【コメ不足問題はアメリカが日本の官僚とメディアを支配して作り上げたものだった!】米国にとって日本は「食料植民地」!~日本の食料自給率向上を「米国が絶対許さない」訳~
【コメ不足問題はアメリカが日本の官僚とメディアを支配して作り上げたものだった!】米国にとって日本は「食料植民地」!~日本の食料自給率向上を「米国が絶対許さない」訳~
■かつて極めてSDGs的だった日本の食を取り戻せるのか?
共同通信 2022年11月2日
https://www.kyodo.co.jp/life/2022-11-02_3730977/
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かつて日本の食は極めてSDGs(持続可能な開発目標)的だった。
だが今やそれも昔の話。
食はすっかり欧米化し、食料自給率も不測の事態に対応できないほどの低さになってしまった。
果たして日本は安心、安全で持続可能な食を取り戻すことができるのか?
10月下旬に東京・中野の「なかのZERO」で開催された「全国オーガニック給食フォーラム」で東京大学大学院農学生命科学研究科の鈴木宣弘(すずき・のぶひろ)教授(農業経済学)からは刺激的かつ啓蒙(けいもう)的な話が飛び出した、
「かつての日本、例えば江戸時代の農業は循環型で、食もそれに準じた姿でした。いったい、いつから日本人の食生活は大きく変わってしまったのでしょうか?」という問いから鈴木教授は「学校給食が国民の未来を守る」と題したスピ―チを始めた。
「日本の食生活形成には米国の意思が大きく関与しています。米国は(第2次大戦後の)占領政策として、本国で余った農産物を日本人に食べさせようとしたのです。米国産小麦を食べさせたいので、日本のコメが邪魔だった」と鈴木教授。
当時、ある医学部教授が「コメを食うとバカになる」という本を書き、初めはまゆつばものだと思われたものの、徐々に「信用」されるようになった、と鈴木教授はいう。
「日本人を肉食化するキャンペーンが米国の予算で仕組まれるなどして、日本人の食生活は改変させられ、日本人は米国農産物への輸入依存症となったのです」。
そして「極めつけは学校給食でした。まずいパンを食わされ、半分腐ったような脱脂粉乳を飲まされ、伝統的な食文化が一変させられた」と鈴木教授は語った。
米国の占領政策、洗脳政策は子どもたちをターゲットにしていたのだという。
鈴木教授はいう、「アメリカの思惑を排除して、子どもたちの未来を守る。学校給食からやられてしまったのだから、それを守らなければならないということなのです」。そして鈴木教授がまず守らねばならないとしたのが「安全な在来種子」だ。2018年4月1日、主要農産物種子法が廃止された。このいわゆる種子法は、戦後の食糧難などを背景に、「主要農作物であるコメや大豆、麦など野菜を除いた種子の安定的生産及び普及を促進するため」に制定された法律だった。
だが、日本政府は「種子法は現代においてその役割を終えている」として廃止に踏み切った。
この動きは、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)やRCEP(東アジア地域包括的経済連携)といった貿易自由化の動きと軌を一にしていた。
かつて日本人の食生活に米政府が横やりを入れた背景にはグローバル穀物商社・食品企業の存在があったと鈴木教授はいう。
「今、ゲノム編集作物で再び同じことが行われようとしています。(グローバル種子企業は)ゲノム編集トマトの苗を無償で配って子どもたちを実験台にするつもりだと国際セミナーで発表したくらいです」。
実際、子どもたちを標的にゲノム編集トマトの「啓蒙普及」が開始されているという。
予期せぬ遺伝子損傷の可能性も指摘され、従来の遺伝子組み換えと同等の審査・表示を課す国がある一方で、日本は「届け出のみ、表示なし」での流通が始まっている。
鈴木教授によると、消費者の不安を和らげ、スムーズに受け入れてもらうために、販売企業はゲノムトマトの苗をまず家庭菜園、障害児福祉施設に配布し、来年から小学校に無償配布し普及させるという。
そのような状況下、まずは学校給食を守り、子どもたちを守るところから始めないといけない、と鈴木教授は力説する。
「学校給食の食材調達については、各自治体の条例制定などによってトータルな仕組みを作っていくことが重要です。それで地元のおカネが足りなかったら、国が補填する仕組みを考えていけばいい」と鈴木教授は続けた。
「子どもを守る政策は社会全体の幸せにつながります。波及効果は大きいし、費用対効果も大きい。そのことをもう一度確認する必要がある」と鈴木教授は力を込める。
「国が全国の小中学校給食を無償化するのに必要なコストは5,000億円弱。一方で、ファントム戦闘機を購入するのに6兆円使ったのです」と鈴木教授は皮肉を込めていう。
「現在の状況が続けば、半年で日本の農家は4割減ってしまう。子どもを守るには国家戦略としてトータルな政策が不可欠です」
「学校給食を通して、安全安心な食を提供することで子どもたちの健康を守れると同時に、農家にとっても大きな需要先となるのです」
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かつて極めてSDGs的だった日本の食を取り戻せるのか?
共同通信 2022年11月2日
https://www.kyodo.co.jp/life/2022-11-02_3730977/
■【食料・農業問題 本質と裏側】「標的」は日本人?
JAcom 農業協同組合新聞 2020年2月20日 【鈴木宣弘・東京大学教授】
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・使い分けるオーストラリア
先日、あるセミナーの開会のご挨拶で「ヨーロッパでは米国の牛肉は食べずに、オーストラリアの牛肉を食べています」と紹介して下さったので、そのあとの私の話の中で、次のことを補足させてもらいました。
「日本では、米国の肉もオーストラリアの肉も同じくらいリスクがあります(ホルモン・フリー表示がないかぎり)。オーストラリアは使い分けて、成長ホルモン使用肉を禁輸しているEUに対しては成長ホルモンを投与せず、ザルになっている日本向けには、しっかり投与しています(このことは日本の所管官庁にも確認済みです)。」
EUは、米国からの報復関税措置にも負けずに、ホルモン投与の米国牛肉の禁輸を続けています。
最近は、米国側も、オーストラリアのように、EU向けの牛肉には肥育時に成長ホルモンを投与しないようにして輸出しようという動きがあると聞いています。
・米国では敬遠され始めた「ホルモン」牛肉
最近、女性誌で、「米国国内でも、の商品は通常の牛肉より4割ほど高価になるのだが、これを扱う高級スーパーや飲食店が5年前くらいから急増している」と紹介されています。
また、ニューヨークで暮らす日本人商社マンの話として、「アメリカでは牛肉に『オーガニック』とか『ホルモン・フリー』と表示したものが売られていて、経済的に余裕のある人たちはそれを選んで買うのがもはや常識になっています。
自分や家族が病気になっては大変ですからね。」と紹介されています。
一方の日本人は、日米協定が発効した1月だけで前年同月比で1.5倍に米国産が増えるほど、米国の成長ホルモン牛肉に喜んで飛びついている、嘆かわしい事態が進行しています。
米国も、米国国内やEU向けはホルモン・フリー化が進み、日本が選択的に「ホルモン」牛肉の仕向け先となりつつあるのです。
・米国人が食べないものを日本に送るのか
米国の穀物農家は、発がん性などが懸念視されている除草剤成分グリホサートを雑草でなく麦に直接散布して枯らして収穫し、輸送時には、日本では収穫後の散布が禁止されている農薬の防カビ剤を噴霧し、「これは〇〇(日本人への蔑称)が食べる分だからいいのだ」と言っていた、との証言が、米国へ研修に行っていた日本の農家の複数の方から得られています。
グリホサートについては、日本の農家も使っているではないか、という批判がありますが、日本の農家はそれを雑草にかけるのです。
それが問題なのではありません。
農家の皆さんが雑草にかけるときも慎重にする必要はありますが、いま、問題なのは、米国からの輸入穀物に残留したグリホサートを日本人が世界で一番たくさん摂取しているという現実です。
農民連分析センターの検査によれば、日本で売られているほとんどの食パンからグリホサートが検出されていますが、当然ながら、国産や十勝産と書いてある食パンからは検出されていません。
しかも、米国で使用量が増えているので、日本人の小麦からのグリホサートの摂取限界値を6倍に緩めるよう要請され、2017年12月25日、クリスマス・プレゼントかのようにして緩めました。
日本人の命の基準値は米国の必要使用量から計算されるのでしょうか。
さらに、収穫後の散布が日本国内では禁止されているイマザリルなどは、1975年に日本の米国レモンの海洋投棄に激怒した米国に「日本産自動車を止めるぞ」と脅された結果、「禁止農薬でも米国がかけると食品添加物に変わる」というウルトラCの分類変更で散布を認めてきました。
禁止農薬がどうして食品添加物になってしまうのか、唖然としますが、食品添加物に分類すると、輸入レモンのパッケージにイマザリルと表示されるので、こんどは、この表示も撤廃するよう、日米交渉で求められています。
・衝撃的な動画
日本人が標的にされている「証拠」はまだあります。
Youtubeで公開されている動画の中で、米国穀物協会幹部エリクソン氏は、「小麦は人間が直接口にしますが、トウモロコシと大豆は家畜のエサです。米国の穀物業界としては、きちんと消費者に認知されてから、遺伝子組み換え小麦の生産を始めようと思っているのでしょう。」(8分22秒あたり)と述べています。
トウモロコシや大豆はメキシコ人や日本人が多く消費することをどう考えているのかがわかります。
われわれは「家畜」なのでしょうか。
また、米国農務省タープルトラ次官補は「実際、日本人は一人当たり、世界で最も多く遺伝子組み換え作物を消費しています」(9分20秒あたり)と述べています。
「今さら気にしても遅いでしょう」というニュアンスです。
・国産にシフトしないと命は守れない
メッセージは単純明快なのです。
国産の安全・安心なものに早急に切り替えるしかないということです。
ほとんどの食パンからグリホサートが検出されても、国産や十勝産と書いてある食パンからは検出されていないのです。
つまり、小麦も国産に切り替えないと自分や次の世代の命が守れないということです。
なんでも従順に従い、国民の命を差し出してくれる日本は格好の標的になっていると言っても過言ではありません。
牛肉も、豚肉も、乳製品も、あらゆる食料についても同じです。
一日も早く行動を起こさないと手遅れになります。
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【食料・農業問題 本質と裏側】「標的」は日本人?
