オカキ

あまやどり出版から自著出版中。https://note.com/amayadori_s…

オカキ

あまやどり出版から自著出版中。https://note.com/amayadori_syupan/ 編集者。書家。VR/AR/AI大好き。自分出版社協同組合。https://note.com/jibunsyuppan/ VRC&Cluster&Resonite→okaki5959

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  • 橘川幸夫サロン

    個別に「自分の本を作りたい」「自分たちも雑誌を創刊したい」その他、個別のテーマがある人は、「橘川幸夫サロン」にご入会ください。個別の相談にのります。

  • 深呼吸する言葉(2020-2023深呼吸学部)

    • 132本

    2020-2023深呼吸学部の塾生の深呼吸する言葉の部屋です。

  • あまやどり出版 新刊のご案内

    • 11本

    あまやどり出版から出版されている本をまとめて見られるマガジンです。 最新刊が気になる方はこちらをフォローよろしくお願いします。

  • 「自分出版社協同組合」新刊のご紹介

    • 18本

    「自分出版社協同組合」から発行された新しい本の紹介をしています。

  • 小説『egg』執筆中

    2作目になる小説『egg』を執筆中です。三部構成なのですが、ようやく第一・二部完結。第一部は1964年の夫婦関係を、第二部は夫婦の長男が中2になったときの家族の在り方を書きました。第三部ではこの家族の娘が主人公。1992年のバブルが崩壊した日本で就活をする大学4年生の目から見た家族との関係性を書いています。

最近の記事

egg(42)

第十六章 ピンポーン。 玄関のチャイムが鳴った。 しばらくすると、再びチャイムが鳴る。それでも誰も出ないことがわかると、玄関の扉をバンバンバン!と荒っぽく叩く音が響いて、若い男性の怒鳴り声が聞こえてきた。 「高藤さん、いないんですかあ? 返済の日時はとっくに過ぎてるんすけどねえ!」 今日もサラ金の取り立てが来ている。わたしこと高藤由美は、自分しかいない家の中で音を立てないようにじっとしていた。庭では飼い犬のシュヴァルツ2世が狂ったように吠えている。 しばらく我慢し

    • egg(41)

      第十五章 「哲治はねえ、今は宮城にいるのよ」 わたしこと高藤由美の祖母であるいちは、おっとりした口調で、わたしの兄の哲治について話し始めた。 「宮城? どうして東北に? 親戚なんていなかったと思うけど……?」 「お友達の親戚がそちらにいて、二人で宮城に行ったと話していたねえ」 お兄ちゃんの友達というと、わたしには3人しか思い当たらない。 「ひょっとして、川上さん?」 おばあちゃんが目を丸くしてわたしを見た。 「あらま、お前も知り合いだったのかい?」 わたしはこくりと頷

      • egg(40)

        第十四章 おばあちゃんの高藤いちが驚いたように目を丸くした。そしてこめかみに手をやって斜め上を見やり、しばらくじっと何かを考えているようだった。わたしこと高藤由美は何も言わずに待った。そんなわたしの真剣な様子を見て、おばあちゃんは深いため息をついて呟いた。 「まったく弘子はおしゃべりだねえ」 「知ってるの!?」 思わず大きな声になる。ウエイトレスにこちらを見られたけど関係ない。わたしはおばあちゃんに喰ってかかった。 「何で? 何で教えてくれなかったの! お兄ちゃんは今

        • egg(39)

          第十三章 お父さんの高藤隆治が倒れて入院した。お母さんの恵美と、わたしこと高藤由美が病院に駆けつけると、驚いたことに病室に先客がいた。 「お義母さん! どうしてここに?」 眠っているお父さんのそばにいたのは、お父さん方のおばあちゃんのいちだった。和服姿で背筋がぴんと伸びたおばあちゃんは70歳になってもまだまだ元気そうだ。 「たまたま弘子に会うために上京していたのよ。弘子と二人で話していたら、あなたから電話があったでしょ? 驚いて直接ここにきてしまったのよ。断りもしなく

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        • 小説『抹茶ミルク』脱稿版
          17本

        記事

          egg(38)

          第十二章 銀行業界誌の編集長である高藤隆治は、2年前に合併をした「あかね銀行」の応接室の皮張りのソファに座り、落ち着かなそうに腕時計をチェックした。 「遅いな……」 あかね銀行の前身の一つである三矢銀行は財閥系列の老舗銀行だった。隆治は当時の頭取と編集者の仕事を通じて知り合い、その後自分が立ち上げた銀行業界誌を全行で購読してもらえることになったのだ。だが、1989年12月に日経平均株価が史上最高値の3万8915円を記録して以来、株価は右肩下がり。3年目の現在は1万6千

          深呼吸する言葉・小説

          小説を書くとは、祈りを積み重ねること。

          深呼吸する言葉・小説

          egg(37)

