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友情の総重量(#毎週ショートショートnote)

 高校を卒業し、30年。
 男子校で幹事を引き受けるようなまとめ役がいなかったからか、同窓会も開かれず、卒業式以来の再会。クラス45人中、30人くらいは集合した。

田舎の進学校だったこともあり、自分も含め、クラスメイトの大半は東京や関西の大学に進学した。何人かと年賀状のやり取りこそあったが、こうやって再会する機会はなかった。

「本当に久しぶりだな、変わっていないな」
「今、どこで働いてんのよ」
「今日、来てないけど、隆はシンガポールに移住したらしいよ」

ホールでは再会を懐かしむ声。それぞれの近況を聞くと、高校の頃から結婚しなそうなヤツはやっぱり独身で、絶対不倫すると思っていたヤツは不倫していて、禿げそうなヤツはやっぱり禿げていて。

「変わらない」という言葉ってこのためにあるのかと思った、カズ、お前以外な。

告別式に向かうエレベーターには集まったクラスメイトの三分の一も乗れず、ブザーが鳴った。

カズ、オレらの友情の総重量はわからないけど、重かったぞ。
安らかに。

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