JAcom 農業協同組合新聞 2020年2月20日 【鈴木宣弘・東京大学教授】
■今こそ食料安全保障を 食料危機が迫るなか、どう対応すべきか
福岡の経済メディア NetIB-News 2023年4月2日 鈴木宣弘
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・物流停止で世界的飢餓に 餓死者の3割は日本人
そのリスクを裏付けるデータが最近、海外の大学からも発表された。
核戦争に関する衝撃的な研究成果を朝日新聞が報じた。
米国ラトガース大学の研究者らが、15kt(広島に投下された原子爆弾と同規模)の核兵器100発が使用される核戦争が勃発した場合、直接的な被爆による死者は2,700万人だが、「核の冬」による食料生産の減少と物流停止による2年後の餓死者は世界全体で2億5,500万人と推定される。
そのなかで、被害はとくに食料自給率の低い日本に集中し、全餓死者の約3割に相当する7,200万人(日本人口の6割)が日本で発生すると推定した。
実際、38%という自給率に種と肥料の海外依存度を考慮したら日本の自給率は今でも10%に届かないくらいなのだから、核被爆でなく、物流停止が日本を直撃することによって、世界全体の餓死者の3割を日本が占めるという推定は驚くに当たらない。
重要なことは、核戦争に限らず、世界的な不作や敵対による輸出停止・規制が広がれば、日本人が最も飢餓に陥りやすい可能性があるということだ。
・地域ネットワーク強化と地域循環型経済の確立
日本の農業を守ることこそが国民の命を守ることだ。
窮地に立つ稲作農家に、コメ1俵1万2,000円と9,000円との差額を主食米700万tに補てんするのに3,500億円、全酪農家に生乳kg当たり10円補てんする費用は750億円、安全・安心な国産農産物の出口対策にもなり、子どもたちの健康も守るための学校給食の無償化を国が全額負担しても5,000億円弱である。
米国からF-35戦闘機147機を購入する費用6.6兆円や、防衛費を5年で43兆円に増額するのに比べても、まず食料確保に金をかけることを惜しんでいる場合ではない。
「農水予算は2.2兆円でシーリング(天井)が決まっているからそんな金が付けられるわけないだろ」と一蹴するような財務省の国家戦略が欠如した財政政策を継続することは許されない。
農水・文科・防衛予算も一括りにした国家安全保障予算を組んで、食料を守ることが不可欠である。
農家も踏ん張りどころである。
食料危機が到来した今、この今を踏ん張れば、農の価値がさらに評価される時代がきている。
とくに輸入に依存せず国内資源で安全・高品質な食料供給ができる循環農業を目指す方向性は子どもたちの未来を守る最大の希望である。
世界一過保護と誤情報を流され、本当は世界一保護なしで踏ん張ってきたのが日本の農家だ。
その頑張りで、今でも世界10位の農業生産額を達成している日本の農家はまさに「精鋭」である。
誇りと自信をもち、これからも家族と国民を守る決意を新たにしよう。
自然資源を徹底的に循環させていた江戸時代の日本農業が世界を驚嘆させた実績もある。
我々は世界の先駆者だ。その底力を今こそ発揮しよう。
国民も農家とともに生産に参画し、食べて、未来につなげよう。
地域で育んできた在来の種を守り、育て、その生産物を活用し、地域の安全・安心な食と食文化の維持と食料の安全保障につなげるために、シードバンク、参加型認証システム、直売所、産直、学校給食(公共調達)、レストランなどの種の保存・利用活動を支え、育種家・種採り農家・栽培農家・関連産業・消費者が支え合う「地域のタネからつくる循環型食料自給」の仕組み(ローカルフード条例)を各地で策定しよう。
その遂行のための自治体予算の不足分を国が補完する根拠法(川田龍平議員を中心とした超党派の議員立法で提出予定のローカルフード法)をセットで推進することが有効ではないかと思われる。
協同組合(農漁協、生協、労組など)、共助組織、市民運動組織と自治体の行政などが核となって、各地の生産者、労働者、医療関係者、教育関係者、関連産業、消費者などを一体的に結集しよう。
そして、現代にはびこる「今だけ、金だけ、自分だけ」の風潮に打ち克ち、安全・安心な食と暮らしを守るための種から消費までの地域住民ネットワークを強化し、地域循環型経済を確立するために、今こそ、それぞれの立場から行動を起こそう。
加えて、生産資材の暴騰で困窮が深まる農家を早急に支援することがすべての基盤になることを認識し、国民と政府の役割を明記した「食料安全保障推進法」を早急に制定して、国民の命を守る安全保障政策を抜本的に再構築し、財務省の農水予算枠の縛りを打破して、数兆円規模の予算措置を発動すべきではないだろうか。
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今こそ食料安全保障を 食料危機が迫るなか、どう対応すべきか
福岡の経済メディア NetIB-News 2023年4月2日 鈴木宣弘
■日本の食料自給率向上を「米国が絶対許さない」訳
米国にとって日本は「食料植民地」となっている
東洋経済オンライン 2022/05/31 青沼 陽一郎
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・日本にも影響が及ぶ「世界食料危機」
ロシアによるウクライナ侵攻で世界が食料危機に陥る懸念が叫ばれている。
肥沃な黒土の穀倉地帯を持つウクライナは、小麦で世界第5位、トウモロコシで第4位の輸出国だ。黒海を閉鎖されたことでウクライナから約2500万トンの穀物が運び出せずにいる。
すでに穀物相場は高騰し、さらに肥料の値上がりが懸念材料となり、折からのインフレが拍車をかけて食料価格は上昇。
そこに異常気象が加わって農作物の不作から、インドでは小麦の輸出を一時停止した。
こうした詳細については、以前に書いた。
食料自給率が37%(カロリーベース、2020年度)の日本にもその影響が及ぶことは必至だ。
すでにロシアのウクライナ侵攻の前から小麦の価格は上昇していて、政府が買い付けた輸入小麦を製粉会社に売り渡す「売り渡し価格」が、この4月に前年10月期と比べて平均17.3%も引き上げられた。
そこにエネルギー価格の高騰や円安も加わって、食品の値上げが相次いでいる。
こうした事態に、岸田文雄首相は4月14日の時点で、訪問先の石川県輪島市で「日本の農業に関して言えば、自給率を上げなければならない」と述べている。
だが、日本の食料自給率は上がらない。
上げることはできない。
なぜなら、アメリカが許さないからだ。
食料の60%以上を海外からの輸入に頼る日本とって、アメリカは最も依存している相手国だ。
農林水産省が公表している「農林水産物輸出入概況」によると、2021年に農産物の輸入が金額ベースで最も多かったのがアメリカの1兆6411億円で、全体の23.3%を占める。
次いで中国の10.1%、カナダの6.9%、豪州の6.7%、タイの6.2%と続く。
しかも第2位の中国からの輸入は、冷凍野菜や鶏肉調整品などの比較的カロリーが低いものに比べて、アメリカからは穀物や牛・豚肉などのカロリーが高いものが多い。
価格が高騰する小麦の8割以上を輸入に頼る日本は、アメリカに45.1%依存し、カナダの35.5%、豪州の19.2%と、この3カ国で占められる。
ほぼ100%を海外に依存するトウモロコシは、アメリカからの輸入が72.7%を占める。
自給率が21%の大豆も、74.8%がアメリカからの買い付けだ。
牛肉は豪州の40.5%と拮抗しているとはいえ、42.2%がアメリカからでこの2カ国で8割を超えているし、豚肉も27.1%とカナダの25.7%をしのいで最も得意な輸入先だ。
ちなみみに2020年の豚肉の自給率は50%で、その前の年は49%だった。
・きっかけは1960年の新日米安全保障条約
こうしたアメリカ依存の食料供給体制は、昭和の時代からずっと変わることがない。
始まりは、新日米安全保障条約だった。
戦後、サンフランシスコ講和条約と同時に締結された日米安保条約を、1960年1月に改定した。
そこに両国の経済協力条項が、あらたに盛り込まれる。
これによって、のちに「東洋の奇跡」とも称された戦後日本の高度経済成長がはじまる。
日本は生産性の優れた工業を特化。安価で性能の高い工業製品をアメリカ市場に売り込む。
一方で、アメリカからは安価な穀物を主体とした農業製品を輸入。
こうした対米輸出入型の貿易構造を立ち上げたことで経済成長が進んだ。
戦時中の食料不足にあえぎ、戦後の農地解放もあって食料自給率を急速に80%近くにまで伸ばしていた日本だったが、この1960年をピークに下降していく。
それも着実な右肩下がりで、平成になると50%を割り込み、東日本大震災の前には40%を切り、そして令和になってはじめて37%を記録している。
それだけ食料の海外依存、とりわけアメリカを中心に依存度が増していったことになる。
敗戦後の日本への食料支援や、その後の学校給食もパンと牛乳で普及していったように、アメリカ側には日本に洋食文化を浸透させるためのしたたかな側面もあった。
洋食化と同時に肉食が浸透すれば、畜産のための飼料穀物も必要になる。
いまウクライナでは、ロシアの侵攻が終焉したあとの“マーシャル・プラン”の必要性が叫ばれている。
マーシャル・プランとは、第2次世界大戦で戦場となった欧州の復興支援に乗り出したアメリカのプロジェクトのことだ。
このときにアメリカは食料を武器に使った。
第2次大戦中から、アメリカは国家を挙げて食料の増産体制に入る。
ホワイトハウスの敷地内に農園を造った逸話は有名で、それだけ国威発揚を目指したものだった。
しかし、それは日本のように本土を攻撃されて極度の食料不足に陥ることを防ぐ、国民のための食料備蓄対策でなかった。
やがてこの戦争に勝利した段階で、欧州にソビエト連邦が進出してくることは、すでに見えていた。
