブの会員になると一生成功者であり続けることができるといわれている。
今日が俺の「クラブ雪」デビューの日だ。
生まれも貧しかったし、これまで苦しかった。やっと気合と根性でここまで来た。俺も一流の仲間入りだ。
いよいよクラブ雪の扉を開ける。
粉雪がパラパラ待っている。何故だ
夜光おみくじ(#毎週ショートショートnote)
事業を興して3年、全くうまくいかない。借金も返済の目処がつかない。この状態で年を越せたというのか、いや一般的には言わないであろう。
年末も会社に泊まり込み。この仕事が本当に金になるかわからない。3月までに動きがなければ、倒産かな?
元旦らしく雪が降ってきた。近くの神社に初詣とするか。
雪か降っているせいか、初詣の参拝客がいない。
ポケットに入っていた5円、賽銭箱に押し込んだ。今年はいい
台にアニバーサリー(#毎週ショートショートnote)
1学年後輩のアイツはいつも表彰台で輝いていた。
練習している姿はほとんど見かけなかった、大会になるといつもずば抜けた演技で衆目を集め、颯爽と表彰台に登る。
それに比べ、オレはいくら居残り練習をしても表彰台にはかすりもしなかった。
最後の大会もいつも通りに終わった。今日でオレら3年は引退し、受験勉強に追われる日々になる。
「努力は報われる」それが嘘であったことを証明したような2年半だっ
白骨化スマホ(#毎週ショートショートnote)
「デカ長、お疲れ様です」
若い刑事は、デカ長が現場に到着すると浅く敬礼し、黄色い規制線を上げた。
「マルガイは白骨化しているのか」
「はい、最後のシャットダウンから、半年は経過しているものと思われます」
全員で一度手を合わせてから、若い刑事が白い布をめくった。
「また、AI搭載型か、ここのところ続いているな」
「デカ長、やはりAI部分だけ取り去れていています」
「今月、うちの管内でこの手のマ