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世界初の白塗りカーボンリム

世界初の「カーボンリム」が登場したのは、いつか? というと、1976年のモントリオールオリンピックです。まだインターネットのない時代、新商品を宣伝する最大の舞台は世界選手権と1972年に始まったオリンピックでした。ここで商品をデビューさせ、それが優勝や世界記録を樹立すれば、これほど大きな宣伝効果はなく、商品は一気に世界に広まるのでした。
そこでどのメーカーもこのイベントに合わせて商品の開発を行うのですが、当時プロフェッショナルはいませんでした。原則、アマチュアは金銭の授受はもちろん、商品の提供を受けることも許されませんでした。そんななかでダレル・ペイスはホイットのテイクダウン「TD 2」に、それまで誰も見たことのないリムを装着し、登場したのです。そしていとも簡単にゴールドメダルを持ち帰りました。これほどの宣伝効果はありません。これによって世界は一気にカーボンリムの時代に変わりました。

真っ白に塗られたリムを除けば、
あまりにもチャンピオンの弓らしくない装備です。

ダレル・ペイスはアマチュアとはいっても、自らがホイットの弓をワンピースボウの頃から愛用していました。しかしこの時のリムは、真っ白に塗られた「プロトタイプ」のカーボンリムでした。プロトタイプとは、試作品であり、最終の商品ではありません。ある意味テスト中のリムです。
ワンピースボウの時代から、サイド面を隠した商品はありませんでした。当時の弓は最終工程として、透明のクリア塗装を全体に吹き付けました。この時リムの表面はもちろん、サイド面は削られているので、必ず弓の中身が見えます。その弓が構成されている、芯材、FRP、CFRPの種類や積層の順番や厚さが見えるのです。ところがカーボンリムというこのリムは、白い塗料でサイド面まで塗装されているので、中身が見えないのです。

全米選手権で同じ白い弓を持ち、ホイットおじさん、
ホイットおばさんと談笑するダレル・ペイスです。

ゴールドメダルをアメリカに持ち帰った翌週、全米選手権でこの弓を触らせてもらったのです。失礼な言い方ですが、素人には分かりませんが、持って、触って、引いて、ひねれば、中身は見えなくても想像が付きます。CFRP が入ったリムで、繊維は一方向のみです。ただこれだけははっきり感覚が記憶しているのは、このリムは1年後に市販されたホイットのカーボンリムとは全く違うカーボンリムでした。そしてこの年、1977年にヤマハも世界初のカーボンリムを発売するのです。

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