いずれは冷戦構造ができあがっていく。
そのときに、どれだけ多くの欧州諸国を西側に取り込むことができるか。
そこで戦後復興支援としての食料援助が役に立つ。
そこを見越した食料増産だった。いままたウクライナで叫ばれるように、このマーシャル・プランが功を奏して欧州諸国は復興を遂げていった。
・余剰を解消するための新しい市場が日本だった
だが、戦後も10年が経つと、欧州でも独自で食料が供給できるようになった。
そうなると、アメリカが取り組んできた増産体制は、むしろ余剰を生む。
それも年々増していく。そのためには、新しい市場が必要になる。
そこへ現れたのが日本だった。
小麦やトウモロコシ、大豆といった穀物はアメリカのほうが生産効率は遙かに高く、日本にとっても国内生産よりも安く手に入る。
双方の利益が合致する。日本は食料自給率の低下と引き替えに、アメリカの余った穀物を買うことを約束した。
それが日米新安保条約の持つもう1つの意味だった。
そんなアメリカ農業にとっての確実な市場である日本を失うワケにはいかない。
自給率を向上させてしまうと、市場を奪われることになる。
そうはさせない。
それは1980年代の日米貿易摩擦の顛末を見ればわかる。
新たに構築された日米循環型の貿易構造のはずが、1980年代になるとアメリカが対日貿易赤字を抱えるようになる。
貿易黒字で潤う日本に厳しく市場の開放を求めた。
日本製の自動車を目の敵にして、アメリカの農産品をもっと買えと迫った。
「どちらが戦勝国かわからない」と発言したアメリカ政府の関係者もいた。
結果的に日本は1991年、それまで国内農家の保護を楯に規制していた牛肉と柑橘類の輸入自由化に踏み切っている。
幻に終わったアメリカとのTPP交渉にも、農産品の聖域を設けた。
それでも牛・豚肉の関税は時間をかけて下げていくことで合意したはずだった。
それをTPPからの離脱を宣言したトランプ政権が、日米貿2国間易交渉の末に結んだ「日米物品貿易協定(TAG)」に継承させている。
そのトランプ政権下で米中貿易戦争が勃発すると、中国がアメリカの農産品に報復関税をかけて買い取りを拒むようになった。
それを引き受けたのも日本だった。
中国に向かうはずが、売れ残って余剰となったトウモロコシ約250万トンを当時の安倍政権が買い取っている。
アメリカの農業にとって日本は欠くことのできない、そして便利な市場なのだ。そんな市場を手放すはずがない。
「Can you imagine a country that was unable to grow enough food to feed the people? It would be a nation that would be subject to international pressure. It would be a nation at risk.」
(君たちは、国民に十分な食料を生産自給できない国を想像できるかい? そんな国は、国際的な圧力をかけられている国だ。危険にさらされている国だ)
2001年7月27日、ジョージ・W・ブッシュ大統領は、ホワイトハウスでNational Future Farmers of America Organization(アメリカの未来の農業者を支援する国立機関)の若い会員に向けた演説でそう述べた。
・日本はアメリカの“食の傘”の下にある
ウクライナ侵攻と同時にプーチン大統領は核兵器の使用も示唆する発言をして物議を醸した。
そこであらためて日本はアメリカの“核の傘”の下にあることを認識した。
同じように日本はアメリカの“食の傘”の下にある。
そのことをアメリカはよく知っている。
ウクライナ侵攻をめぐって日本はアメリカと足並みを揃えた。
それは理念ばかりではなく、そうせざるをえない事情もあるからだ。
食料供給によって相手国を従わせる。
自給率の低下と食料依存体制の強化で、相手国を骨抜きにする。
それが重要な市場でもあり、かつての植民地のように機能する構図。
もっとも、これをアメリカや日本政府は「日米同盟」と呼んでいる。
だが、私はずっと日本はアメリカにとっての「食料植民地」であると言い続けてきた。
だから、岸田首相もあの日以来、自給率については言及していないはずだ。
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日本の食料自給率向上を「米国が絶対許さない」訳
米国にとって日本は「食料植民地」となっている
東洋経済オンライン 2022/05/31 青沼 陽一郎
■狡猾なアメリカと無策な日本――食の未来はどこへ向かうのか
『食の戦争 米国の罠に落ちる日本』 (鈴木宣弘 著)
本の話(文春)2013.09.02
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いま、世界で「食の戦争」ともいえる事態が進行しつつあります。
それは端的に言えば、世界の「食」が市場原理に飲み込まれ、日本人の食が、アメリカの手に握られつつあるということです。
あるいは、食の質的な安全性ばかりか、量的な確保の術をも、日本が自ら手放そうとする事態、と言い換えてもいいかもしれません。
「食の戦争」と一口に言っても、消費者にはなかなか実感しづらいかもしれません。
しかし、いま議論の的になっているTPP交渉で、コメや小麦、乳製品といった日本が長らく高関税を守ってきた食品の関税もが撤廃され、アメリカ主導の食戦略のコントロールがより強まれば、それは“現実”のものとして実感されることになるでしょう。
生産者やメーカー、消費者や行政、政治など食料をめぐる問題には様々な立場があるにもかかわらず、近視眼的な利害を超えて社会全体の長期的繁栄を考えた議論が行われていないのが現状です。
アメリカの巧みな戦略、そして日本の無策がかけあわさってもたらされる、日本の食をめぐる危機的状況。その事態がどのように進行しているのか、日本の何が問題なのか、処方箋はどこにあるのか、広く考えてもらうために、具体的事例とエビデンスに基づいて解説したのが本書です。
その一端を紹介すると、訪れつつある危機とは、次のようなものです。
食料自給率が10%台まで低下し(現在は39%と先進国の中でも最低レベル)、スーパーで買う食材に占める遺伝子組換え食品の割合が高まり(今も大豆食品や食用油などに多く使われている)、アメリカ基準にならって遺伝子組換え食品の表示義務が撤廃され、農薬の安全基準もが緩和され、国産が多くの安い輸入品にとって代わられる結果、安全で高品質な食品を買い求めるには、よりコストが高くつくようになるといった現実です。
「食」は人の命を支えるライフラインそのものですが、徹底的な規制緩和と貿易自由化の流れの中で価格競争が激化するにつれ、日本が世界的には相対的に高く維持してきた食の安全性が脅かされつつあるのです。
しかも、脅かされるのは食の質的な安全性ばかりではありません。
食には量の確保の観点から、国家安全保障上の重要性があります。
国家戦略を語る上で軍事やエネルギーが大きな議題として語られるように、世界的には「食」もまた、国家の命運を左右する“戦略的武器”として捉えられているのです。
その重要性を認識している国々の強さは、高い食料自給率はもちろん、「食」を対外的な交渉カードとして切ることができることにも表れています。
裏返せば、食料自給率が低ければ、交渉カードを失うということでもあります。
しかし、私たちは原発事故で思い知らされたはずです。
目先のコストの安さに目を奪われ、いざというときに備えて自前のライフラインを準備しなければ、取り返しのつかないコストを払うことになるということに。
確かに国内で農産物を作るとなれば、アメリカやオーストラリアに比べてコストが高くつくでしょう。
しかし、高いからといってすべてを安い輸入品に任せればどうなるでしょうか。
2008年に見舞われた世界的な食料危機に際しては、穀物生産大国における干ばつや原油価格の高騰が劇的な食料価格の高騰へとつながり、途上国では暴動をもたらす事態になりました。
特に、ハイチやフィリピンなど主食の国内生産を手放した国々において被害が甚大であったという事実を見ると、そのリスクは明らかです。
短期的には少々コストが高くつくように見えても、実は、国内生産を維持してこそ長期的コストは安くなるという認識をもたなければなりません。
食の生産手段をめぐってもまた同じです。
栽培コストが安くすむばかりか、生産者、さらには種子企業の大幅な増収につながるとあって、世界では遺伝子組換え作物の栽培面積が拡大し続けています。
その中心にあるのはモンサントをはじめとするアメリカの種子企業です。遺伝子組換え種子はライセンス化され、種子市場においてより多くのシェアを握り、栽培比率の高まりとともに、農家は在来種を選ぶ術を失いつつあるのです。
ひとたび在来種がなくなれば、もう元には戻れません。
しかも、遺伝子組換え作物の安全性は未確定と言わざるを得ません。
TPPによって、無策の日本は、この生産手段の企業化の流れにも飲み込まれるでしょう。
大いに批判されるべきであると同時に、しかし日本が学ぶべきところもあるアメリカの戦略にも光をあて、日本が「食の戦争」にどう立ち向かうべきか、考えてもらえたらと思います。
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狡猾なアメリカと無策な日本――食の未来はどこへ向かうのか
『食の戦争 米国の罠に落ちる日本』 (鈴木宣弘 著)
本の話(文春)2013.09.02
■「食の戦争」で米国の罠に落ちる日本
2013年8月22日 植草一秀の『知られざる真実』
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「今だけ、金だけ、自分だけ」は、東京大学教授鈴木宣弘教授の新著『食の戦争 米国の罠に落ちる日本』(文春新書)の冒頭で、最近の世相をよく反映する言葉として紹介されているものだ。
