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【ハロウィン特集】巨匠コッポラの珍品ホラー「認知症13」

ハロウィンということで、ホラー映画がたくさんYouTubeで見られるようになっている。

その中でも、「認知症13」というタイトルにはギョッとしてしまった。

これはもちろん、巨匠コッポラ監督のデビュー作として有名な「ディメンシャ13(Dementia 13)」だ。

「認知症13」と表示された「ディメンシャ13」


「Dementia」が自動翻訳されて「認知症」になったらしい。

認知症はたしかにこわい病気だが、認知症の老人が13人出てくるホラーではない。

私は前に、「認知症」は日本語として変だから、「ディメンシア」に変えろと提案した。


だが、まさかコッポラの「ディメンシャ13」が「認知症13」になるとは思わなかった。

「Dementia」をいま日本語に訳せば「認知症」だから、「認知症13」で間違いとは言えない。


「サイコ」のバッタもん


フランシス・フォード・コッポラの劇場デビュー作「ディメンシャ13」(1963)は、映画マニアなら知っているだろう。

コッポラがまだ20代半ばで、低予算・早撮りの帝王ロジャー・コーマンのアシスタントをしていたとき、コーマンから、

「前の映画、低予算でつくりすぎて、予算がちょびっと余ったわ。お前、このちょびっとの予算で映画つくっていいいぞ」

と言われ、大喜びでつくった映画だ。


ちょうどヒッチコックの「サイコ」が流行っていたときで、

「サイコみたいなやつを、チャチャっとつくれ」

と言われて、コッポラは一晩で脚本を書き上げた。


・頭のおかしいやつが出てくる

・ものものしい雰囲気の館が出てくる

・惨殺シーンが出てくる


という、コーマン先生から言われた条件をちゃんと満たした脚本だった。

なかでも、殺人鬼が「斧で人を殺す」点が、コーマン先生に気に入られた。

「斧をつかうの、派手でええやないか」

と。


それで、演出もすべてコッポラにまかせたが、出来上がった映画には、コーマンも周囲も不満だったという。

それでも、コーマンのことだから、「ま、ええか」と劇場にかけて、巨匠コッポラの歴史的デビュー作となった。


私はむかし白黒で見たが、最近リストアされたらしく、YouTubeではカラーになっていた。

冒頭から、コッポラらしい冴えた演出で、引き込まれる。

60年前の映画とは思えない、コッポラらしい切れ味の映像が、随所で見られる。

不気味な人形が迫ってくるシーン ダリオ・アルジェントが影響を受けた・・と思う


ヒッチコック「サイコ」のシャワーシーンに対抗すべく、女が斧で殺されるさまが凝ったカット割りで撮られている。

20代のコッポラは、巨匠ヒッチコックに挑むということで、さぞ意気込んだだろう
残酷+お色気のB級風味


最後の結婚式のシーンなどは、「ゴッドファーザー」をほうふつとさせる。

マーロン・ブランドじゃありません


俳優はコーマンのB級映画の常連たちだが、現場でのコッポラの熱い演出に感化され、みんな立派な演技をしている。

しかし、話がめちゃくちゃで、まあ、いまの観客の9割が「なんだこれは」と思うだろう。

とはいえ、コッポラのデビュー作として映画史に残る作品。ハロウィンだけどヒマな方はご覧になるとどうだろう。

ただし、上のYouTube動画で見ると、字幕が自動翻訳の日本語なので、わかりにくい話がますますわかりにくくなるのは間違いない。


なお、なぜこの映画のタイトルが「認知症(ディメンシャ)13」となったのか、映画を見終わってもわからないだろう。

これは、英語圏含む海外の人にとっても同様で、「なんでこのタイトル?」という疑問がよくネットにあがっている。

コッポラやコーマンがその疑問にはっきり答えているのを見たことないが、たぶんこういうことだと言われている。


「サイコ」みたいなタイトルにしたくて、「ディメンシャ」(原意は精神の異常)にしようと思った。

でも、すでに「ディメンシャ」というタイトルの映画がつくられていた。

そこで、プロデューサーを務めたコーマンが、縁起が悪い数字「13」をくっつけた。


映画のなかで、認知症といえなくもない老女が出てくるし、ある登場人物の13歳のときの行動が問題になるので「13」も意味がないわけではない。

でも、コーマン先生のことだから、どのみち深い意味はないと思うのが正解だ。

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