亀井 孝のアーチェリーノート

アーチェリー選手 亀井孝の娘「Ai」のnote。 2021年8月4日、父が大怪我を負…

亀井 孝のアーチェリーノート

アーチェリー選手 亀井孝の娘「Ai」のnote。 2021年8月4日、父が大怪我を負いました。言葉足らずで不器用な父から毎日届くメールを記録するアカウントです。

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記事一覧

Precision Shooting Equipment

Pete Shepley には娘さんと二人の息子さんがいるのですが、今回案内してくれた2番目のJon はPSE で働いています。そこでPeteとJon からいろいろな話を聞いたのですが、い…

2005年クリスマスイブ

これは誰でしょう?! コンパウンドアーチャーなら、彼を知らなければ、モグリですよ。 1969年12月20日に成立したAllenさんのコンパウンドボウの特許ですが、これが成立…

Earl Hoyt Jr. 1911-2001 Ann Weber Hoyt 1922-2008

ホイットおじさんも、ホイットおばさんも亡くなってしまいました。憧れのEarl Hoyt Jr.、Ann Weber に初めて会ったのは、1976年の全米選手権でした。1982年の全米選手権ま…

HOYT/EASTON

Hoytは、すでに「Record Holder」の名を手にしていました。日本が初めて参加した1967年Amersfoort世界選手権 Ray Rogers、1969年Valley Forge世界選手権 Hardy Ward、1971…

「Take Down」百弓繚乱

昔、ワンピースボウの時代、タクシーを止めるのも大変でした。止まってくれないのです。そして、やっとの思いで止めたタクシーに、弓を乗せるのも一苦労でした。助手席の窓…

形あるものは、いつか崩れる。

ハンドルが折れるのは、リムほどよくは見かけません。では折れないかというと、そうではありません。それに、折れなかったとしても、アーチャーには分からなくとも、曲がっ…

ツイストというネジレ

リムのトラブルで最悪は「折損」と「剥がれ」で、これが起これば叫ぶのは別にして、リムはその場で使用できなくなります。しかし、これ以外にもリムのトラブルはあります。…

折れたからって、叫ぶんじゃねえ!

性能以前かもしれませんが、弓には「耐久性」という性能があります。速い球が投げられても、コントロールが良くても、続かなければ壊れては仕方がありません。 リムが「壊…

スピードという性能

リムの「性能」とは、何でしょう? 引きが柔らかい。スムーズである。狙いやすい。射ちやすい。。。どれもが性能ですが、その場で射ち比べる、引き比べるならともかくとし…

そこに愛はあるのか?

2000年までのアマチュアは金銭はもちろんのこと、弓具の提供も無償で受けることはできませんでした。プロフェッショナルとみなされたのです。そんな中で、ヤマハから弓を貰…

平等院と折り詰め弁当

縁あって日本で五本の指に入るであろう、宮大工の棟梁と飲む機会に恵まれました。一見話の接点がなさそうなのですが、棟梁は昔あったという60mにも及ぶ七重の塔を再建する…

タイカンって?

「体幹」。この言葉の意味を、健常者は理解していません。健常者が理解していないことを、障がい者は知ったうえで健常者と話しています。そして障がい者は健常者にそのこと…

芯材

今のリムは「芯材」の種類によって、木芯「ウッドコア」と発泡材「フォームコア」に大きく分けられます。オールカーボンリムと呼ばれても、カーボンだけではなく、芯材とい…

Aiming for the Best

だいぶ以前に書いた本ですが、憧れであり目標であったダレル・ペイスについて、彼の射形の写真171枚を使い書いた、レベルアップマニュアルです。 そして今回、このよう…

世界初の白塗りカーボンリム

世界初の「カーボンリム」が登場したのは、いつか? というと、1976年のモントリオールオリンピックです。まだインターネットのない時代、新商品を宣伝する最大の舞台は世…

あの時君は白かった

アーチェリー発祥の地は、ロビン・フッドの国イングランド。アーチェリーは「貴族のスポーツ」です。 ここで始まったアーチェリーは、テニスの全英選手権同様「上衣はアー…

Precision Shooting Equipment

Pete Shepley には娘さんと二人の息子さんがいるのですが、今回案内してくれた2番目のJon はPSE で働いています。そこでPeteとJon からいろいろな話を聞いたのですが、いかに我々の住んでいるアーチェリーの世界、それもターゲットを中心にした世界がマイナーであり、小さいかを痛感させられました。それをこの紙面、あるいは言葉だけで説明するには限りがあるのですが、たとえば翌々日の26日にクリスマス休暇中のPSE本社を案内してくれました。 PSE はアーチェリー業界に