鈴木氏はこのフレーズが、池田整治氏の、『今、「国を守る」ということ』(PHP研究所、2012年)よりヒントを得たものだと記述する。
鈴木氏は上記新著のあとがきに、「食だけではない。これ以上、一部の強い者の利益さえ伸びれば、あとは知らないという政治が強化されたら、日本が伝統的に大切にしてきた助け合い、支え合う安全・安心な社会は、さらに崩壊していく。競争は大事だが、あまりにも競争に明け暮れる日々は人心も蝕み、人々は人心共に疲れ果てる。」と記述する。
いまこの国が直面しているもっとも重要な問題は、この国の進路である。
日本古来の風土、伝統である、「分かち合いの社会」を再構築する道を選ぶのか。
それとも、米国流の弱肉強食社会、「奪い合う社会」を選ぶのか。
その選択が問われている。
安倍政権は2001年に発足した小泉政権の焼き直しの側面を強く有している。
小泉政権が押し進めた政策は市場原理主義、弱者切り捨て、弱肉強食奨励、拝金主義礼賛の政治だった。
しかし、その政策路線のひずみが2008年末の年越し派遣村に象徴される格差社会として私たちの眼前に姿を現した。
人々はようやく大きな誤りに気が付き、世直しの気運が広がった。
これが、2009年に鳩山由紀夫政権を生み出す原動力になった。
しかし、日本の既得権益にとって、これは悪夢のシナリオであった。
日本政治の実権が主権者国民の手に完全に移ってしまえば、既得権益がひたすら利益を追求する道が閉ざされることになる。
米・官・業・政・電の既得権益は、鳩山由紀夫政権を破壊するために総力を結集した。
民主党の内部では、菅直人氏、野田佳彦氏がクーデター政権を樹立し、主権者国民が支配権を確保する政治は、8ヵ月の短命で幕を閉じてしまったのである。
そして、小泉竹中政治の市場原理主義政権=弱肉強食奨励政権が再樹立され、原発・TPP・消費税を猛烈な勢いで推進している。
昨年12月の総選挙で「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。日本を耕す自民党!」のポスターを貼り巡らせた安倍政権は、その舌の根も乾かぬ本年3月に、TPP交渉への参加を表明した。
TPP交渉の情報は隠蔽され、日本を破壊してしまう取り決めが、安倍政権によって強行に締結されようとしている。
鈴木氏は、農林水産省の官僚として日本の農業政策に携わったのちに、学者に転じ、農業の裏も表も知り尽くしている。
その鈴木氏が、いま日本の農業が本当の意味での危機に直面していることを警告する。
その警告は、単に農業だけの問題ではない。
日本社会が、冒頭に示したように、「今だけ、金だけ、自分だけ」の風潮に支配され、社会全体の枠組みが破壊されつつあることに強い警告を示している。
問題の根源にあるのは、政治家、官僚、学者、企業人、ジャーナリストの多くが、「今だけ、金だけ、自分だけ」の行動に走る傾向が著しく強くなっていることである。
いまの自分の金銭的な損得だけを考えれば、米国と大資本が主導する強欲資本主義=欲得主義に同調することが有利であろう。
ただそれだけの判断で、米国と大資本が主導する路線にひた走る者が激増してしまっているのである。
著書では、人間社会にとって根源的に重要な「食料」の意味、食の安全、TPPの本質が詳細に解説されたうえで、最後に、日本の農業の進むべき道が示される。
すべての日本国民が必読の書である。
人は「食」なくして生きてゆくことが出来ない。
同時に、「食」は人間にとって「益」にもなるが「害」にもなる。医食同源という言葉があるが、人間の命と健康にとって、何よりも大切なもののひとつが「食」なのである。
食料、エネルギー、鉱物資源、兵器、原子力、金融、マスメディア これが、世界の巨大資本が独占支配する対象である。
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「食の戦争」で米国の罠に落ちる日本
2013年8月22日 植草一秀の『知られざる真実』
■米国の罠に落ちる日本!~「食の戦争」鈴木宣弘著(文春新書)
福岡の経済メディア NetIB-News 2013年9月11日
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<「今だけ、金だけ、自分だけ」という最近の世相>
「食」をめぐる日本の現状は危機的である。
TPPによる例外なき関税撤廃によって、世界の食をアメリカが握り「食の戦争」に勝利するための戦略を強化している。
アメリカの食料戦略の一番の標的は日本である。
今最大の問題は、この事実を日本の官僚も政治家も経済人も皆知った上で、目先の自分の利益しか目に入らず「今だけ、金だけ、自分だけ」を忠実に実践、人の命よりも金儲けを優先しているところにある。
鈴木宣弘氏は農林通産省(国際部国際企画課)で農林行政に携わった後、九州大学大学院教授、コーネル大学客員教授を経て2006年より東京大学大学院農学国際専攻教授の職にある。
専門の農業経済学の立場から農業政策の提言を続ける傍ら、数多くのFTA交渉にも携わる。
本書は戦略物資としての食料(第1章)~食の安全を確保せよ~食の戦争Ⅰ~食の戦争Ⅱ~アメリカの攻撃的食料戦略~日本の進むべき道「強い農業」を考える(第6章)で構成。
アメリカの巧みな戦略と日本の無策によって引き起こされる「日本の食の危機」に警鐘を鳴らし、豊富なデータを駆使、生々しい交渉場面を再現し、その処方箋を試みている。
<貿易自由化で日本の「食の安全」が危険水域へ!>
「食料は軍事、エネルギーと並ぶ国家存立の三本柱である」ことは世界の常識である。
ところが日本の食料自給率(カロリーベース)は現在39%しかない。
これは遺伝子組み換え(GM)問題にしても、牛肉BST(牛成長ホルモン)問題にしても、すでに戦う"術"がないことを意味する。
EUは牛肉BST問題等でアメリカと戦っているが、それは95%という牛肉自給率があるからである。
アメリカは徹底した食料戦略によって食料輸出国になった。
「安く売ってあげるから非効率な農業はやめなさい」と諸外国にアメリカ流の戦略を説き、世界の農産物貿易自由化を進めてきた結果である。
貿易自由化とは、比較優位への特化であり、輸出国が圧倒的に少数化していくことを意味する。
食の自由貿易化が推し進められる中で、とりわけ心配されるのが「食の安全」である。
例えば、遺伝子組み換え(GM)農産物の"長期"摂取の安全性は現時点では誰も分からない。
子供たちが30年食べ続けて大丈夫かの実験に使われている。
TPPでこの流れは加速、アメリカ基準に従い、遺伝子組み換え食品の表示義務が撤廃される可能性が高い。
その背後にモンサント社がいるからである。
今や世界の遺伝子組み換え種子・特許のほとんどを同社が握っている。
<GM作物の種子のシェア90%を握るモンサント社!>
多国籍企業・モンサント社はPCB、枯葉剤としてのダイオキシン等で充分に悪名高いが、同社の最大の技術力は「政治介入力」である。
日本では官から民への一方通行の「天下り」であるが、アメリカでは、産(会社)、官(認可官庁)、学(大学・研究機関)とぐるぐる回るので「回転ドア」と言われる。
モンサント社の副社長が認可官庁であるFDA(食品医薬品局)の長官の上級顧問になり、長官が社長になる人事交流等は日常的なものである。
アメリカのTPPの主席農業交渉官はモンサント社の前ロビイストであるイスラム・シディーク氏と報じられている。
NHKスペシャル(2008年)でアメリカ穀物協会幹部が「小麦は我々が食べるので遺伝子組み換え(GM)にしない。大豆やトウモロコシは家畜のエサだから構わない」と発言、物議を醸したことは記憶に新しい。
今や、日本人の1人当たりの遺伝子組み換え(GM)食料は世界一と言われている。
日本はトウモロコシの9割、大豆の8割、小麦の6割をアメリカから輸入している。
鈴木氏は「大規模化して企業が経営すれば強い農業になるという議論は短絡的であり、又食料に安さだけを追求することは命を削ることと同じである」と度々警告している。
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米国の罠に落ちる日本!~「食の戦争」鈴木宣弘著(文春新書)
福岡の経済メディア NetIB-News 2013年9月11日
■「食の安全」は崩壊へ。ついに日本の農業を米国に売り渡す密約を交わした安倍政権
まぐまぐニュース 2019年6月2日
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・今夏にもゲノム編集食品が店頭へ?食料自給できない日本は窮地に
トランプの訪日に当たっては、いつものとおり、ゴルフその他の過剰接待が用意されていました。
メディアは、あらかじめ示し合わせた約束事に沿って、トランプと安倍首相が旧知の間柄でもあるかのように歓談する様子を伝えていました。
しかし、ひとしきりゴルフに興じた後、トランプは意味深なツイートを発したのです。
トランプが「7月の選挙」をelectionsと複数形で書いたことから、ネットニュースは「やはり衆参同時選挙か」とざわめいています。
もちろん、安倍自民は、すかさず「衆参ダブル選挙などと誰も言っていない」と火消しに躍起となっています。
ここで違和感を感じないとすれば、その人はモンサントの遺伝子組み換え野菜と、自然農法で育てた無農薬の野菜と区別がつかないまま、おいしそうに口にほうばってしまう人でしょう。
いつもなら(それが後になって真っ赤な嘘であることが分かったとしても)「ありえない!」と力強く否定するはずが、今度は「誰も言っていない」と消極的です。
当然のことながら、安倍陣営は衆参同時選挙を視野に入れているはずです。
しかし、直前まで情勢を見ながら判断することを考えている様子で、「流動的な要素」も含まれているようです。
いえいえ、問題は、そのことではないのです。
・「農業と牛肉を米国に売り渡す」その見返りは?
