見出し画像

芯材

今のリムは「芯材」の種類によって、木芯「ウッドコア」と発泡材「フォームコア」に大きく分けられます。オールカーボンリムと呼ばれても、カーボンだけではなく、芯材という部分の両側にCFRPが貼り合わされています。
では、なぜ芯材があるのかというと、いくつかの理由があるのですが、例えば芯材のないCFRPだけでリムを作ったら、どうなるでしょうか? 40ポンドのリムでも、厚さはプラスチップ下敷き程度の非常に硬い、非常に薄っぺらいリムになります。リムとしては使い物になりません。ところが、そこに芯を入れることで、リムに「コシ」が生まれます。硬過ぎず、ペラペラ過ぎず、厚さがあり、しなやかに安定するというわけです。例えば、リムの中の芯材の厚さを見てください。どの程度カーボンがそのリムに寄与しているかが想像できます。引いている強さが40ポンドなら、それがカーボンの強さなのか、芯材の硬さなのかというわけです。

同じポンドであれば芯材が薄い方が、CFRPやFRPが寄与しています。
しかし、それは性能が勝るということではありません。

昔、グラスリムの時代から1996年のアトランタオリンピックの頃まで、リムの芯材はウッドコアしかありませんでした。そんな時代、ヤマハは一貫して芯材には「カエデ」(メープル)の「1枚板」を使っていました。カエデは、木目が詰まり強度もあり、軽く狂いが少なく、反発力があり、接着強度が高い素材で、スポーツ用品だけでなく、家具や楽器にも多用される木です。そんな最高の素材を、ヤマハはピアノの木材を保管する天竜工場にたくさん持っていました。
ところが、ヤマハ以外のメーカーは国内外を問わず、そのような最高の素材を入手することが徐々に困難になっていきます。そこで最初はカエデを使っていたホイットをはじめとするメーカーも、仕方なく油分の多いヒッコリーを使ったり、一枚板でなく何枚かを樽のように貼り合わせで使うように変わっていきました。しかし、それすら困難なメーカーは、発泡材をコアにするように変わっていったのです。

Archery bow limb constructed of syntactic foam
US4819608A

初めての発泡材リムは、1987年に HOYT/EASTON により申請がなされた「Syntactic Foam」に由来します。しかしそれは、必ずしも性能から生まれたのではなく、必然の結果だったのです。しかし、軽さと強度は持ち得ても、当初発泡材と接着剤における接着技術においては問題が生じました。

そこで最近、バンブーコア「竹芯」なるものが登場しました。確かにそれは反発力がありそうで、折れにくそうで、天然素材で、セールストークになります。しかし、日本人ならテレビで観たことはありませんか。弓師がニカワを塗って、麻紐で縛り、くさびを打ち込んで和弓の弓を作るのを、観たことがあるはずです。微調整は炭火で固まったニカワを温め、新たにクサビを打ち込んで行っていきます。
カエデが芯材として優れるのは、反発力や強度、軽さだけではなく、接着剤との相性の良さがあります。それに比べて発泡材は接着剤を吸い込んでしまったり、逆に竹ほど接着剤が乗らない貼り合わせ難い素材はないのです。そんな素材だからこそ、話題にはなっても、知らない間に剥がれて、消えていくのです。それにアメリカに竹はあるのでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?