2005年クリスマスイブ

これは誰でしょう?! コンパウンドアーチャーなら、彼を知らなければ、モグリですよ。 1969年12月20日に成立したAllenさんのコンパウンドボウの特許ですが、これが成立した時、Allenさんは5つのメーカーに特許の使用を認めました。そして当時から現在まで、一貫してコンパウンドボウを作り続けているのは、唯一「PSE」(Precision Shooting Equipment)社だけなのです。そしてPSEは、アメリカ最大のアーチェリー用品メーカーに成長しました。 そんな P

Earl Hoyt Jr. 1911-2001 Ann Weber Hoyt 1922-2008

ホイットおじさんも、ホイットおばさんも亡くなってしまいました。憧れのEarl Hoyt Jr.、Ann Weber に初めて会ったのは、1976年の全米選手権でした。1982年の全米選手権まで、毎年顔を合わせていたのですが、クリスマスカードが来なくなって久しく、ふと思い出すことがあったのですが、やはり残念です。 彼らは Fred Bear、Howard Hill、Doug Easton、Pete Shepley らと並ぶ、アメリカのアーチェリーを築いてきた伝説のアーチャーです

HOYT/EASTON

Hoytは、すでに「Record Holder」の名を手にしていました。日本が初めて参加した1967年Amersfoort世界選手権 Ray Rogers、1969年Valley Forge世界選手権 Hardy Ward、1971年York世界選手権 John Williams と伝説のアーチャーたちはすべて、木製ワンピースモデル ProMedalist 「4PM」「5PM」を使って、世界記録とともに、世界をリードし、1972年からは、テイクダウン「TD1」で世界の頂点に立

「Take Down」百弓繚乱

昔、ワンピースボウの時代、タクシーを止めるのも大変でした。止まってくれないのです。そして、やっとの思いで止めたタクシーに、弓を乗せるのも一苦労でした。助手席の窓を開けてもらい、そこから弓を差し込んで運転席との間に載せてもらいます。アローケースはそれとは別に、後ろのトランクです。そして運転手さんには嫌な顔をされて、「編物機ですか?」と言われるのです。 ワンピースボウのデメリットは、それだけではありません。弓が折れれば、別の弓を使わなければなりません。グリップも違えば、ポンドもテ

形あるものは、いつか崩れる。

ハンドルが折れるのは、リムほどよくは見かけません。では折れないかというと、そうではありません。それに、折れなかったとしても、アーチャーには分からなくとも、曲がったり、捻じれたりするハンドルもあります。 先に言っておきますが、「形あるものいつかは崩れ」ます。この世の中に「永遠」などはないのです。ただし、どこで壊れるか、いつ折れるかは重要です。 最近では「金属疲労」という言葉が浸透したお陰で、金属は折れない、大丈夫といった神話を信じる人も少なくなり、ハンドルもいつかは折れる、永遠

ツイストというネジレ

リムのトラブルで最悪は「折損」と「剥がれ」で、これが起これば叫ぶのは別にして、リムはその場で使用できなくなります。しかし、これ以外にもリムのトラブルはあります。「ネジレ」と「センターズレ」と「ツイスト」です。ところが、昔、ワンピースボウから2000年頃までのテイクダウンボウの時代には、リムとハンドルはセットで、接合部は動きませんでした。そのためトラブルはリムあるいはその弓が持つ不良でした。ところが接合部が動くようになってからは、これらのトラブルがリムの持つ不良なのか、接合位置

折れたからって、叫ぶんじゃねえ!

性能以前かもしれませんが、弓には「耐久性」という性能があります。速い球が投げられても、コントロールが良くても、続かなければ壊れては仕方がありません。 リムが「壊れる」ことは、あまり知られていないというか、隠されるために見過ごしがちですが、折れたり剥がれたりするリムは、あなたが思う以上に世の中にはたくさんあるのです。あまり認識がないかもしれませんが、アーチェリーのリムほど湾曲、変形、復元し、そこから性能を得るという道具は少ないのです。テニスラケットやスキー板と比べても、リムがど

スピードという性能

リムの「性能」とは、何でしょう? 引きが柔らかい。スムーズである。狙いやすい。射ちやすい。。。どれもが性能ですが、その場で射ち比べる、引き比べるならともかくとして、あまりにも主観的すぎて、比較のしようがありませんが、そんな中でも「速く飛ぶ」という、誰もが重要視する性能があります。 「矢速」です。同じ36ポンド表示のリムであれば、より速く飛ぶリムの方が、性能的に勝るのは誰もが理解できるはずです。身体への負担が同じでも、速く矢が飛べば、滞空時間も短く、弾道も低くなり、風などの外的

そこに愛はあるのか?