ネットニュースは、こぞって安倍首相がトランプに夏の選挙についてリークしたのではないかとの憶測を呼ぶ報道を行っています。
日本の選挙は日本の問題であって、それこそ国家の独立性を問われる問題であり、仮にも報道されているように「安倍首相は、選挙が終わるまで日本の農業をすっかり売り渡す密約があったことを内緒にしておいてね」とトランプに言い含めていたとすれば、まさしく極刑に値する犯罪行為です。
ロイターは、「トランプ大統領が参院選後に、実際に日本への圧力をかけに動き出すまでは、安倍首相が何を得たのか知ることはできない」と、ジャパン・ハンドラーの一人、コロンビア大学のジェラルド・カーティスの言葉で締めくくっています。
しかし、如才ないトランプは、さっそく手付金を打つかのように、韓国の「東海」、北朝鮮の「朝鮮東海」を退けて、日本海を公式の場で「日本海」と呼んだのです。
これは、副大統領のマイク・ペンスも同じで、おそらくワシントン内部にはトランプ政権から「今後、日本海で統一する」という見解が示されたものと判断できるのです。
こうしたことから、トランプは、すでに安倍首相との密約において、大きな成果を上げたことをうかがわせるのです。
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「食の安全」は崩壊へ。ついに日本の農業を米国に売り渡す密約を交わした安倍政権
まぐまぐニュース 2019年6月2日
■日本の対米隷属を固定化する安倍政権
月刊日本 2013/6/1 植草一秀
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・食料を自給できない日本は窮地に…
いずれにしても、安倍政権は、日本の農業を今度こそ本気で売り渡すつもりでしょう。
元商務長官のアール・バッツは「食糧はアメリカが持つ外交上の強力な手段だ。
とりわけ、食糧を自給出来ない日本には有効である。
日本に脅威を与えたいのなら、穀物の輸出を止めればいいだけだ」と言っています。
日本国民の生殺与奪の一切を世界支配層に明け渡すつもりでいるようですから、あきれてものが言えなくなるのです。
そして、トランプが仕掛けた米中貿易戦争は激化の様相を見せています。
中国と米国がテーブルの下で握手していることぐらい常識です。
キューバ危機が勃発した時に、ケネディーとフルシチョフがホットラインでつながっていたことを知っている人であれば、確信をもって「中国と北朝鮮は米国の同盟国である」と言うでしょう。
いずれにしても、6月下旬の「G20大阪サミット」で方向性が示されるでしょう。
・この夏にもゲノム編集食品が店頭へ
霞が関と永田町は、もはや国家犯罪の巣窟と言わなければなりません。
「彼ら」の意のままに操られている厚生労働省と、その「有識者」と称する学者たちは、ゲノム編集食品は安全性審査を受ける必要はないとして届け出のみを義務し、早ければ今年の夏にもゲノム編集食品が店頭に並ぶことになります。
ゲノム編集食品とは、遺伝子を切り貼りして、本来持っている性質を改変してつくった食品のこと。
国民の反対を他所に、厚生労働省の御用「有識者」たちによる「遺伝子を切るだけの場合は遺伝子組み換え食品の規制対象とはならない」という勝手な判断によって押し切られたかたち。
彼ら米国の息のかかった専門家が、どんな屁理屈を言おうが、「遺伝子組み換え」には変わりがないのです。
人体にどんな影響が出るのか数十年後になって判明するとあって、「有識者」と称する“専門家”たちは国民の健康リスクと引き換えに己の利得を優先したのだとすれば、まさに重大な犯罪行為であると言わなければなりません。
・グリホサートを150倍まで緩和し、モンサントを特別優遇する厚生労働省の闇
さらに、厚生労働省は2017年12月25日、「食品・添加物の一部基準を改正する件について」の通知で、グリホサートを含む10種類の農薬について、食品中の残留基準値を改正する通知を出しました。
内容は、規制が強化されたもの・緩和されたもの・初めて設定されたものと色々です。
しかしグリホサートだけは、小麦で6倍、ライ麦やソバで150倍、ヒマワリの種子で400倍と大幅な規制緩和がされています。
2017年時点では、加工工程の数が少ないソバへの残留が心配されていました。
特に、規制があってないも同然の米国産のソバは「完全にアウト」と断定して差し支えないでしょう。
日本のソバの自給率は20%ですが、ソバ生産農家が収益を上げるためにラウンドアップを使い始めているとすれば、国内産と言えども安心はできません。
日本でもっとも売れている除草剤は、モンサント社が開発したラウンドアップです。
どのホームセンターでも手に入れることができます。
ソバの一大産地がある北海道内JAでは積極的に取り入れているようですが、ラウンドアップの主成有効成分である「グリホサート」が驚異的な発がんリスクを内包しているという事実は、あの、例のCNNでさえ警告していることなのです。
実際に、モンサント社のラウンドアップと発ガン性との因果関係は医学的に証明されており、グリホサートの使用によってガンを発症した多くの患者から多くの訴訟を起こされているのです。
にもかかわらず、厚生労働省は、国民の健康リスクと引き換えにモンサント社に特別待遇を与え、米国産のソバの輸入を増やそうとしているのです。
厚生労働省は、ここのところ、「食品・添加物の一部基準を改正する件について」を頻繁に改定しています。
メディアは沈黙を守り続けています。
厚生労働省によるデータ改ざんなどは昔からのことで、「何をいまさら騒いでいるのか」と不思議なくらい。
厚生労働省の愚策のうちで、もっとも懸念されているのが、子どもや若者に対する向精神薬の乱用による薬害です。
腐敗の極に達してもはや再生不能に陥ってしまったこの省庁に国民の健康を任せていれば、やがて米国の若者のように、向精神薬依存症が蔓延するでしょう。
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日本の対米隷属を固定化する安倍政権
月刊日本 2013/6/1 植草一秀
■迫る食料危機! 私たちの食と農を守るためにできること㊤ 東京大学大学院教授・鈴木宣弘
長周新聞 2022年11月4日
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現在、日本では食料安全保障の崩壊が進んでいる。
なぜ日本はこれほど命を守るのに脆弱な国になったのか。
一つの大きな要因は、終戦直後から米国が日本を余剰生産物の最終処分場とし、貿易自由化を押しつけて日本人に米国の農産物を食べさせる政策を進めたこと。
さらに、米国農産物に量的に依存するようになったことで、たとえそれらの農産物に健康上の不安(危険性)があったとしても文句がいえなくなり、「もっと安全基準を緩めろ」といわれると従わざるを得ないほどに依存が強まったことだ。
米国政府の後ろでもうけるのは一握りのグローバル穀物商社などの巨大企業だが、米国は彼らの利益のために動く日本人をつくるため、日本の若者を米国に呼び寄せて「市場原理主義」なる経済学を教え込み、規制撤廃(自由化)すればみんなが幸せになれるかのように喧伝させた。
実際の規制撤廃は、経済力の強い企業がより多くの利益を独占できるようになる。
つまり「1%」の強者がもっともうけられる社会にするという経済学だ。
