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平等院と折り詰め弁当

縁あって日本で五本の指に入るであろう、宮大工の棟梁と飲む機会に恵まれました。一見話の接点がなさそうなのですが、棟梁は昔あったという60mにも及ぶ七重の塔を再建することと、自分が育てた弟子を世界一にすることが夢だ、ということで話は盛り上がりました。そして話は、矢作りから最後は自然の木の形状を生かしてのリム作りにまで及びました。
そんな中で、「木造建築で一番素晴らしいものは?」と聞いたところ、棟梁はなんと答えたと思いますか。内心、東寺の五重塔か奈良の法隆寺あたりかと期待していたのですが、意外にも答えは、宇治の平等院だと熱く語ってくれるのです。10円玉の表に刻まれているあれです。そのかたちといい、技といい、素材を選ぶ目や使い方など、どれをとっても世界に誇れる最高の建築物だと言うのです。

平等院鳳凰堂、
ウチから車で30分も掛からないところにあります。

平等院はいつ建てられたか知っていますか? ちょうど2012年には、平成の大修理が終わったところで、これまでには何度か解体修理は行われていますが、平等院は1052年(永承7年)関白藤原頼通によって開創され、鳳凰堂はその翌年の1053年(天喜元年)、阿弥陀如来を安置する阿弥陀堂として建立されました。ということは、ほぼ1000年前に建てられたものが、風雨や陽にさらされながらも同じ場所に今もこうして残っているのです。

コンビニの折り詰め弁当を思い出してください。折箱の枠には、発泡スチロールの板が巻かれています。これを両手にとって曲げていってください。ある程度曲げると、パキッと折れるはずです。反発力も耐久性もありません。では最近は少ないのですが、折箱の折ぶたに使われていた、木製の薄い板を思い出してください。この板は曲げても折れないばかりか、復元し反発力もありました。
最近は廃棄されたプラスチックが問題になっていますが、プラスチックや発泡スチロールが100年生きるでしょうか。木が腐ったり曲がったりするように思われがちですが、天然素材に勝る人工素材はないのです。

ところで、英語で芯材を「Core」と呼びます。ではリムの付け根にある、CFRPと芯材に挟まれた、クサビのような形をしたこの部分を何と呼ぶでしょうか? 知らないでしょう。

ここを英語では「Butt」というようですが、ヤマハでは「スカーフ芯」と呼んでいました。昔はここも木でできていましたが、最近は樹脂にとって代わるモデルが増えてきました。それだけではなくデザイン優先で、差し込み部分全体の厚さを薄くするモデルも増えています。しかし見れば分かるように、スカーフ芯はリム全体の反発力を支え、発揮する重要な部分であると同時に、ハンドルとの接合部分としての精度が求められる部分でもあります。素材もそうですが、寸法的にもリムをしっかりと支える必要があります。にもかかわらず、アーチャーはここの呼び名も知らないほどに注意を払っていないのです。

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