2000年までのアマチュアは金銭はもちろんのこと、弓具の提供も無償で受けることはできませんでした。プロフェッショナルとみなされたのです。そんな中で、ヤマハから弓を貰っていた選手たちがいました。実はあれは、貰っていたのではなく借りていたのです。ヤマハはそれらの選手から借用書と報告書を受け取ることで、全ア連とも承諾のうえで弓を貸していました。日本を強化し、弓を実射テストし、宣伝するための「選手対策」です。 1976年モントリオールオリンピックで白塗りのホイットを使ったダレル・ペイ

平等院と折り詰め弁当

縁あって日本で五本の指に入るであろう、宮大工の棟梁と飲む機会に恵まれました。一見話の接点がなさそうなのですが、棟梁は昔あったという60mにも及ぶ七重の塔を再建することと、自分が育てた弟子を世界一にすることが夢だ、ということで話は盛り上がりました。そして話は、矢作りから最後は自然の木の形状を生かしてのリム作りにまで及びました。 そんな中で、「木造建築で一番素晴らしいものは?」と聞いたところ、棟梁はなんと答えたと思いますか。内心、東寺の五重塔か奈良の法隆寺あたりかと期待していたの

タイカンって?

「体幹」。この言葉の意味を、健常者は理解していません。健常者が理解していないことを、障がい者は知ったうえで健常者と話しています。そして障がい者は健常者にそのことを指摘しません。しかし障がい者同士は、健常者が理解していないことも、障がい者同士が同じ認識でしゃべっていることも分かっています。 だから普通の健常者は障がい者に向かって「体幹」という言葉を、無責任に使うべきではありません。あなたは何もわかっていないのですからです。 「タイカンをきかせる」「タイカンがきかない」「タイカ

芯材

今のリムは「芯材」の種類によって、木芯「ウッドコア」と発泡材「フォームコア」に大きく分けられます。オールカーボンリムと呼ばれても、カーボンだけではなく、芯材という部分の両側にCFRPが貼り合わされています。 では、なぜ芯材があるのかというと、いくつかの理由があるのですが、例えば芯材のないCFRPだけでリムを作ったら、どうなるでしょうか? 40ポンドのリムでも、厚さはプラスチップ下敷き程度の非常に硬い、非常に薄っぺらいリムになります。リムとしては使い物になりません。ところが、そ

Aiming for the Best

だいぶ以前に書いた本ですが、憧れであり目標であったダレル・ペイスについて、彼の射形の写真171枚を使い書いた、レベルアップマニュアルです。 そして今回、このようにnoteでアーチェリーの話を書いているのは、もう一冊書こうと思ったのですが、その前の下書きとしてエイミング フォァ ザ ベストの「行間」を埋めてみようと考えたことがありました。 その意味で、ぜひエイミング フォァ ザ ベストを読んでいただいたうえで、このnoteを見ていただければ、よりアーチェリーが面白くなるかと思い

世界初の白塗りカーボンリム

世界初の「カーボンリム」が登場したのは、いつか? というと、1976年のモントリオールオリンピックです。まだインターネットのない時代、新商品を宣伝する最大の舞台は世界選手権と1972年に始まったオリンピックでした。ここで商品をデビューさせ、それが優勝や世界記録を樹立すれば、これほど大きな宣伝効果はなく、商品は一気に世界に広まるのでした。 そこでどのメーカーもこのイベントに合わせて商品の開発を行うのですが、当時プロフェッショナルはいませんでした。原則、アマチュアは金銭の授受はも

あの時君は白かった

アーチェリー発祥の地は、ロビン・フッドの国イングランド。アーチェリーは「貴族のスポーツ」です。 ここで始まったアーチェリーは、テニスの全英選手権同様「上衣はアーチェリー競技のユニフォームとして適したものであり、下位は男子は白のスラックス、女子は白のスカート又は白のスラックスを着用する。」という競技規則に準じ、暗黙のうちに帽子から靴まで、すべて白でシューティングラインをまたぐことが、長い間義務付けられてきました。男子の短パン、女子のキュロットさえダメでした。それに色が付いたのが