そういう人たちが日本で増殖すれば、日本人が米国の思い通りに勝手に動くようになる。
これは大変な戦略だった。
それにより日本国内では二つの大きな問題が生じた。
まず基本として、経産省を中心に、自動車など輸出産業の利益を守るために農業を犠牲にした。
農産物の関税撤廃を進め、食料を輸入に依存する構造を作り、その見返りとして自動車の輸出枠を確保する。
そして食料安全保障=「カネを出して輸入すればいい」ことだという考え方が定着してしまった。
私は農水省に15年間いたが、農水省と経産省は犬猿の仲だった。
経産省は、ずるがしこくて手が早い。
自動車の輸出が伸びれば自分たちの天下り先も安泰だ――という非常に短絡的な発想で、食料と農業を自動車のための「生贄」にした。
もう一つの「がん」は、目先の歳出削減しか考えない財政政策だ。
とる税金は上がり続けるが、使う方は渋りに渋り、農業などは切り刻むだけの予算削減一本槍だ。
私がいた当時、大蔵省(財務省)は昼間寝ていて、夜になると起きてきて、昼間も起きている農水省に「予算の説明にこい」という。
残業代を決めるのも彼らだが、農水省には実績の10分の1しか付けないのに、自分たちは100%付ける。
昼寝て夜だけ起きて給料2倍だ。
こういうことばかりに頭を使う。
国家国民のために何をするのかがない。
だから農業はどんどん苦しくなり、輸入依存が高まり、自給率は低下し、いざというときに国民の命が守れないという世界で最も極端な国になってしまった。
規制改革が「対等な競争条件」を創出して社会全体を改善できるというのは、市場の参加者に価格支配力が存在しないことが前提条件だ。
市場支配力を持つ者がいるときに規制緩和すると、もうけが一部の力のある企業だけに集中して弱者の貧困が加速し、社会全体の富も減少する。
それを証明したのが「失われた30年」といわれる日本だ。
規制改革だ、貿易自由化だと尻を叩かれて頑張ってきたものの、先進国で唯一、賃金も所得も下がりっぱなしの貧困国になった。
農業だけではない。
「みんなの利益になる」は大ウソだったのだ。
この「今だけ、カネだけ、自分だけ」の人たちが見失っているのが安全保障だ。
規制緩和で一部の企業がもうけても、農業を犠牲にして食べるものがなくなったら、いざというときに国民の命を守れない。
地域も崩壊し、外国資本に日本が買われていくリスクも高まる。
今や水源地も海も山もどんどん外国資本が買いとっている。
(中略)
・金があっても買えない 経済安保の脆弱さ
この食料安全保障の危機は、すでに何年も前から予測され、私も警鐘を鳴らしてきた。
しかし、岸田首相の施政方針演説では「経済安全保障」が語られたが、「食料安全保障」「食料自給率」についての言及はなく、農業政策の目玉は「輸出5兆円」「デジタル農業」など、ほとんど夢のような話だ。
これだけ食料や生産資材の高騰と「買い負け」が顕著になってきて、国民の食料確保や国内農業生産の継続に不安が高まっているなかで、危機認識力が欠如しているといわざるを得ない。
輸出振興もデジタル化も否定するわけではないが、食料自給率37%と世界的にも極めて低い日本にとって、食料危機が迫っているときに、まずやるべきは輸出振興でなく、国内生産確保に全力を挙げることだ。
しかも、農産物輸出が1兆円に達したというのは「粉飾」で、輸入原料を使った加工食品が多く、本当に国産の農産物といえる輸出は1000億円もない。
それを5兆円に伸ばすという「空虚なアドバルーン」を上げ、デジタル化ですべて解決するような「夢物語」で気勢を上げることに何の意味があるのかだ。
我々に突きつけられた現実は、食料、種、肥料、飼料などを過度に海外依存していては国民の命は守れないということだ。
それなのに、「いくら頑張って自給しても、米国やオーストラリアよりコストがかかるのだから…」という理由で、自由化を進めて貿易(海外の調達先)を増やすことが安全保障であるかのような議論が必ず出てくる。
まさにそれが間違っていたのだ。
輸入が止まったらどうするのか?
国内の生産がなければ命が守れない。
命を失うこと以上のコストがあるか?といわざるを得ない。
国内の食料生産を維持することは、短期的には輸入農産物より高コストであっても、飢餓という計り知れないコストを考慮すれば、総合的コストは低い。
みなさんの地元で頑張っている農家をみんなで支えることこそが、自分たちの命を守ることであり、その意味では一番安い。
これこそが安全保障の考え方だ。
飢えてからでは遅いのだ。
しかも狭い視野の経済効率だけで食料を市場競争に委ねることは、人の命や健康にかかわる安全性のためのコストが切り縮められ、海外に依存する日本では量だけでなく、質の安全保障さえも崩されている。
・実態はさらに低い自給率 飼料も肥料も海外依存
ご存じの通り国内農業は、高齢化や担い手不足、所得低下で生産が減少傾向にある。
さらにコロナ危機で浮き彫りになったのは、生産資材の自給率の低さだ。
飼料はもちろんだが、実は80%が国産といわれる野菜も、その種の9割は海外の畑で種取をしたものが入ってきている。
だからコロナ危機で海外からの物流が止まりそうになって大騒ぎになった。
物流が止まれば野菜も8%しか作れない。
国内で頑張っている種苗業者によると、今や在来種の種ですら種取の多くはイタリアや中国など海外に依存しているという。
だから種を国内でいかに確保するかが重要になる。
F1種(一代限りの交配種)となると種取もできないのだから、地元のいい種を守らなければいけない。
このようなときに日本はそれに逆行する政策をとっている。
コメ・麦・大豆の種を、国がお金を出して県の試験場でいい種を作ってみんなに供給する事業をやめさせ(種子法廃止)、しかもその種を海外も含む企業に渡し、農家は企業から種を買わざるを得ない構図をつくり(農業競争力強化支援法八条四項)、さらに自家増殖を制限(種苗法改定)して、農家が自分で種取をすることを難しくした。
「種を制するものは世界を制する」というグローバル種子企業の利益に乗せられたというほかない。
その他、家畜の飼料に着目すると、鶏卵は国産率97%と頑張っているが、飼料(トウモロコシは100%輸入)が止まれば自給率は12%。
そして実は、ヒナも100%近く輸入に頼り、そこから育てて採卵したり鶏肉(ブロイラー)にする。
だから物流が止まれば一巻の終わりなのだ。
化学肥料の海外依存も含めると、国内の99・4%の農家は慣行農業(農薬、化学肥料を使う一般的な栽培方法)なので、生産量は少なくとも半減する。
食料自給率37%もとんでもない低さだが、実質は数%しかないということがわかる。
このままだと2035年には、飼料の海外依存度を考慮すると牛肉、豚肉、鶏肉の自給率はそれぞれ4%、1%、2%。種の海外依存度を考慮すると野菜の自給率は4%と、信じがたい低水準に陥る可能性さえある。
今は国産率97%のコメも、いずれ野菜と同様になってしまう可能性も否定できない。
どれだけ私たちの命が脆弱な砂上の楼閣にあるのかということを裏付ける衝撃的な試算が今年8月、米国で発表された。
米ラトガース大などの研究チームが科学誌「ネイチャー・フード」に発表したもので、米ロ戦争で15㌔㌧の核兵器100発が使用され、500万㌧の粉塵が発生するという恐ろしい事態を想定した場合だが、直接的な被爆による死者は2700万人。