          第十一章 五日後。日照大学の人事担当から電話が来て、面接の日程が告げられた。弘子おばさんのコネが効いたらしい。朝食を食べながらわたしこと高藤由美がその報告をすると、お父さんとお母さんは大喜びした。 「これで由美の就職も安心だな」 お父さんがコーヒーを片手に満足げな笑みを浮かべてお母さんに笑いかけた。お母さんもにっこり笑って言う。 「弘子さんにお礼をしないといけませんね。何かお送りしたいわ。デパートで探しておきますね」 嬉しそうな両親を見て、わたしは言った。 「うーん。

          egg(36)

          第十章 「14年前、哲治はバイクにはねられて意識不明の重体だったけど、奇跡的に一命をとりとめたじゃない?」 喫茶店でキリマンジャロの入ったコーヒーカップを左手で持ちながら高藤弘子おばさんが話しだす。 「でもたしかあれから半年、意識不明で入院してたよね? その後ようやく目を覚ましたら、事故のせいで左足を膝下から切断したから、1年くらい車椅子の生活になったって聞いたけど?」 「おっしゃるとおりです」 わたしこと高藤由美は、大量に出てきた手の汗をおしぼりで拭きながら答えた。

          egg(35)

          第九章 「え!? お兄ちゃん、ですか?」 わたしこと高藤由美は、久々に兄の哲治の名前を聞いた途端、懐かしさのあまり体がぶるっと震えるのを感じた。 「いえ、うちでは何も……。行方不明のままだと両親から聞いていました。あのっ、お兄ちゃんは今どこにいるんですか!?」 息せきって弘子おばさんに問いかけながら、わたしの眼球はじんわりと涙に覆われていった。もう11年も経っているから、忘れたようになっていたのに。「お兄ちゃん」と声に出した途端に、寂しさと会いたいという気持ちが切々と

          egg(34)

          第八章 西武新宿線の高田馬場駅のトイレで、わたしこと高藤由美は激しい下痢と戦っていた。もうすぐおばさんの高藤弘子に会う時間。早く待ち合わせた喫茶店に行かなくちゃ。そう思えば思うほど、下腹部はぐるぐると音を立て、水のような便がほとばしり出た。あまりの勢いに肛門が切れてじんじん痛む。 おへそから下に向かって「の」の字をかくように下腹部をマッサージするといいとお母さんに教わった。腸が空っぽになればトイレから出られる。わたしは冷や汗をかきながら、肌が赤くなるくらいごしごしとお

          egg(33)

          第七章 今日は日曜日。珍しく朝からお父さんの高藤隆治が自宅にいるせいか、朝食にサラダやフルーツも出ていて盛りだくさんだ。3人そろってキッチンのテーブルにいるのは久しぶり。わたしこと高藤由美はお母さんの恵美と向かい合った席に座った。 新聞を読んでいたお父さんがわたしに尋ねた。 「由美、就職活動はどうなっているんだ?」 わたしはコーヒーに口を付けてから答えた。 「うん。この前会社の面接を受けてきたよ」 お父さんが新聞と老眼鏡をテーブルに置いた。 「そうか! どの会社だ?」

          egg(32)

          第六章 「んで、これがそのとき撮った写真なの?」 下北沢の居酒屋の一角で、写真を現像するともらえる紙製のアルバムを手に取りながら、岡田葵はギャラこと西島秀樹に尋ねた。 「だー! ダメダメ! 誰にも見せないって、高藤先輩と約束してんだからっ」 葵の手からアルバムをひったくると、ギャラは大事そうに胸に抱えた。 「ぶー! 見せろよお」 「やだ! 絶対見せない!」 後ろを向いてアルバムが絶対に葵に奪われないように必死な様子のギャラを見て、葵は大きくため息をついた。 「あんだよ

          egg(31)

          第五章 「わあ! 海だ!」 駐車場からてくてく歩いて汗をかいていたわたしこと高藤由美は、真っ青な海と白い砂浜が目に飛び込んできて嬉しくなった。日差しはきついけれど、海風が爽やかに吹き抜けて気持ちいい。 海水浴客が海に飛び込んで泳ぐのを眺めながら、わたしたち二人は砂浜に座り、350ML缶に入ったカルピスウォーターのプルタブを缶にプシュッと押し込んで開き、キンキンに冷えた液体を喉に流し込んだ。 するとギャラが手に持った一眼レフカメラで 「ついに車で海まで来られた! やべえ

          egg(30)

          第四章 「今鍵開けますね」 若葉マークが貼られた白いセダン型の車の鍵をガチャリと開けると、運転席に座ったギャラがエンジンをかけた。 わたしこと高藤由美は反対側のドアを開け、恐る恐る助手席に滑り込んだ。息を吹き返したエンジンの動きで白い車体が小刻みに震えている。我が家には車がないので、自家用車に乗るのは久しぶりだ。わたしはちょっと緊張した。 「この車、今年買い換えたんですけど、うちの親父ってカローラしか買わないんすよ。マツダのMX―6にしてほしいって頼み込んだんだけど、

          深呼吸する言葉・推し

          遠きにありて愛でるもの。近しきものと交わすもの。

          深呼吸する言葉・推し

          深呼吸する言葉・秋

          秋は全部がマゼンダがかってる。

          深呼吸する言葉・秋