さらにもっと深刻なのは「核の冬」による食料生産の減少と物流停止によって、2年後には世界で2億5500万人の餓死者が出るが、そのうち日本が7200万人(人口の6割)で世界の餓死者の3割を占めるというものだ。
ショッキングな事実だが、冒頭から説明している現実から考えれば当たり前のことだ。
かつてキューバの革命家ホセ・マルティは「食料を自給できない人たちは奴隷である」とのべ、高村光太郎は「食うものだけは自給したい。個人でも、国家でも、これなくして真の独立はない」といった。
果たして日本は独立国といえるのかが今問われている。
・有事に生産拡大は常識 「作るな」は日本だけ
国内生産の命綱ともいえるコメだが、米価はどんどん下がっている。
去年はコロナ禍の消費減も加わって、ついに1俵60㌔=9000円まで下がった。
今年はわずかに上がったが、生産コストは1俵当り平均1万5000円かかる。
こんな産業にしてしまったら作り続けられるわけがない。
だが日本政府は「余っているから作るな」「牛乳も余っているから搾るな」というだけだ。
余っているのではなく、コロナショックで買いたくても買えない人が続出して、日本の貧困化が顕在化したのだ。
我が国はコロナ以前から先進国で唯一、20年以上も実質賃金が下がり続けている。
つまり余っているのではなく、足りていない。
だから今必要なのは、政府が農家からコメや乳製品を買って、食べられなくなった人たちに届ける人道支援だ。
届け先はフードバンクや子ども食堂などいろいろある。
不測の事態に突入したのだから、生産力を高めて危機を乗り切らなければいけない。
にもかかわらず、生産するな、牛乳搾るな、牛殺せといっているのが日本だ。
世界の飢餓人口が8億人をこえるなか、日本の生産力を最大限に使って、日本国内だけでなく世界の人々にも届けるくらいの人道支援になぜ財政出動しないのか。
そうすれば国内の農家も消費者も、世界の市民も助けることができ、食料危機が回避できる。
そういう発想がまるでない。
他の国をみると、米国ではコロナ禍で農家の所得減に対して総額3・3兆円の直接給付をおこない、3300億円で農家から食料を買い上げて困窮者に届けた。
緊急支援以前に、米国・カナダ・EUでは設定された最低限の価格(「融資単価」「支持価格」「介入価格」など)で政府が穀物・乳製品を買い上げ、国内外の援助に回す仕組みを維持している。
日本だけがこれを早くからやめてしまった。
米国では、たとえばコメを1俵4000円くらいの低価格で売るように農家に求めるが、「最低限コスト1万2000円との差額は100%国家が補填するので安心して作れ」とやっている。
これを穀物や乳製品にも基本的に適用している。
さらに食料は「武器より安い武器」と位置づけ、安く売って世界に広げ、日本や途上国の人々の胃袋をコントロールする。
だから米国の差額補填は一番低い年でも1兆円をこえている。
米国が輸出大国なのは競争力があるからではなく、食料を安全保障の要、武器とする国家戦略があるからだ。
しかも米国は、農業予算の60%は消費者支援として使う。
米国の農業予算は年間1000億㌦近いが、その64%がSNAP(フードスタンプ)での消費者の食料購入支援だ。
「EBTカード」を配り、所得に応じて最大7万円(月額)まで食品を購入でき、代金は自動的に受給者のSNAP口座から引き落とされる制度だ。
この消費者支援だけで10兆円だ。
これによって結果的に農家も助かるから農業予算としている。
日本にはこういう制度も皆無だ。
・関東の酪農家に配布された早期淘汰のチラシ
逆に日本政府がやっていることといえば、たとえば関東の酪農家に配られたのは「余っているから牛を殺せ(早期淘汰)。殺せば一頭当り5万円払います」だ。
北海道でも増産抑制に対応して廃用牛の出荷が増え、廃用牛価格が20%以上も下落し、資料や生産資材高騰で苦しむ酪農家に追い打ちを掛けている。
だが今後近いうちに必ず乳製品が足りなくなる。
海外から入らなくなる。
そのときに牛を淘汰してしまえば、また種付けから搾乳できるまで最低3年はかかる。
絶対に間に合わず大騒ぎになる。
それなのに目先の在庫を減らすことしか考えない。
さらに政府財務省は、「コメを作るな」というだけでなく、そのかわりに小麦、大豆、野菜、牧草等を作るための支援としていた水田活用交付金の条件を4月から厳しくし、実質切ってしまった。
財務省は、「これでまた一つ農業予算が切れた」と喜んでいる。
このままでは離農者が続出し、耕作放棄地は増え、食料危機に耐えられなくなる。
大局的見地がなく、目先の歳出削減しか見ないこの亡国の財政政策こそが最大の国難だ。
現場の苦しみは増している。
肥料も飼料も価格は一昨年の2倍になり、燃料を含む生産コストは急騰しているのに、国産農産物の価格は低いままで、コメの価格はむしろ下がっている。
輸入小麦の価格が上がれば、パンも含めて小売価格が上がるのに、国内の農家の生産コストが上がってもそれは価格に転嫁されないわけだ。
鹿児島の年商30億円の大型養豚農家も倒産した。
これは政府だけでなく、加工・流通・小売業界、消費者も全体で国産保護にとりくまないと大変なことになる。
この半年間で、日本の農家の4割が消えるかもしれないというくらいの恐るべき事態にまで来ている。
・食料は安全保障の「要」 これで国民の命救えるか?
海外の農家は日本よりも政策的には恵まれているはずだが、それでも最近は農家の大規模デモが起きている。
スペインでは、燃料価格高騰に怒り、トラクターなどの人海戦術で高速道路を封鎖し、スーパーなどの棚から食品が消えた。
「農家が潰れて、こうなってもいいのか?」というメッセージだ。
首都マドリードでは、10万~15万人の農家が、インフレ、価格ダンピング、農村の荒廃を放置する政府に抗議するデモをおこなった。
世界中の農家が立ち上がっている。
その意味で日本の農家さんは大人しいが、世界で最も厳しい状態に置かれているといっても過言ではない。
酪農では、今年2月時点までの生産資材価格上昇で試算しても100頭以上の牛を飼っている大手ほど赤字に転落し、このままでは倒産の連鎖が広がり、熊本県の九州一の大産地でも「9割赤字で、もう数カ月持つかどうか」という議論さえ出てきている。
コメの場合も同じで、米価は下がっているのに、支出は増えるので収支は数年前までは3万円あったのが今はゼロ。
つまり働いている分の報酬は一切出ない。
理解に苦しむのは、岸田首相が10月10日に鹿児島県を訪れ、潰れそうな肥育農家さんと車座対話をやった後、コメントを求められ「飼料高騰や価格下落で大変な影響だ。なにかせねばならない」といって「輸出強化」だといった。
資金繰りができなくなって廃業寸前に追い込まれている農家の生の声を聞いた現場で出た言葉が「輸出振興」とは「国は助けない」といっているようなものだ。
一方、安全保障といえば、中国への経済制裁を強化し、ミサイルで敵基地攻撃能力も強化し、いざとなれば攻めていけばいいというような勇ましい論議だけが過熱している。
その前によく考えてほしい。
日本は世界で唯一、エネルギーも食料もほとんど自給できていない国だ。
他国は資源エネルギーも食料も自給したうえで経済制裁している。
金魚のフンみたいに米国に付いていっても、逆に日本が経済封鎖されて兵糧攻めだ。
戦う前に飢え死にしてしまう。
もちろん戦ってはいけないのだが、それさえできないということもわからないのだろうか。
果たして米国が助けてくれるだろうか?
それは今のウクライナを見ればわかる。
もうすぐ起きるかもしれないといわれる台湾有事は阻止しなければならないが、仮にもし起きたら日本の餓死者は現実のものになるだろう。
それだけでなく米国は沖縄周辺を中心に日本を戦場にして、米国本土を防衛する。
絶対に直接関与はしない。
すると「日米安保」は、米本土を守るために日本を戦場にする可能性が高い。
それらを視野に入れて、われわれは独立国として日本人の命を守るために、どうすべきかという国家戦略と外交戦略を持たなければいけない。
思考停止的な米国盲従に日本の未来はない。
不測の事態に国民の命を守るのが「国防」であるなら、食料は基本中の基本だ。
武器は命を奪うものだが、食料は命を守るものだ。
そして最近出てくるのが「自給力さえあればいい」という能天気な議論だ。
その中身は、輸入食料がストップすれば学校の校庭、ゴルフ場の芝生を剥がしてイモを植え、最後は道路に盛り土してイモを植え、数年間は三食イモで凌ぐというものだ。
まさに戦時中だが、真顔で出された構想だ。
これには、さすがの『日経新聞』も怒った。
「外国では赤字になったら補填するなど政府が受給の最終調整弁の役割を果たしているのに、なぜ日本にその機能がないのか」と。
それでも「自由貿易こそが大事だ」といまだに主張する某大学の経済学者もいる。
すでにそれが機能しなくなっているのに。
・行政を縛る米国の圧力 「人道援助」は禁句に
日本が農業を守る政策をとれない背景には、米国の圧力があることも理解しなければならない。
日本政府関係者は、日本の国内農家や海外への「援助」という言葉を口にするだけで震え上がる。
「米国の市場を奪う」と受け止められて米国の逆鱗に触れると自分の地位が危ないからだ。
実際に反対を押し切って乳製品の援助をした農林水産大臣は当時「国士」と呼ばれたが、今はもう生きていない。
だから、政治行政関係者は震え上がっていて、私が「援助政策」について話すだけで、声を震わせて「その話はやめてくれ」という。
なぜ他国は輸入量の調整をするのに、日本だけはコメ77万㌧、乳製品13・7万㌧もの莫大な輸入を義務として履行し続けているのか。
しかも国内で「在庫過剰だから作るな」「牛を処分しろ」「価格は上げられない」といっているときに、だ。
「最低輸入義務だから」というが、ウルグアイラウンド(UR)合意で定められたミニマム・アクセスは「低関税を適用しなさい」というだけの枠であって、その数量を必ず輸入しなくてはならないという約束ではない。
それを日本だけが「最低輸入義務だ」「国際約束だ」といい張って輸入している。
本当の理由は、米国との密約で「お前だけは全部入れろよ」「コメのうち36万㌧は必ず米国から買え」といわれているものだから、怖いからずっとそれをやり続けている。
文章に残せば国際法違反になるから明文化はされていないが、これは陰謀論ではなく、陰謀そのものだ。
表に出てくる話は形式であって、政治は裏で陰謀が蠢いて決まっていくのだ。
外交はまさにそうであり、私はそれに携わっていたから知っている。
その制約を乗りこえて、他国の持つ国家安全保障の基本政策をとり戻し、血の通った財政出動をしなければ日本は守れない。
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迫る食料危機! 私たちの食と農を守るためにできること㊤ 東京大学大学院教授・鈴木宣弘
長周新聞 2022年11月4日
■農業消滅!? アメリカの国家戦略に食い荒らされる「日本の食」
YouTube [三橋TV]
■遺伝子組み換え・ゲノム編集という脅威から「我々の食」を護るために
YouTube [三橋TV]
■株式会社アメリカの食糧戦略…第二の占領政策の実態と売国奴たちの正体
YouTube (鈴木宣弘X三橋貴明)
■薬漬けの肉でも輸入OKの日本 「危険食品のラストリゾート」と揶揄
女性セブン 2022.01.11
■食の安全先進国フランスで禁止、でも日本では食べられる食品の数々
女性セブン 2020.04.12
■大豆、サーモン…米国から輸入する食品の安全性を専門家が問う
「安倍晋三首相とトランプ大統領との間で、日米の貿易交渉」
「遺伝子組み換えによって作られた大豆」
「米国では、穀物だけでなく、動物においても遺伝子組み換え操作」
女性自身(光文社)2018/10/05
■商社マンが明かす世界食料争奪戦の現場 日本がこのままでは「第二の敗戦」も
NEWSポストセブン 2022.01.01
■食べてはいけない「パン」「パスタ」の見分け方 外国産小麦には除草剤成分が
ディリー新潮 2021年03月30日
■「ホルモン漬けアメリカ産牛肉」が乳がん、前立腺がんを引き起こすリスク
『怖い中国食品、不気味なアメリカ食品』
文藝春秋 2017/11/16 奥野修司
■TPPで押し寄せる外国産食品、
輸入食品はどこまで安全なのか
JBpress 2014.5.23 漆原 次郎
■「リスクのある小麦」の輸入を続ける日本の末路
・発がん性指摘される農薬を効率重視で直接散布
「グリホサートを、雑草ではなく麦に直接散布」
「これはジャップが食べる分だからいいのだ」
東洋経済 2021/08/27
■『買ってはいけない』 『食べてはいけない』の著者、最新刊! 【危険な添加物!】 がんがイヤなら、これは食べるな
株式会社ビジネス社 2021年04月19日
■【安倍政権】米余剰トウモロコシ輸入決定 日本に“危険食品”大流入危機
「米国産トウモロコシの約9割が遺伝子組み換え」
「武器も言われるがままに“爆買い”してきた安倍首相。今度は危険な食料を“爆買い”」
日刊ゲンダイ:2019/08/27
■トランプに握られた日本人の胃袋
日本国民の健康を米国に売り渡してきた「レモン戦争」
日刊ゲンダイ:2020/01/29
■「農業消滅」の著者が警鐘 「食の安全保障」を確立しなければ危ない食品が日本に集まる
日刊ゲンダイ:2021/11/01
■大丈夫か…メーカーの要望で農薬残留基準が緩和されていた
日刊ゲンダイ:2018/11/03
■危うい「非遺伝子組み替え」確保 大豆輸入の現場、バイヤーに聞く
西日本新聞 2020/10/21
■TPPと食の安全基準 農薬、成長ホルモン剤 各国違い 輸出国の圧力で変更も
西日本新聞 2013/3/27
■輸入オレンジやグレープフルーツ、危険な農薬検出→厚労省が食品添加物として次々認可
Business Journal 2018.12.18 渡辺雄二「食にまつわるエトセトラ」
■強い発がん物質汚染の米国産トウモロコシ輸入、乳児用調製粉乳から検出…牛乳に混入の恐れ
Business Journal 2019.11.02
■輸入小麦使用の食パン、発がん性あるグリホサート検出…世界で使用禁止の動き、日本は緩和
Business Journal 2019.07.01 小倉正行
■TPP、食の安全に重大な脅威の懸念~添加物、残留農薬、検疫の規制緩和の問題点
Business Journal 2014.03.08
■安倍政権、かつてない農産物輸入自由化で“食糧危機”へ…食料自給率が危険水準に
Business Journal 2019.02.01
■安倍政権、日本の農業を根絶せしめる愚行…ひっそり種子法廃止で
・外国産や遺伝子組み換えの米が蔓延する危険
「食料を支配された国は、まちがいなく主権を奪われます。66年前に主権を回復した日本は今またそれを自ら放棄しようとしています」
Business Journal 2018.03.15
■安倍政権、ゲノム編集食品の非表示を容認へ…安全性不明なまま、消費者団体の反対を無視
「まさか国が、国民の健康を害するようなものを販売することを許可することなどないはずだ、と盲目的に思い込んでいる」
Business Journal 2019.10.21
■安倍政権下、発がん性ある米国産牛肉等の輸入急増…EUで輸入禁止のホルモン剤使用
「EUやロシアや中国で輸入が禁止されている成長促進ホルモン剤」
「発がん性があるとしてEU、中国、ロシアでは塩酸ラクトパミン残留の豚肉の輸入を禁止」
Business Journal 2020.01.29
■「おそらく発がん性がある」と世界中で規制が進むモンサント
週プレNEWS 2018/09/28
■【鈴木宣弘・食料・農業問題 本質と裏側】日米貿易協定の虚実~国会承認はあり得ない(2019年11月28日 参議院外交防衛委員会 発言要旨)
JAcom 農業協同組合新聞 2019年11月28日
■なぜ日本の食の安全基準だけが緩められてしまうのか【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】
JAcom 農業協同組合新聞 2020年8月20日 【鈴木宣弘 東京大学教授】
■【 クローズアップ 日米FTA】決定版!やはり「失うだけの日米FTA」【 東京大学教授・鈴木宣弘】
JAcom 農業協同組合新聞 2019年9月2日
■【クローズアップ・日米貿易協定】底抜けバケツに水は貯まらぬ 横浜国大・大妻女子大名誉教授 田代洋一
JAcom 農業協同組合新聞 2019年11月26日
■【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】TPPにおける日米2国間合意は生きている
JAcom 農業協同組合新聞 2022年2月17日
■日本農業を売り渡す安倍政権
2016年12月31日【植草一秀(政治経済学者)】
■国内で販売される小麦製品の約7割からモンサントの除草剤「グリホサート」検出
ハーバー・ビジネス・オンライン 2019.09.03
■安倍政権が切り捨てる日本の食と農。日本だけが輸入する危険な食品<鈴木宣弘氏>
・日本の食と農が崩壊する!
・日本にだけ輸出される危険な食品
「安倍政権には、日本の食の安全を守る気がありません」
ハーバー・ビジネス・オンライン(扶桑社) 2019.12.22
■食料の9割輸入に頼る危険な道 GM・ゲノム食品の投棄場と化す日本列島
長周新聞 2019年10月12日
■日本の食と農が危ない!―私たちの未来は守れるのか(上) 東京大学教授・鈴木宣弘
長周新聞 2021年1月16日
■日本の食と農が危ない!―私たちの未来は守れるのか(中) 東京大学教授・鈴木宣弘
長周新聞 2021年1月22日
■迫る食料危機! 私たちの食と農を守るためにできること㊤ 東京大学大学院教授・鈴木宣弘
長周新聞 2022年11月4日
■【2023年より厳格化】食品から「遺伝子組換えでない」表示が消える前に知っておくべきこと【人と食の大問題③】
YouTube 2020/12/30 大嶋賢洋の図解チャンネル
■遺伝子組み換え作物 知っているようで知らない 遺伝子組み換え 前編 何のために遺伝子を組み替える? 何が問題?
YouTube 2023/02/09
■食パンにおける農薬「グリホサート」残留調査 by農民連食品分析センター
YouTube 2019/12/21 バーチャルヘルスコーチ はっしー
■TPP「食の危険」これでは遺伝子組み換えのゴミ捨て場に10/27衆院・TPP特別委員会
YouTube 2016/10/27
■「農業消滅」の著者が警鐘 「食の安全保障」を確立しなければ危ない食品が日本に集まる(鈴木宣弘・東大大学院教授)
「さかのぼれば対日占領政策に行き着きます。日本の農業をズタズタにし、米国産に依存する構造をつくれば、日本を完全にコントロールできる」
日刊ゲンダイ 2021/11/01
■『放射線育種米』コシヒカリ環1号 あきたこまちR
■放射線米
■行政が公式発表 始まる『放射線米』の支配
■放射線育種米
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